市役所機能をあえて分散、市民サービスを集約化させたアオーレ長岡
10月31日、総務常任委員会の視察で新潟県長岡市を訪ねました。
まちなか市役所で中心市街地の再生をはかる長岡市
長岡市では、車社会への変化と郊外化現象などにより空洞化が見られた市中心部に再び活気をもたらすには、市街地から離れた場所にある市役所を市の中心部に移転させるのがよいと考えました。
そこで、長岡駅前の厚生会館の跡地に建てられたのがアオーレ長岡です。
コンセプトは、人が出会い、いきいきと活動する交流拠点。5000人収容のアリーナ、屋根付き広場・ナカドマ、市民交流ホール、市役所、市議会・議場などからなる複合公共施設です。
全ての市役所機能がアオーレ長岡に集約されたのではなく、至近の距離に大手通庁舎(商工部門の行政棟)、ながおか市民センター庁舎(農林・建設部門の行政棟)があり、これら3つの市役所庁舎の他に、まちなか子育て交流拠点、福祉の拠点(社会福祉センター)なども整備し、すべて併せて「まちなか市役所」と位置づけ、賑わいや回遊性を創出し、中心市街地再生をはかっています。
市役所機能をあえて分散、市民利用はアオーレ長岡に集約
市役所庁舎を3ヵ所に分散させていますが、市民利用の「総合窓口」や市民活動拠点は、アオーレ長岡に集約しているので、市民に複数の庁舎に足を運ぶ不便を強いることはありません。
東棟1階の総合窓口には、証明書発行窓口、住所変更・戸籍届出窓口、健康保険・年金窓口、福祉窓口、税金窓口、マイナンバーカード窓口、パスポート窓口、市営住宅窓口、会計課窓口などの他に、市役所なんでも窓口(町内会相談、市民相談、U・Iターン相談など)があり、また全体をまとめる市役所総合ガイド(係長級の「市役所コンシェルジュ」)の配置により、ワンストップ・サービスの提供を目指しています。
窓口に来た市民が、複数の窓口を移動しなくても情報、サービスに行きつくように職員が対応するとのことです。
フロア内の階段で昇り降りできる2階は、それぞれの窓口の所管課の執務スペースで、ある意味、市民対応のバックヤードになっている配置には感心しました。
総事業費は131億円、資金調達でも市民と連携
アオーレ長岡は、隈研吾建築都市設計事務所(新国立競技場の設計者)の設計による、機能面、コンセプトを体現したデザイン、環境配慮のいずれにおいても素晴らしい建物です。
工事費131億円(土地は長岡市所有地)の大部分を、市債(約42%)と市庁舎建設基金(約35%)で賄ったとのことです(※)。
(※) 一般財源 3億円、市庁舎建設 45億円、市債 54億円(合併特例債、特定事業用市民債を含む)、国の交付金・補助金等29億円(旧まちづくり交付金等)
整備にあたっては、民間企業の資金等の活用(PFI)の手法は採用していませんが、市債54億円のうちの25億円は、住民参加型の公募地方債「アオーレ長岡市民債」を発行して、市民から募ったものです。
市民との連携は、資金調達段階(市民債の発行)だけでなく、これに先立つ計画段階でも重視され(ワークショップ等の意見交換会を数多く実施、市民意見を反映)、開設後現在に至る運営段階でも大きな位置を占めています(NPO法人「ながおか未来創造ネットワーク」が市民利用スペースの運営、貸館受付、情報発信、イベントの企画立案等を担う)。
示唆に富んだ先進事例
中心市街地の再生を目標に掲げたプロジェクトであること、合併特例債を活用できたこと、鎌倉市役所の現庁舎の床面積が約12,000㎡であるのに対しアオーレ長岡は約3倍の35,500㎡であること等、鎌倉市の市庁舎本庁舎整備(移転した場合の跡地整備も含む)とは前提が異なります。
しかし、市役所機能の分散のさせ方、分散によるサービス低下を防ぐ総合窓口、行政と市民との各段階での連携等、示唆に富んだ先進事例であると感じました。