鎌倉市議選結果と市役所移転
自分が立候補しなかった市議会議員選挙の結果についてクドクドと論評する気はありませんが、「市役所移転反対派は改選前の10議席から11議席に増え、市役所の位置を定める条例の改正が困難になった」という総括(神奈川新聞記事)は、「言い過ぎ」だと考えますので、その理由を述べます。
(1)市長が今後 位置条例改正を再提案した際に、「出席議員26人の3分の2の合意」(可決)のラインは賛成18人です。逆に言うと、反対議員が9人以上いると否決となります。
まず、2022年12月議会で位置条例改正議案に反対した10人のうち、今回の選挙で当選したのは7人だという点は押さえておくべきです(1人が不出馬、2人が落選)。
(2)次に、選挙公報に市役所移転反対を明記したのは長嶋・松中・中沢・岡田・栗原・武野・高野・出田・重黒木・津野・岩田・増岡の12候補で、このうち当選したのは下線の4人を除く8人です。
中村哲也氏は「市役所は鎌倉地域に残すべき」と記載し、 吉岡和江議員は「市役所移転は『市民の賛否を』」と記載しているので、「市役所移転反対を明記」の8人からは除外しています(この2人を加えても、11人ではなく10人です)。また、「条件付きで賛成」「今の市の提案のままでは賛成できない」と書いている当選者もいます。
市議選候補者に市役所移転の賛否を問うアンケートを実施した市民グループも新聞社も、賛成か反対かに単純に2分しますが、「断固反対」と言って理由もろくに述べない人を別にすれば個々に幅があり、「移転反対の当選者は11人」と既成事実化するのは強引すぎます。
(3)これは前から何度も指摘していることですが、深沢での新庁舎整備と市役所現在地の活用(市民活動の拠点+行政の窓口機能+防災機能+賑わい)については、判断材料(情報)が増えれば、判断が変わることはあり得るのです。判断が変わることは、「一貫性がない」とネガティブに言われるべきものではありません。
■2022年12月議会で位置条例改正議案は一旦否決されましたが、その後において現在地活用の基本計画ができ、新庁舎の基本設計のイメージが示されて、基本設計がまさに作られている過程において新たな情報が提供され、市民の反応などにも触れているわけですから、先に位置条例改正議案に反対した議員(上記(1))が、新庁舎の整備を「是」とする立場に変わるのは、何らおかしいことではありません。
■ましてや、今回の選挙で当選した「新人議員」の人たちは、これまでも市役所移転についての情報は収集していたとは思いますが、議員になったことで、情報を筋道だって整理し(例えば、どの情報が重要でどの情報が付随的・派生的なものかといったことや、時系列的な情報の蓄積経過、市の他の施策との関係などについての整理)、不明な点を質すことができるできるようになる訳ですから、今後において判断を変更する余地は大いにあると思います。
(4)最後に選挙公報を概観して特徴的だと感じたことに触れます。全体として、市が既に取り組む方向性を示していることを公約にしている例が目立ちました。
もう一つの特徴は、市役所移転反対を唱える候補が、議論の深まりがない漠とした理由しか掲げていないことです。
大きくまとめると、①現庁舎はまだまだ使える ②新庁舎整備(市役所移転)にはお金がかかる ― の2点です。
①については、本サイト4月27日付記事 建築工学的に見ると、「現庁舎はまだまだ使える」という主張は極めて危険! において、
②については、同4月25日付 北見市の事例を挙げて「新庁舎整備が財政破綻を招く」と煽るのは間違い! および 4月16日付 市役所移転の財政負担とは?単純化で危機感を煽る戦略にモノ申す において、いずれも反対理由として成り立たないことを説明しました。
以上の(1)~(4)が「市役所位置条例の改正が困難になった」という総括は、「言い過ぎ」であることの理由です。
今後はもっと前向きな議論をしていってほしいです!― ということで次の記事に続きます。

鎌倉駅東西自由通路の「新しい市役所のイメージ」の展示(2025.4.15)