戸別収集~予算がとおり、先行実施地区の公表も

広報かまくら8月号で既にご覧の方も多いと思いますが、来年4月から燃やすごみの戸別収集が始まる「先行地区」が公表されました。
七里ガ浜・鎌倉山・山ノ内・今泉・今泉台・岩瀬・笛田・大町五丁目自治会・松葉町内会(材木座)の10,000世帯です。

先行地区の選定理由は、過去にモデル事業を実施しており円滑に導入できる地区 市環境部の施設から近く、市職員が即座に対応できる地区 高齢者や子育て世帯の居住割合が多い地区…というものですが、収集曜日の偏りがないような調整もされているとのことです。

「燃やすごみ戸別収集運搬業務委託」の委託事業者の公募型プロポーザル方式による選定も始まりました (8月5日公募開始)。先行実施地区の委託先だけをまず決めるのではなく、再来年度からの全市展開における委託先(A~D地区、軽地区、マンションルートの6本立て)も同時に選定します。

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実施に向けた行程が進んでいるのは、先の6月議会で戸別収集実施のための経費が補正予算案(第2号)に組み込まれて提案され、賛成多数で可決したからです。
戸別収集の予算に反対したのは、ネット・共産党・千議員の6人です。
反対理由は大きくまとめれば2点ですが、要約だと意図が伝わりづらいので、議案採決の前に保坂が行った「反対討論」を下記に掲載します。

予算がとおり、戸別収集実施に向けて始動している現段階においては、より良い市民サービスになるよう図りつつ、着実に実施できるように努めることを市に求めます。
(過去のモデル実施地区で今回の先行実施地区に決まった七里ガ浜在住のネットのメンバーが、ネット鎌倉のホームページに体験にもとづく記事を載せていますので、そちらもご覧ください。)

 

***** 戸別収集の予算を盛り込んだ補正予算案に対する反対討論 *****

補正予算に本年度支出の委託料と来年度から4年間の債務負担行為
2025年度に先行実施エリアの1万世帯、2026年度に全市域を対象に、家庭系の燃やすごみの戸別収集を始めるとして、5月に「鎌倉市における戸別収集のあり方についての方針」が策定され、補正予算2号において本年度要する委託料などの経費の計上と令和7年度から10年度までの債務負担行為の設定がされています。
神奈川ネットは、これに反対するものです。

今回は非常に悩みました。市政報告会などの場で何度も参加者の御意見を伺い、また近隣市の戸別収集の現場も見学しました。戸別収集になるとゴミ出しの負担が減って助かるという地域住民の声も伺っております。それでも、やはり鎌倉市は今ここで戸別収集に踏み切るべきではない、というのが結論です。

理由は大きく2つに分類されます。一つは戸別収集実施体制を構築し、将来にわたって維持できるのかということに関して懸念があることです。もう一つは、市長が掲げている戸別収集実施の目的に対する違和感です。

実施体制への懸念
はじめに実施体制への懸念について述べます。

国立環境研究所が 2020 年に全国の自治体を対象に行ったアンケート調査によると、回答939自治体のうち、ステーション収集のみを行っているのは 56%、ステーション収集を行いつつ、鎌倉市の声掛けふれあい収集のような高齢者のごみ出し支援の戸別収集をし行っているのは 35%、戸別収集のみが 8% ―という結果でした。
4年前の調査ですから、現在は二ケタ台になり、2割に近づいている可能性もありそうですが、全体的に見ればまだまだ少数派です。

鎌倉市が参考にした東京都の多摩地域の自治体の戸別収集実施率が突出して高いのは、かつて日の出町の最終処分場問題が大きくクローズアップされた地域であり、地域を横断して廃棄物処理・資源化施策の模索が続けられてきたことが影響しているのではないかと推測します。

そして、国立環境研究所が戸別収集をしていない自治体にその理由を聞いたところ、回答した848の自治体のうち、「収集コストが高くなるから」が81%、「人員・体制の確保が難しいから」が79%という結果であったとのことです。「人員・体制の確保が難しい」ということは、高いコストと並んで二の足を踏む要因なのです。

戸別収集のあり方についての方針の策定に至る過程で、環境部の担当課は実地の調査も含め、丁寧な検討を重ね、本市において戸別収集の実施を可能とする最適なやり方の模索に努めたと受けとめています。収集事業者の選定を公募型プロポーザルで行う際、市域を数ブロックに分けて公募するというのは、危機管理の観点でよい方策であると思います。しかし、意地悪く裏を返せば、一般論としてそれくらい厳しい状況なのだということでもあります。

「管理が上手くいっているクリーンステーションも、5年後10年後も今の良い状況が保たれているかどうかはわかりませんよ」と市は言いますが、戸別収集の収集体制も5年後までは何とか継続できるかもしれませんが、本市の場合、全面的に民間委託で行うだけに10年後も収集人員が確保できるかどうかはわかりません。

収集体制、人の確保ということで言うと、戸別収集の業務が、本当に身体的な負担が大きいい業務であることにも触れない訳には行きません。
葉山町の狭隘地区で収集の現場を見学し、手際の良さに感嘆し、プロフェッショナルであることがよくわかりました。葉山町の戸別収集は直営で、戸別収集の開始に先立って、60歳の収集員でも収集業務を担えるワンクール2時間程度の無理のない収集コースの設定を町職員である収集員の人たちが皆で組み立てたそうです。

鎌倉市ではその準備作業を担当課の職員が行っているとは思います。しかし、効率的な収集コース設定ができたとしても、収集員の労務の身体的な負担は大きく、そのことに思いを致さない訳にはいきません。同時に、受託する民間事業者は恒常的に人の確保ができるのだろうかと危惧するものです。

先日の市民環境常任委員会では、現在直営でおこなっている声掛けふれあい収集も、将来的には委託事業に移行するという答弁がありました。
戸別収集における人及び体制の確保が取りわけ気になるのは、直営による収集が先細り、今や声掛けふれあい収集のみになり、それもいずれは民間委託に移行するという、本市の清掃事業の大もとのあり方が心許ないからです。

 

戸別収集実施の目的に対する違和感
2つ目の戸別収集実施の目的に対する違和感について述べます。

2013年度からモデル地区で戸別収集が行われた際には、ごみの削減が最大の目的にあげられていましたが、今回は「CS収集に伴う様々な課題の解消」ということが強調されています。「近隣住民にCSの維持管理の負担を強いている状況があり、5年10年先もそれが可能とは限らない」とのことです。

ゴミ収集という行政サービスを福祉的な視点で改善しようとするのは大変良いことですが、「何故今にわかに福祉的な視点を強調し始めたのか」という疑問を感じています。所管課は説明会を多数回開催し、わかりやすい説明を心掛けていたとは思いますが、そもそものところで福祉的な視点を強調するようになった経緯が腑に落ちないのです。

また、燃やすごみ1品目を全市域で戸別収集した場合の積算額は、「出」の部分だけを見ると年間5.5億円で、現在のCS収集経費2.3億円からは3.2億円の経費増となります。この経費増に見合った理由が、「CS収集に伴う様々な課題の解消」だけでよいのか、という問題もあります。

鎌倉市は名越クリーンセンターでの焼却を2025年1月下旬には停止し、以後燃やすごみは年間1万トン以内を逗子市の焼却施設で、残り1万トン超を市外の民間施設で処理することになります。逗子のクリーンセンターで燃やしてもらうごみをなるべく少なくするというのは、鎌倉市が直面している大きな課題です。
戸別収集により約10%のゴミの削減を見込んでいるわけですから、戸別収集実施の目的として ごみの減量化をもっと明確に言うのが、市民に対して誠実な姿勢であると思います。

また、「以前から逗子のクリーンセンターで燃やしてもらっている葉山町が戸別収集を行っているので、鎌倉市も足並みを揃えるという判断もあるのだ」と言われれば、私の場合は結構納得します。
戸別収集の実施とごみ処理広域化を結び付けた説明があまりされていないのは、逆にごみ処理広域化の先行きが不透明なのかと勘繰ってしまいます。

先ほど逗子市の焼却施設で年間1万トン以内の量を燃やしてもらうと申しましたが、2025年度の予定は9000tだったかと思います。

他自治体の取組みの話になりますが、鎌倉市の燃やすごみを受け入れるには、逗子のクリーンセンターで処理する逗子市と葉山町のごみを減量化する必要があり、その一助として葉山町で整備中の生ごみ資源化施設を来年3月から稼働させ、資源化により年間4000tの減量化をはかる計画があると聞いています。
しかし、この生ごみ資源化施設の整備スケジュールは遅れているとのことで、今年はじめの町議会で「工事の遅れは取り戻せる」という答弁があったものの、元々あった施設の除却がようやく終わり、整地はこれからという現状だそうです。施設の完成が遅れた場合は鎌倉市のごみの受け入れ量にも影響が出てくるのではないでしょうか。

これは一つの例ですが、申し上げたいのは、本市のごみ処理に関する危機的な状況に対する認識を、市民との間でもっと共有化しなくてはならない、ということです。

逗子のクリーンセンターも稼働できる期間は限られています。将来的に広域連携の圏外の民間頼みが増えることは間違いなく、そのコスト高を考えると、いったん始めたらやめられなくなる戸別収集を始めることがよいのでしょうか?
戸別収集を、危機的な状況を乗り越えていく切り札の1枚として捉えてよいのかわからないことから、関連経費の予算化には賛成できません。

戸別収集の恩恵に浴することがない共同住宅への配慮が乏しく、特に、これまで近傍のクリーンステーションにごみを出していた小規模の共同住宅が敷地内にごみ排出場所を設けることが支障なく進むのか懸念されることも申し添えます。
以上で討論を終わります。

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ネット鎌倉ホームページの記事も燃やすごみの戸別収集開始に向けて | 神奈川ネットワーク運動・鎌倉 (kanagawanet.jp)