9月議会振り返り④ ~決算に対する意見

この間、神奈川ネットの地域配布ビラ「まちづくりレポート」の作成などがあり、「9月議会振り返り」記事の間隔が空いてしまいましたが、今回で一区切りです。
10月2日の定例会最終日、神奈川ネットは令和5年度一般会計歳入歳出決算ほか決算認定関係諸議案を「認定」しました(昨年は令和4年度決算を不認定)。採決前に行った「決算認定討論」を紹介します(一部を省略し、小見出しを付記)。

2024.10.02決算に対する討論

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1.2023年度における本庁舎整備の取組みの評価
令和5年度予算案に神奈川ネットは賛成しました。重要な時期を迎えた本庁舎等整備を引き続き進めることを踏まえた予算であるため、その前年の12月議会で市役所の位置を深沢に定める条例議案に賛成した立場から支持すべきと判断したものです。

2023年度における本庁舎等整備の取組みを振り返ると、8月に現在地利活用基本計画の中間とりまとめが公表され、年度末には「鎌倉市市庁舎現在地利活用基本計画 プラン1.0」の策定に至っています。現在地に中央図書館、鎌倉生涯学習センター、市民活動(NPO)センターを複合化し、手続や相談といった行政サービス機能や情報発信機能、災害時に市民の拠り所となる防災拠点機能を備えた複合施設を整備することが、必要とされる床面積の確保などの物理的な側面からも可能であることが示されたのは前進です。

特に、①現在の市役所1階で対応している主な手続や相談に関し、オンラインによるサービス提供も含めると「できない手続・相談がない」状態を目指しうることと、➁民間機能には公共機能に必要な床面積を確保した残りのスペースを当てること の2点が明確になったのは、「市役所移転で不便になるのではないか」という現在地に近い地域の住民の懸念の解消をたすけ、さらには市民の拠点として有効に活かされるイメージの喚起につながりました。市庁舎の深沢移転に対する理解を広める役割を果たしたと理解します。

市役所の位置を深沢に定める条例が成立していないことに対して、「全市的な視点と将来世代への責任において本当にそれでよいのか」と問われているのは議会です。議会は声を発せない将来世代からも問われていることを認識すべきです。
同時に、市長には、市民の間で「市役所を深沢に移転すればもっと良くなるという期待感」に止まらず「鎌倉市は良い方向に向かっているという実感」が高まるような市政運営を求めるところです。

2.一般会計の歳入の概観/ふるさと寄附金の現実
(略)

3. 財政調整基金の残高と財源を充てるべき施策
決算等審査特別委員会では、財政調整基金が約7億円積み増しされ、年度末に88億2600万円となったことに関心と批判が集まりました。
財政調整基金の年度末残高の高水準での推移は鎌倉市に限ったことではなく、全国的な傾向です。だから問題ないと言っているわけではありませんが、財政調整基金は目標額を定めたり、特定の事業目的のための備えとして積み立てている基金ではなく、基金の年度末残高はその年度の財政運営による増減の結果であることを踏まえておく必要はあります。

ですから、議論すべきは、政調整基金の年度末残高の多い少ないということよりも、「市民の暮らしを支えるためにもっと財源を充てるべき施策があったのに怠っていたのではないか」ということであり、有効な新規施策や現状で支出額が足りない施策にもっとお金をつけることを具体的に提案するべきものだと考えます。

例えば、今回の決算審査では、高齢者の外出支援策が現状において極めて不十分であり、外出支援で講じうる策についてデータに基づいて検討する協議体を立ち上げ、期限を区切って方策を具申させるべきであるという意見を付しました。決算特別委員会で取りまとめた意見には東京都のシルバーパスの例を挙がっており、私自身は、これまでに川崎市の「高齢者外出支援乗車事業」を紹介しています。市営交通を持たない鎌倉市において取りうる策については、他市の事例を豊富に集約し、鎌倉市固有の状況とすり合わせて最適な策を生み出してほしいと思います。

4.大きな財政支出を要する事業
一方、今後に控える大きな財政支出としては、本庁舎等整備・学校施設の更新・消防施設の再編・市営住宅の第二次集約化事業・持続可能型下水道の再整備など、枚挙にいとまがありません。
これについては、2022年度予算案の討論の中で次のように述べています。「持続型下水道整備や津波避難困難地域の解消は、本当は本庁舎整備よりも先に取り組んでほしいくらいです。しかし、大きなプロジェクトは、実施に移すまでに長い時間を要します。例えば本庁舎整備、学校の老朽化対策、持続型下水道の再整備を一斉にスタートラインに並べ、市民生活に関わる優先度合いに応じて一番目、二番目、三番目スタートと割り振ることができるかというと、それはできません。実行段階に移るタイミングというのは、それまでの取り組みの積み重ねがあってやってくるものだからです。」この考えは、今も変わりません。

ですから、取組みを積み重ねてきた本庁舎整備については次の段階に進んでいってしかるべきだと思います。学校施設の老朽化対策については、2023年度末に学校整備計画の取りまとめに至りました。築年数で3分類し再整備の大まかな時期と手法を示したもので、具体的な学校名を上げて整備に取り組む順番を示すには至っていませんし、地域拠点校構想の見直しに大きく踏み込んでいませんが、全体的なロードマップと示したことは意義があります。

5.人手不足に対する危機感と次期職員数適正化計画
今日、人手不足・人材難が非常に広範な分野で問題になっています。特に暮らしを支えるエッセンシャルワーカーについては深刻です。2023年度1年間に看過できない数の介護保険事業所が閉鎖・撤退したことについても、働き手の確保が困難であることが大きく影響しています。
今回の決算審査では、この人手不足・人材難について問題意識を持ち、様々な分野で状況の確認を行いました。市の業務委託先や指定管理者となっている民間事業者も人手不足に悩んでいる状況があります。民間事業者が安定して事業を継続できるような連携の仕方を考えなければならないところに来ているとも言えます。
その一方で、市の職員を増やさずアウトソーシングを進めるやり方も改めるべき時が来ているように思います。特に次期の職員数適正化計画の策定にあたっては、必要な人材の確保に方向転換をはかるべきです。