鎌倉市の近代史資料室

11月10日、昨年夏に配置変更が行われた近代史資料室を見学しました。「図書館とともだち・鎌倉」の皆さんによる企画です。

近代史資料室の守備範囲
 鎌倉市では、古代から近世にかけての文化財的内容は文化財課、中世から近世の書跡・古文書は鎌倉国宝館(文化財施設課)、幕末以降の資料は図書館(教育部)が受けもっています。近代史資料室は1977年に中央図書館内に設置されて、既に40年以上が経っています。

近代史資料の収集・保管・調査・研究などの資料室本来の業務と共に、同室では2014年からは長期保存の行政文書から歴史的公文書を選別する作業が行われるようになりました。現在は選別作業のために2人の会計年度任用職員を配置しています。

図書館振興基金を活用した購入(予定)資料を多目的室で見せてもらいました

昨年夏のリニューアル
2019年7月、中央図書館3階の多目的室が「近代史資料室書庫(収蔵庫)」に改造され、地階にあった和漢籍も含め、館内各所に分散保管していた約100のコレクション500箱以上が収蔵・配架されました。

書架と事務スペースが混在していた元の近代史資料室は、多目的室と視聴覚ライブラリーに変わり、新たな近代史資料室は事務室内に移転。
同時期にホームページもリニューアルされて、デジタル化された資料室コレクションが閲覧できるようになっています。

近代史資料室 事務室

収蔵庫や資料室の現状は?
収蔵庫の書棚は市内の図書館から寄せ集めたそうですが、上部にブリッジを渡して地震でも倒れないようになっています。資料は、劣化を防ぐ中性紙に包んだり、中性紙の箱に入れたりしていますが、新聞紙に包まれたままの資料もありました。

室内の温度・湿度は1日に2回点検。全館共通の空調を入れるよりも、空調を切った方が湿度が一定に保たれることがわかったそうで、空気清浄機のみ運転させていました。

現状では書架にも一定程度ゆとりがあり、「風通し」の面でも昨年までの資料保存環境に比べれば格段によくなったと思われます。ただ、収蔵資料の増加にどこまで対応できるのかは気になるところです。

昨年整備された収蔵庫

近代史資料室内に設けられた歴史的公文書選抜スペースは写真のとおりです。廊下のようなところで作業が行われていた以前と比べれば整備されたと言えますが、選別する分だけ持ってきて選別し、完了したものは貸倉庫に移動させるということで、最小限度の広さであるとも言えます。

事務室内の選別スペース(机は一つ)

活用に向けて
収蔵庫の資料は「〇〇家文書」「〇〇関係資料」という括りでは整理されて配架されていますが、文書目録はできていません。
一方、選別作業が済んだ歴史的公文書は貸倉庫に移されます。

デジタル化は多くの人が容易に見ることができるという点でメリットがありますが、原本の適切な保管が必要であることには変わりがありません。
将来的には近代資料室所蔵の近代史資料と歴史的公文書を一体的に保管できる公文書館(的なスペース)を設け、文書目録が整備・デジタル化されて、歴史的な価値のある資料・文書の公開・活用が進むことが望まれます。