深沢地区のまちづくり実現化、防災とは?


4月12日の記事でも、「深沢のまちづくり実現化」の取組みについて触れましたが、4月19日、深沢地区まちづくり方針実現化検討委員会の防災部会を傍聴したので、再び取り上げます。

これまで、本庁舎等整備委員会は、議会日程などと重なっていない限り傍聴していますが、深沢地区まちづくり方針実現化検討委員会は、部会も含めて傍聴してきておらず、今回が初めてでした。
結論から言うと、委員会および部会の位置づけ(何を議論するのか)が、ますますわからなくなりました。それでも取りあえず整理を試みます。

◆◆ 実現化とは? ◆◆
① 深沢の土地区画整理事業の事業性(≒採算性)

2017年度の「村岡・深沢地区まちづくり実現化方策検討調査」業務委託で、広域連携の検討調査が行われ、両地区の土地区画整理事業の実現化に向けた事業スキーム、新駅が設置されることによる費用便益、税収効果についての検討が行われました。

この「まちづくり実現化」の検討調査は、新駅を設置して両地区の区画整理事業を一体的に行う方が経済的に優位である、という結論を示したものです。
この時検証したのは、主として「事業性(≒採算性)」でした。

② 実現化≒まちづくりコンセプトの落とし込み
一方、2018年11月に設置された「鎌倉市深沢地区まちづくり方針実現化検討委員会」における「実現化」は、①とは別物です。

同委員会が市長から諮問された事項の一つが、「将来の社会環境の変化等にも対応できる実現性の高いまちづくりコンセプト及び実現化施策の検討 」です。
深沢地区修正土地利用計画(案)(2016年10 月策定)は、「健康生活拠点(ウェルネス・スクエア)」の形成に向けて、健康の維持・増進を始めとした「ウェルネスの7つの構成コンセプト」を定めています。
このウェルネスの構成コンセプトの内容を掘り下げ、土地利用の具体化(≒実現化)を図ることが、同委員会の重要なタスクであるようです。

<小括>これまで深沢地域整備事業については、実現可能性がどれだけあるのか、ということを問題にしてきたつもりです。
私としては、①の方が関心の範囲です。
財源の確保はできるのか、新駅設置の効果の検証は正しいか、公民連携のまちづくりを掲げても参入してくる企業はあるのか、防災面での課題をクリアできるのか(クリアするための事業費の増大に耐えうるのか)、道路交通の面での課題をクリアできるのか、等々が実現可能性(≒事業性)に関わる懸念としてあります。

しかるに、②の実現化検討委員会で検討している「実現化」は、もっとバラ色のまちづくりの話です。

常識的な発想だと、①に関わる事柄をしっかり押さえた上で②の議論になります。
あるいは、市長(まちづくり計画部)は、「ウェルネス・スクエア」で展開しうる土地利用の仕方や多様な可能性を具体化しておいた方が、①の財源確保や企業参入につながる、と考えているのかもしれません。しかし、②を膨らませば膨らますほど、①との間の距離は広がります。

直近でも、掲げたコンセプトに基本的な事業性がついていかなかった例として、「新焼却施設をめぐる経緯」が挙げられます。
施設整備の基本構想策定時には、「災害発生時にも下水処理の電力をまかなえる、高効率のエネルギー回収ができる焼却炉」というコンセプトが喧伝されました。
しかし、地元の合意が得られず、市長は建設を断念したのです。

 

◆◆ 防災面での検討とは? ◆◆
深沢地区まちづくり方針実現化検討委員会には、途中から防災部会が設置されました。
設置の理由は「本庁舎等の移転に伴い、深沢地区は防災の拠点として機能する必要があるため」とされていますが、もう一つの理由として、当該地における河川増水時の浸水リスク等に議会や市民の関心が集まり、無視できなくなったことが挙げられるでしょう。

「防災」と言っても、第1回部会と第2回部会では観点が異なり、第1回は、深沢地区の災害想定(同地区がどのような災害に見舞われるおそれがあるか)、第2回は、本庁舎が移転した場合の防災拠点として備えるべき機能について検討されたようです。

そして最終回の第3回では、災害時の水の確保、災害時の支援・受援(受援における新駅、ヘリポートの設置)、自助・共助・公助が「検討をお願いしたいテーマ」として事務局から有識者委員に示されていました。

しかし、各委員の専門的な知見を引き出すのにふさわしい検討テーマの示し方であったようには見えませんでした。

また、「これは本当に深沢について話されているのだろうか」と耳を疑うほど、最先端技術を取り入れることで可能になる「災害に強いまちづくり」についての知見が随所で語られていました。
一方、部会長からは、「将来の話」と「本庁舎整備の時点で応用できる技術」を整理しようとしているのかな、と思われる発言もありました。

<小括>
防災についても、前項の「実現化」同様、可能性をどんどん膨らませていく話に逃げず、リスクに目を向けた検討を、アリバイ的にではなくじっくりと行うことが大前提であり、そのようにした方が防災部会設置の意味があったと思います。