どうする? 鎌倉版地域包括ケアシステム、在宅医療・介護連携

12月6日から始まった鎌倉市議会12月定例会の初日、一般質問を行いました。市議会のホームページに中継録画がアップされています。http://kamakuracity.gijiroku.com/g07_Video_View.asp?SrchID=210

前半は、地域包括ケアシステムと在宅医療・介護連携について、後半はごみ処理についてです。

地域包括ケアシステムが強調される裏には…
国は、団塊の世代が75歳以上になる2025年を目途に、住み慣れた地域で誰もが安心して自分らしい暮らしを続けられるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築を市町村に促しています。
しかし、介護保険制度においては、
「要支援1、2の人への介護保険サービスの給付が予防給付と位置づけられ、さらに市町村の地域支援事業である介護予防・日常生活支援総合事業に移行したこと」や、
「自立支援や重度化の予防に取り組んで成果をあげた自治体に対して国の交付金を増額させるという財政的インセンティブを導入すること」など、
3年毎の大幅な法改正のたびに給付抑制に向けた制度設計が顕著になっています。
また、制度の持続可能性を確保するとして、利用者負担の引き上げが行なわれています。
「地域包括ケアシステムの構築」には、介護保険の「保険制度としての後退」から目をそらすために強調されているという側面があると思わざるを得ません。

全体像が見えない鎌倉市
それでもなお、少子高齢化が急速に進む今日、同システムの構築が目指すべき方向性であるのは確かです。
松尾市長は、先の市長選のマニフェストに「鎌倉版地域包括ケアの実現」を掲げています。
しかし、数多くの自治体が地域包括ケアシステムの全体像を示して取組みを進めている中、鎌倉市においては「鎌倉版地域包括ケア」の全体像は見えて来ていません。
間もなく素案が示される次期(平成30~32年度)高齢者保健福祉計画の基本目標に位置付けられているとのことですが、具体的な施策がどこまで示されているかが問題です。
市役所の複数の関係課による、システム構築に向けた意見交換会は、この夏にようやくスタートしたばかりです。

地域包括支援センターは10ヵ所に増えたが
現行の高齢者保健福祉計画(平成27~29年度)に掲げられた施策に、地域包括支援センターの機能の強化があります。
この間、地域包括支援センターは7カ所から10ヵ所に増え、鎌倉市独自の職種である地域連携担当の活動が、地域とのつながりを広げています。
しかし、鎌倉市では、相談支援や様々な福祉の担い手の活動・連携のための地域拠点の整備はなされていません。
介護保険制度の枠を超えて「地域に足りないサービス」をコーディネートする生活支援コーディネーターは、3年間の計画期間の末期(年明け)にようやく5人配置される予定です。

在宅・医療介護連携はこれから
今回は、国が全国の市区町村に対して2018年4月を目途に取組みを求めている「在宅医療・介護連携推進事業」についても質問しました。
鎌倉市では2018年1月に、材木座の市医師会内に(仮)在宅医療介護連携相談センターが開設されます。
同センターの当面の主たる機能は、医療・介護関係者の相談・調整であるとのことですが、市内の医療・介護資源(担い手)の情報収集・整理は、実際には開設後になり、在宅医療に協力する医師を増やしていく方策の検討も今後に委ねられた課題であることがわかりました。

全世代・全対象型地域包括ケアをめざす?
システム構築の対象を高齢者だけではなく、障がい者、子育て家庭、生きづらさを抱えた若者、生活困窮者にも広げていく可能性があるか質問したところ、そうであるとの回答でした。
今年5月成立の地域包括ケアシステム強化法(介護保険法等改正法)に、地域共生社会の実現を図るとして「共生型サービス」の創設が盛り込まれました。
既に介護保険サービスを提供している介護事業所が、障害福祉サービス事業の指定を受けやすくなります。
鎌倉市が、こうした国の基準緩和策にただ従うだけをもって「高齢者だけでなく、障がい者も対象に…」と言うのだとしたら、不十分な話です。

現状では、地域包括ケアシステム構築の核となる組織(藤沢市で言えば、地域包括ケアシステム推進室)も施設(場)もなく、福祉・介護・医療の多様な担い手や地域住民の連携も、個別の実態はあっても、仕組みとしては見えてきません。
今回の質問を機に、今後の進捗を注視していきたいと思います。