鎌倉市が運営する通信販売サイトにコンプライアンスの問題が!
住民訴訟が起こされていたF&Bホールディングス
鎌倉市が運営する通信販売サイトが、10月31日に立ち上がります。サイトの名前は、KAMAKURA sg (sgは、satisfaction guaranteedの略)です。佐賀県武雄市発祥で、現在全国17自治体が参加しているJAPAN sgという「自治体運営型 通信販売サービス」のネットワークに、鎌倉市も新規参入するのです。ところが、自治体から通販サイト構築と運営の業務委託をされているF&Bホールディングスという企業連合(福岡市)の構成員である武雄市が住民訴訟の被告になっていることが判明、これをめぐって、10月18日、総務常任委員会協議会が開催されました。
雇用創出につながらない基金事業
鎌倉市は、この通販サイト構築運営事業を業務委託するにあたり、国の緊急雇用創出事業臨時特例交付金を活用しています。約720万円の業務委託費は、6月定例会で補正予算が成立した後、県の補助金として交付されました(補助率10/10)。
私は、補正予算についての討論で、雇用創出のための基金事業は地域における恒常的な雇用機会の拡大につながらなくては意味がない、として、「地域の実情や創意工夫に基づく雇用の受け皿創出につながるよう、委託先の選定、委託事業の点検評価等、きめ細かく行うこと」を要望しました。
しかし今回、通販サイト構築運営事業で新規雇用された人員が2名であることが明らかになりました。F&Bの拠点は福岡なので、この2名が鎌倉の現地スタッフとして市内の事業者の調査、通販サイトへの出店の働きかけ、サイトのイメージの構築などの業務を行なうという位置づけです。雇用創出のための基金事業では、新規雇用する失業者に向けられる人件費の割合が2分の1以上であることが定められています。業務委託契約書では、720万円のうち、390万円が2名の人件費となっています。
武雄市が連帯債務?
さて、F&Bは武雄市と民間2社によって構成される企業連合です。10月1日に住民訴訟を提起した原告は、武雄市が民間2社と協定を結んでF&Bを発足させた際の協定書に、武雄市が連帯債務を負う内容が含まれること等をもって、「自治体は法によって定められた法人を除き、法人に対する債務保証をしてはならない」という財政援助制限法3条に違反するなどとして、違法確認を求めています。
これに対する総務常任委員会での政策創造担当(本事業の所管)の見解は、「住民訴訟の行方は見守るが、市にとって重要なのは、事業が契約どおり履行されることで、今年度末の基金事業終了後も、通販サイトの運営は継続していきたい」というものでした。また、武雄市が訴訟を提起されたことで、鎌倉市の事業遂行に支障が生じたり、出店者から賠償を求められたりするリスクはないのか、との質問には、業務委託契約の中に契約解除権なども盛り込まれており、リスク回避の担保はされている、との説明でした。
10月8日に行なわれた出店募集の説明会には出店の意欲をもつ市内の業者18社が参加し、通販サイトへの期待感を示していたとのことです。そうした期待を裏切るような事態にならないことを願います。その一方で、事業が契約どおり履行されさえすれば、法令遵守の面で問題を抱える委託先でよいのか、疑問を感じないわけにはいきません。
再び22日に協議会が開かれます
今日の総務常任委員会協議会は、結局延会となりました。F&Bという企業連合がパススルー(組合業務にかかる損益が組合ではなく組合員に直接帰属する)の任意組合で、消費税を支払っていないのに、鎌倉市が事業費に消費税(約34万円)を含む委託費を支払う契約になっており、契約の一部見直しの必要性が指摘されたためです。協議会は22日に再び開かれます。
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KAMAKURA sg の構築・運営が雇用創出のための基金事業としてふさわしかったのか、この事業を展開するなら事業のノウハウやネットワーク力で業務委託先はF&B以外は考えられないような状況にあって、委託先のコンプライアンスは不問にしてよいのか、市の事業遂行の姿勢が問われます。