自区外処理、広域連携発言で混乱深まる鎌倉市のごみ処理
12月6日に行った一般質問の後半は、「安定したごみ処理と市長の自区外処理発言」についてでした。
市長選を前にした発言
鎌倉市長選挙の告示日直前の10月11日に行われた、新ごみ焼却施設建設に反対する住民の会との話合いの場で、松尾市長は「新焼却施設の山崎浄化センター未活用地での建設計画の白紙撤回はしないが、強行突破をしようとは考えていない」と表明し、「協議の幅を広げたい」として、逗子市・葉山町との広域連携や自区外処理に言及しました。
当選翌日の取材に答えても、「自区外や広域での処理が可能か幅を広げて検討している」と語っています。
これまでの自区外処理は緊急避難的措置
自区外処理は、名越クリーンセンターの基幹的改良工事の期間中、また一昨年度は今泉のクレーンの故障や年間の焼却限度量超過分への対応、昨年度は今泉のピットに滞留したごみの除却のためなどで行われています。
焼却を委託した先は、大和市、逗子市、高座清掃組合、民間会社などです。これらの自区外処理は緊急対応でした。
しかし、今回市長は、山崎周辺の住民の会の皆さんとの話合いの中で「協議の幅を広げたい」として言及したのですから、緊急避難的措置を意味したものとは考えられません。
新ごみ焼却施設の規模を縮小する、あるいは施設建設を行わないという意味に取られることを狙った、選挙を意識した発言であったと見るのが自然ですが、
自区外処理という言葉を使った真意は何か、との質問に対する市長の答弁は「協議の幅を広げるため」という曖昧な表現に終始しました。
広域連携をめぐってさらなる混乱
さらなる混乱を招いているのが市長の広域連携への言及です。
鎌倉市、逗子市、葉山町は、昨年7月にごみ処理の広域連携についての覚書を締結しました。
http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/skensetsu/documents/oboegaki.pdf
覚書の基本方針の1番目は、「2市1町は『ごみ処理広域化実施計画』の策定について協議を進める」というものです。
実施計画はまだ策定中で、現状では、2017年度中の策定という当初の予定どおりにはいきそうにありません。
中身が定まっていない「広域連携」という言葉を使ったことだけをとってしても、いかにも不適切でした。
また、基本方針の3番目には
「可燃ごみの焼却処理は、施設の稼働状況や災害時等の適正処理の観点から当分の間、鎌倉市の既存施設とこれに代わる現在計画中の新施設及び逗子市の既存施設の2施設で処理を行っていきます」
と書かれています。
ところが、市長選後の11月に中旬に開催された逗子市・葉山町との広域連携協議会で、鎌倉市は可燃ごみの処理を検討項目に入れることを要請し、了承されました。
可燃ごみの広域処理は逗子市に焼却を委託することに他なりません。
可燃ごみの処理を検討項目に入れる理由は?
協議会の場で、何故そのような要請をしたのか…
①新ごみ処理施設の建設候補地の住民を前にして広域連携という言葉を使ったことと辻褄を合せるため
②財政難の逗子市に処理費を払うため
③名越クリーンセンターで年間33,000tまで燃やせる年限は2017年度までで、来年度以降は30,000t以下に抑えなくてはならないが、その目標を達成できなかった際の保険として
④鎌倉市の新ごみ処理施設の建設が、名越クリーンセンターの稼働終了時(2025年を目途)に間に合わなかった時のための保険として
⑤新ごみ焼却施設の規模を環境負荷に配慮して縮小するため
⑥行政計画では作ることになっている新焼却施設を作る気がなくなったため
…などが考えられます。一体どうなのか、市長に確認しなくてはなりません。
⑥ということだと、鎌倉市のごみの全量を逗子市の焼却施設で燃やしてもらうことはキャパシティとして不可能なので、燃やすごみ量の半分をしめる生ごみを取り出して処分する施設を別に作らざるをえません。
鎌倉市のごみ処理施策混迷の「振出し」に戻ることになってしまいます。