ふるさと寄付金について考える(その1-神奈川県は流出超過)
国の推進策で大きく伸びた「ふるさと納税」
総務省は10月23日、今年4~9月半年間の「ふるさと納税」による自治体への寄付額が453億5,500万円になったと発表しました。金額にして前年同期の3.9倍、件数も3.7倍(227万5千件)になったとのことです。
都市部と地方の自治体の税収格差を埋めようと2008年に始まった「ふるさと納税」は、任意の都道府県や市区町村に対する寄附金について、2,000円を超える部分において一定の限度額まで、所得税と個人住民税が控除される制度です(鎌倉市は実態に合わせて「ふるさと寄付金」の名称を使用(※))。本来税金として負担すべき分を、寄附として自分が意図したところへ届けることができるというわけです。(※このHP記事では、国の取組みを言うときには「ふるさと納税」を使い、それ以外は「ふるさと寄付金」とします。)
制度利用の拡充を狙った国が、2015年から控除の上限額を2倍にし、給与所得者については控除を受けるための確定申告も不要としたことが大幅アップにつながりました。
今回の発表で、寄付受取り額の最多は、自治体別では、約13億円の宮崎県都城市、次いで約12億円の山形県天童市。都道府県別では、山形県がトップで、北海道、長野県と続きます。
寄付獲得のための返礼品競争
制度の発足時には、都市住民が寄付によって生まれ育ったふるさとを応援できるように意図されていた「ふるさと納税」。しかし、多くの自治体が、地域の特産品等を寄付の返礼として贈ることで、より多くの寄付を集め、同時に地域の産業振興をはかろうとした結果、返礼品競争が過熱してしまったことが問題視されています。
本来なら、寄付を受けようとする自治体が寄付の使途をアピールし、それに賛同して応援したいと思う人が寄付をすることが望まれます。しかし、実際には、ふるさと納税の専門ポータルサイト「ふるさとチョイス」(運営会社トラストバンク)などを見て、2000円(控除されない額)の元手でギフトを選ぶ感覚で寄付先を決めるというのが大方の寄付行動のパターンです。これは、総務省発表のランキングからもうかがい知れます。
入りが多い自治体と出が多い自治体
他自治体の住民からの寄付で歳入増になる自治体があれば、逆に流出超過になる自治体があります。「ふるさとチョイス」を見ると、肉類(とその加工品)、海産物、果物などの農産物の名産が人気ランキングを占めています。返礼品のチョイスが寄付行動の決め手となっている現状では、一次産品等の名産品がない大都市圏が苦戦を強いられるのは、致し方ないと言えます。
神奈川県がふるさと寄付金の寄付総額と控除額の県内収支を推計したところ、2014年中に33市町村が受け取った寄付額約6億円に対し、住民税の控除額は約11億円で、差引き約5億円のマイナスとなったそうです。総務省の統計によれば、寄附税額控除額(実際に住民税が減った金額)のトップ3は東京都、神奈川県、大阪府です。
自治体間競争により地域の活性化が図られる、という国の言い分には、「上から目線」を感じずにはいられません。国は現在、「企業版ふるさと納税」の導入を検討中とのことですが、地方の声にもっと耳を傾けて制度設計を行うべきです。