W保坂 政策発表会

 3月16日、市議選に向けて、神奈川ネット公認候補者、三宅まり、森谷牧子、保坂令子の政策発表会を開催しました。3人による発表に先立ち、世田谷区長の保坂展人さんに、世田谷区の先駆的なエネルギー政策について講演していただきました。

子どもの権利条約-保坂展人さんとの接点
   
衆議院議員時代は「国会の質問王」として名をはせた保坂さんですが、それ以前は教育ジャーナリストとして長年活躍されていました。私は「保坂展人さんとはどういう関係なのか」という質問をよく受けますが、苗字が同じだけで個人的なつながりはありません。強いて接点をあげれば、保坂さんが「子どもの権利条約」(1989年国連総会で採択、90年に発効。日本は94年に批准)を政府に批准させ、多くの人たち、特に子どもたち自身に条約のことを知らせる活動をされていた時に、私も地域で同様の動きをしていたことです。当時私は、学校での体罰をなくす活動を地域で行っており、その中で子どもの権利条約に出会いました。
 この条約は、「子どもに関係のあることを行うときには、子どもに最もよいこと(子どもの最善の利益)は何か、を第一に考える」という理念を高く掲げ、子どもたちの生きる権利、守られる権利、育つ権利、参加する権利の保障を4つの柱としています。第29条の教育の目的は、「教育は、子どもが自分のもっている良いところをどんどん伸ばしていくためのものです。教育によって、子どもが自分も他の人もみんな同じように大切にされるということや、みんなと仲良くすること、みんなの生きている地球の自然の大切さなどを学べるようにしなければなりません。」(日本ユニセフ協会抄訳)と表現されています。

教育長人事案再提出?!
 
さて、話は鎌倉市の教育長人事に飛びます。松尾市長は3月24日、自らの後援会主催の記者会見を開き、杉並区立和田中学校の代田昭久校長を鎌倉市の教育長に選任する人事案を市議会6月定例会に再提出する方針を明らかにしました。この人事案は先の2月定例会に提出されたものですが、和田中の教諭による女子生徒へのセクハラ問題を代田氏が隠ぺいした事実や、松尾市長らが代田氏を適任とする国会議員の署名入り「推薦書」を市議4人に手渡していたことなどが明らかになったため、議会が反発、市長が提案を撤回した、という経緯があります。

 代田氏は、和田中で2人目の民間人校長。初代の藤原和博氏と同じくリクルートの出身です。和田中ではPTAを廃止して保護者有志による「和田中学校地域本部」を組織、地域本部の主催で「夜スペ」と称する学力上位層向けの補習授業を行っていますが、この「夜スペ」の講師は民間大手の教育産業(サピックス、東進ハイスクール、トライと変遷)から派遣されています。代田氏は、市長による人事案撤回以前の3月2日の記者会見で「(和田中)校長の経験を生かし、鎌倉で世界標準の学力を地域と一緒になって目指したい」という抱負を語ったとのことです。私はこれを「夜スペ」鎌倉版の実施を念頭に入れた発言だと受けとめました。

 昨年末の政権交代で、今また国の教育行政が変わろうとしている中、全国学力調査については、「約30%の学校の抽出調査と希望校の自主参加」方式から、全員参加方式への切替え、学校別成績の公表に向けての検討開始、という方針が示されました。代田発言中の「世界標準の学力」の意味するものが、全国学力調査で鎌倉市立小中学校が全国の上位にランキングされることにこだわる「橋下流」の視点に立ったものでないことを願ってやみません。子どもたちが学校教育を通してどう成長し、どのような子どもに育ってほしいか、という教育観を語らず、試験の点数によって示される「学力」に偏った発言をされた代田氏には落胆させられました。公教育に市場原理の導入をはかることが適切であるのかどうか、松尾市長は今一度立ち止まって考えてほしいと思います。

行政改革の視点からも疑問
 
全国学力調査では、調査問題の配送、回収、調査結果の採点、集計、そして教委や学校への結果報告作業を、文部科学省から委託されたベネッセや内田洋行などの民間企業が行なっています。生活・学習環境の調査も含まれるのに民間教育産業に個人情報の管理を任せていいのか、と指摘する声がかねてからあります。これらの民間企業がどういう理由で委託先に選ばれたのかということが十分に説明されていないことも問題です。

 冒頭で紹介した政策発表会で私が訴えたのは、行政改革においては行政手法をガラス張りにすることが第一歩で、業務委託や公の施設の指定管理のパートナーの選定にあたっては公募方法や選定基準を明確に示し、利権や癒着の構造がないようにすることが必要だ、ということです。仮定の話ではありますが、鎌倉市立学校に習熟度別補習授業を導入するようなことになり、出来レースで特定の教育産業が参入するようなことがあれば、それは行政改革の視点からも大いに疑義があると考えます。