特別な思いでむかえた憲法記念日

日本国憲法が公布されて70年になる節目の年に、自民党が改憲の方針を参院選の選挙公約に掲げることを明らかにする中でむかえた憲法記念日。朝日新聞の全国世論調査では、憲法を「変える必要がない」が昨年の調査の48%から55%に増え、「変える必要がある」が43%から37%に減ったということです(共同通信の調査では、「憲法改正に反対」は56.5%)。政権の暴走への危機感の高まりを反映した結果と見ることができるでしょう。

「変える必要がある」とした人があげた理由で最も多かったのが、「国防の規定が不十分だから」というもの。「国際情勢の変化」を安保法制強行の理由にあげた政府と同じ発想です。しかし、戦争がもたらした惨禍を見つめ、為政者が戦争への道を切り開くことを二度と許してはならないという国民の思いが日本国憲法の原点にあることは、決して忘れてはなりません。ましてや、誤った信念によって無視されてよいものではありません。憲法は、法律とは異なり、政治権力を縛ってその暴走を防ぎ、国民の基本的人権を守るもの。大切にされなければならないのは、「美しい国」でも、総体としての国民でもなく、一人ひとりの人(個人)です。

一方、神奈川新聞は5月3日の紙面の1面トップで、2013年12月~2015年12月に県議会を含む県内34議会のうち半数の17議会が憲法改正を求める意見書を採択していることを紹介し、「全国でも突出した多さであり、17議会のうちの9議会は、保守系団体『日本会議』関係者による陳情を採択した結果である」と報じています。
鎌倉市議会は、こうした動きとは一線を画し、2014年6月議会で「立憲主義の立場から、閣議決定のみによる憲法解釈の変更を行わないよう求める」意見書を、2015年6月議会で「立法により事実上の改憲を行おうとするのは、立憲主義を否定するものである」として安全保障関連法案の撤回を求める意見書を採択しています。

17議会の意見書の中には、明確に改憲を打ち出さない表現であっても結果的には改憲の方向性を導くものが多かった、とのことです。議会に提出される様々な意見書案の意図をしっかりと精査する必要性は、常々感じているところです。精査して、言うべきことは言い、反対すべきものには反対する。議会なら当たり前…のことですが、モノが言いにくい空気を助長しないために、それぞれの持ち場で気を抜いてはいけない、との自戒を込めて記しました。