新たな地方議員年金制度にNO!
議員のなり手不足対策で国の有識者会議が2類型を提言
3月26日、町村議員のなり手不足対策を検討してきた総務省の有識者研究会が、町村議会のあり方について2つのタイプの制度創設を求める提言を行いました。
一つは兼業議員を前提とした「多数参加型」で、夜間・休日を中心に議会を開催し、報酬を引き下げる方向。
もう一つは3~5人の少数専業議員による「集中専門型」で、報酬を大幅に引き上げる方向。
この2類型に「現状のまま」を加えた3パターンから各自治体が1つを選ぶよう提唱されています。
町村議会の状況は様々であり、2類型を示して選択を求めるというのは地方自治の軽視です。
2類型ともに議会の機能低下、特に行政の監視機能と多様な市民の意見を代弁する機能が低下するおそれが大きく、さらなる議論が必要です。
議員を職員と見なして厚生年金に加入できるようにする!
この「議員のなり手不足」という状況は、議員年金の復活を求める大合唱の中でも強調されています。
自民・公明両党は、3月2日、地方議員が厚生年金に加入できるようにする法案を今国会に提出する方針を固めました。
法案は、地方議員を地方公務員共済組合法上の「自治体職員」とみなして厚生年金の加入資格を与え、保険料を自治体と議員が折半する仕組みを規定するものです。
小さな自治体の議員が無投票で決まる実態が多いことをあげ、新たな年金の創出で引退後の生活を安定させることで、議員の「なり手不足」の解消をはかるのが狙いだとしています。
旧制度による年金給付と一時金支払いに公費から1兆3600億円
地方議員年金の廃止は2011年で、市町村合併などで議員数が減り、年金を運用していた議員共済会の財政が悪化したのが原因でした。
この時、廃止以前に掛け金を支払っていた地方議員は①退任一時金として掛け金の80%を受取ることができ、②3期12年以上在職して掛金を支払っていれば年金としての受給も選択できるとされました。
制度廃止で議員の掛け金が入らなくなり、その財源は全額税金で賄われています。
全国の自治体は、議員共済会から毎年通知される基準額・負担率に従って負担金を支払っており、2011年から給付対象者がいなくなるまでの60年間で累計1兆3600億円の公費負担と推計されています。
鎌倉市が2012~2016年度の5年間に共済会に支払った負担金の年額は、多い年で9574万円、少ない年で6140万円。
現職議員26人の政務活動費の交付総額1560万円に比べても多額の支出です。
新たな年金制度で、さらに年間170億円!新旧ダブルの公費負担
制度廃止後も大きな公費負担が続いている議員年金ですが、法案が可決し、新たな議員年金制度がスタートすると公費負担は新・旧ダブルになります。
総務省の試算では、地方議員全員が厚生年金に入ると、掛け金の半額を支払う自治体の負担は毎年約170億円にのぼるとされています。
どう考えてもおかしい新年金制度
非正規雇用が増え、厚生年金に入れず、国民年金の支払いも難しい人が多くいる中、議員だけを特別扱いにして、負担増を国民に強いるのはおかしなことです。
そもそも地方議員は自治体と雇用関係はなく、無理なこじつけに批判の声が上がっています。
議員のなり手不足対策と言っても、議員報酬が副業なしで生活していける額に満たないケースが多い町村議員のなり手が、新たな議員年金制度の導入で増えるとは思えません。
まずは手始めに地方議員年金を復活させるが、本当に復活させたいのは、破格の厚遇への批判の高まりを受けて2006年に廃止された国会議員年金ではないかという指摘もあります。
法律を定めるのは国会です。国会議員が、自分たちのために自分たちに有利な法律を作るとすれば、「お手盛り」の批判を免れません。
神奈川ネットワーク運動は長年にわたり議員年金に反対してきましたが、新制度創出法案の国会提出が現実化している今、議員年金NO!の声を広めるアクションを全開しています。