東北3県に総延長370㎞の防潮堤!鎌倉では?
「粘り強い海岸堤防」の大きさに驚く
10月13日午後、横浜で開催された防潮堤問題を考える勉強会(NPO法人かながわ311ネットワーク主催)に参加しました。勉強会では、首都大学東京の横山勝英准教授が、「防潮堤の機能・役割 被災地の環境・くらしへの影響」について、日本自然保護協会の朱宮丈晴 保全研究部部長が、東日本大震災後の海岸調査結果等について講演されました。
国は、青森県から千葉県の太平洋沿岸で巨大防潮堤建設計画を進めています。岩手、宮城、福島の3県だけで総延長約370㎞です。防潮堤の高さは10m前後で、最高14.7m。約8200億円の国費を要すると言われています。大津波は現在、数十年~数百年に1回生ずる「レベル1」と、数百年から千年に1回生ずる最大規模の津波「レベル2」に分類されていますが、国から方針が示され、県・市が整備を目指している防潮堤はレベル1対応です。横山准教授の説明で示された防潮堤の断面の形は、高さと底幅の比が1対4強の緩やかな斜辺を持つ台形(台形の上底幅は3m以上)でした。津波が防潮堤を超えたとしても直ちに全壊しない「粘り強い構造」とのことですが、高さ10mだと底幅は何と43m以上となり、浜全体を覆い尽くすような巨大さです(岩手県では国が推奨するこの型以外の防潮堤も作られます)。
講演では、これは災害復旧ではあっても復興事業ではない、ということが強調されていました。本来なら、沿岸部の土地について、この土地には住民が住み続ける、この土地は今後居住用途には使わない、ということを住民合意で決めてから、防潮堤の計画に進むべきであるのに、復旧予算のつく5年間で決着、ということが、様々な軋轢を生じさせています。住民のほとんどが他に移転した土地に巨大防潮堤を建設したり、住民の要望を汲まずに一律な高さ・形態の防潮堤を建設するのは無駄な公共事業です。それが住民の暮らしを分断させたり、生態系の破壊にもつながるなら、尚のこと、このまま進めてよいのか、という思いにかられます。
鎌倉市の次期基本計画案にも「防潮堤」の文字が
12月議会にかかる鎌倉市の次期基本計画(平成26~31年)の最終案は、計画の推進に向けた考え方として4本の柱を掲げており、そのうちの一つが「歴史的遺産と共生するまちづくり」です。その中の「防災対策の推進」の項が「防潮堤、防潮扉などの海岸保全施設の整備に向けた取組や、津波避難路の整備など、市民・観光客等の安全対策を進めます」となっていることに、9月議会の常任委員会審査で関心が集まりました。海岸を管理する神奈川県は、レベル1の津波については、海岸防護施設の建設が有効と判断しているとのことです。「防潮堤、防潮扉などの海岸保全施設の整備に向けた取組」という表現は、防潮堤建設を既定路線としたものではありませんし、「粘り強い構造の海岸堤防」が想定されているのかどうかも不明ですが、建設費が国の負担だとしても、防災対策の優先度としては大いに議論のあるところです。