ふるさと寄付金について考える(その3-コスト意識と使途の明確化)

鎌倉市も地域特産品の贈呈を開始、担当職員も配置
 鎌倉市は、今年721日から「ふるさと寄付金」の新たな制度をスタートさせました。1万円以上の寄附のあった市外居住の方、3万円以上の寄附のあった市内居住の方に、鎌倉市の地域特産品を贈るようになったのです。新たに経営企画課に「ふるさと寄付金推進担当」の職員2名も配置しました。

鎌倉市の状況は?
 825日開催の総務常任委員会では、経営企画課からふるさと寄付金の現況報告がありました。
 寄附者への返礼品とする地域特産品(商品又は市内で行うサービス)を提供してくれる事業者を529日~619日に募集し、8月下旬現在で、26事業者から73品目を提供してもらえる状況とのことでした。
 新制度スタートの721日から824日までの間に市に寄せられた寄付申出件数は149件、金額は4548千円でした(※その後93日の本会議で、岡田和則議員の一般質問への答弁で示された831日現在の寄付件数は1785178千円)。1件あたりの寄付金の額は、1万円台が最多で、全体の約40%です。
 総務委員会では寄付の獲得目標についての質問が出て、次長の答弁は、平成25年度の鎌倉市へのふるさと寄付金が1千万円だったのに対し、鎌倉市民の他自治体への寄付が9千万円だったので、この流出超過状況をなくしたいというものでした。

 私は、寄付の額がそのまま市の収入にならず、経費を意識しなければならないという観点で質問をしました。
 鎌倉市では、返礼品の額を寄付額の約30%と設定しています。答弁では、1万円の寄付収入に対し、市が連携業者に支払う負担金(=返礼品の額)は3000円、返礼品送料は1000(近隣自治体宛ではこれより少額)、事務経費1件あたり2600円とのことで、差引で市に実際に入る金額は4,400円となります。鎌倉市はクレジットカード決済を利用できる仕組みを広げようとしており、利用が拡大されれば事務経費の抑制につながりますが、それでも「純益」は寄付額の概ね5割ということでしょう。

どこに力を入れて頑張るのか
 他の自治体に寄付金が流れて市の歳入が減るのに手をこまねいている訳にはいかない、ということはわかります。ふるさと寄付金制度により鎌倉市に寄付してくださる市外在住の方および鎌倉市民、そして返礼の地域特産品を提供している市内事業者の皆さんの御協力は大変ありがたいことだと思います。
 しかし、鎌倉市の場合、現行の地域特産品のグレードが高く、今後の創意工夫で鎌倉独自の体験サービスの提供が増えても、都城市や天童市のように誰もが「お買い得感」を感じる肉類や果物類の大々的な提供は考えられません。

 むしろ寄付の使途にテーマ性を持たせてわかりやすくアピールすることが、結果的に鎌倉市のまちづくりに資することになるはずです。

 市議会での取り上げ方の中には、相殺して考えなくてはならない部分を顧みず、ただ推進を求める動きもありますが、制度を多面的に見た議論が必要だと思います。

自治体への支援で有効に使われることも
 ふるさと寄付金制度が有効に使われることもあります。大規模災害などが発生した時、被災自治体を特定した寄付ができ、税控除が受けられることで寄付が集まりやすくなる場合です。箱根町が91日に全面リニューアルした返礼品制度が、好調な出足をみせ、寄付金が短期に大幅増となったのは、返礼品のアピール度と共に火山活動活発化で観光客が減少した同町に支援をしたいという人が多かったことの表れでもあるでしょう。
 
また、高市総務大臣が1023日に行った記者会見によれば、9月の台風18号による鬼怒川の水害で被災した自治体に対して、茨城県常総市への約1,700件をはじめとして多くの寄付金が寄せられているとのことです。

 ふるさと寄付金は、制度としては後述のように(「その4」参照)イレギュラーなものであり、修正・見直しが検討されるべきだと考えます。しかし、現状として国が旗を振って制度が運用されている以上は、被災地等への支援の例にとどまらず、寄付をする側も受ける側も、寄付の使途にこだわった運用を心掛けることが望まれます。大勢は「ふるさとチョイス」であったとしても…。