放課後等ディサービスの現状は?
8年間で急増した放課後等ディサービス
障がいのある就学児の放課後や長期休業中の支援を行う「放課後等ディサービス」は、事業者数が2012年の制度開始時の3,115から急増、現在では全国に13,000以上の事業所があり、20万人の子どもが利用しています。
利用には、市町村が発行する受給者証が必要で、保護者が事業所を選び契約します。利用者は1割負担で、9割が国や自治体の公費で賄われています。
鎌倉市内には14の事業所があり、運営主体は、社会福祉法人が2か所、NPO法人が3か所ありますが、それ以外は株式会社です。
2018年の改定で、むしろ非営利の事業所が苦境に
10月19日、神奈川ネットが毎月開催している「おしゃべりサロン」のゲストに、放課後等ディサービス「はっぴーわん」(玉縄1丁目)と同「れいんぼーびぃ」(台1丁目)を運営するNPO法人の理事長、吉原正人さんをお迎えし、放課後等ディサービスの現状や課題についてお話を伺いました。
国は、2012年に児童福祉法を改正し、放課後等ディサービスへの事業者の参入を促す規制緩和を行いました。その結果、全国的に主に株式会社の新規参入が相次ぎましたが、事業所により療育の質にバラツキがあると指摘されるようになりました。
そこで、2018年4月、厚生労働省は「支援の質を担保する」として、預かる子どもの障がいの状態に応じて、事業所の運営費を増減させる仕組みを導入し、保育士や児童指導員など職員の資格基準を厳格化する制度改定を行いました。
しかし、放課後ディの関係者からは「子どもの障がいの状態の点数化(指標判定)が療育の大変さを反映していない」「基準より職員人数を増やして熱心に療育に取り組む事業所が追い込まれている」「営利目的の事業所を排除するよりも、むしろ非営利の事業所を苦しませることになっており、子どもの発達を促す質の高い実践を保障する制度にしていくべきだ」との声があがりました。
実際、報酬改定によって8割近い事業者が減収となったそうで、「全国放課後連」では「放課後等デイサービスの指標判定と報酬区分廃止を求める要請書」に賛同する署名を集めています。
障がいのある子どもたちが、放課後の時間を家庭でも学校でもない場所で、親や先生以外の大人や友達と安心して過ごすには、子どもたちの視点に立った支援を提供する事業者が事業継続することができるようにしていかなければなりません。
現状で不足している支援
吉原さんからは、鎌倉市において障がいのある就学児への支援で必要とされるものとして
▽児童のショートスティ
▽医療的ケア児への支援
▽車いす利用者のためのサービス提供事業所 があがりました。
また、高等部卒業後の夕方支援のあり方についても問題提起していただきました。
注目の「海藻ポーク」は福祉と水産・畜産の連携
さて、鎌倉の海岸に流れ着く海藻を飼料に育てた豚を、地域発のブランド豚として広める「海藻ポーク」の取組みが昨年から始まり、マスメディアでもしばしば取り上げられています(※)。
海藻を飼料に加工する作業を、市内の3障がい者福祉事業所が請け負っており、そのうちの1つが吉原さんたちのNPO法人です。同法人は放課後等ディサービスのほかに、成人の生活介護「わんびぃさん」を行っており、湘南モノレールにほど近い「わんびぃさん」には、海藻が干してある光景がしばしば見られるようになりました。
材木座、坂ノ下の海岸から大船まで海藻を持ってきて作業をするのは大変、海岸近くで3事業所が共同で作業できる場所が確保できると良いのだが…というお話も伺いました。福祉と水産・畜産・商工の連携、ということで鎌倉市の後押しを期待したいところです。
※神奈川新聞2019年7月9日記事
「海藻ポーク」、鎌倉から広めよう 畜産、福祉と連携 https://www.kanaloco.jp/article/entry-180424.html