鎌倉市本庁舎整備方針の決定の仕方(その1)

2017年3月20日 00時14分 | カテゴリー: 公共施設再編

鎌倉市役所の整備方針の策定の結果、「移転」という結論が示されました。
この結論について、現時点での私の所見は次の3点です。

1.御成町の現在地の様々な制約を考慮すれば、現在地で従来の市役所機能全体を維持する建替えが困難であることは理解する

2.しかし、市役所機能の見直しや一定の分散化を図って現在地で建替える可能性の議論、検討は行うべきである。

3.移転先を明示せずに「他所への移転」という方針だけを先行して決めるのではなく、現在地建替え計画と、具体的な場所を明示した移転先での建設計画の両案を示して具体的な実現可能性の比較検討を行った上で、整備方針を選択するべきである。

現在地の制約
まず、第1点ですが、現在地での建替えを難しくさせている制約としては
深刻な執務スペース不足を解消するには高層化が有効だが、風致・景観地区の建物の高さ制限(各10m、15m)により、高層化できない
地中に埋蔵文化財がある可能性が高い土地(今小路西遺跡)にあるため、発掘調査で貴重な遺構等が発見された場合は調査も工事も長期化し、計画の中止もありうる
現在地とその周辺は、津波想定浸水範囲内にある
市役所庁舎には、大規模災害時における救助活動・災害復旧の司令塔機能、市外からの人的・物的支援の受入れ機能が求められるが、現在地では災害時の輸送経路の断絶により、それらの機能が担えないおそれがある
などがあげられています。

については、御成山を背にしているので、高層化をはかっても景観を著しく損なうことはなく、移転するくらいなら、風致地区の制限を取り払い、用途地域の変更を行ってでも高層化をすればよいのではないか、という意見を何人もの方から伺っています。
残念ながら、そうした制限の緩和は検討に時間を要し、全市的な合意形成ができるかどうかの見通しとしては厳しそうです。

また、日影規制との関係でも、高層化のために庁舎を規制の対象からはずすと、日影が及ぶ範囲の周辺地域の建築規制が変更となり、市役所庁舎だけの問題ではなく、鎌倉駅西口地域の街並みが様変わりするリスクが高いとのことです。

については、敷地内の現在の庁舎がある場所だけを使って高層化できれば、問題化が避けられる可能性があります。
それができなければ、難題として立ちはだかります。

については、敷地の大半は、県の浸水予測(最大クラスの津波)で0.5m未満(一部0.5~1.2m)の浸水が想定される区域にあり、1階部分まで水につかるおそれがあるということです。
現庁舎では受変電設備と配電設備が地下にあり、津波で電気室が水没してライフラインが停止する危険がかねてから指摘されています。
建替えにより電気設備を上階に置けば、この問題は取りあえず移転不可避の決定的な要素にはなりません。

本庁舎整備方針策定を担当する経営企画課にこれまでに何度か質問し、この④を重視しているという感触を得ました。

国交省の官庁施設の総合耐震・対津波計画基準(2013年3月改定)では、
「官庁施設の位置は、地震及び津波による災害時においても、人命・財産の安全が十分に確保されるように選定するものとする」、
「災害応急対策活動に必要な官庁施設の位置は、ライフライン及び前面道路の機能障害が発生せず、又は、早期復旧が可能なよう選定するものとする」
となっているところ、現在地に至る緊急輸送道路は、現在地よりも津波浸水や液状化の危険度が高いエリアを経路して、物資等の輸送が確保できない懸念があるというのです。

この点に重きを置けば、本庁舎は移転せざるを得ない、という結論になりますが、一方で、では、大地震発生時に周囲から孤立する懸念がある旧鎌倉エリアに救助・復旧の拠点が無くなってよいのか、という問題が残るのではないでしょうか。