新規循環バスの社会実験をどう考えるか

横須賀線久木踏切

 5月3~5日に鎌倉市で実施された新規循環バスの社会実験の目的は、渋滞解消に有効かどうかの検証ではなく、交通渋滞で不便を強いられるエリアの住民の不便解消に役立つかどうかの検証です。
社会実験の結果を踏まえ、新規ルートの循環バスを鎌倉市の交通渋滞の「特異日」(渋滞が特に激しい連休など)に営業運転するかどうかの判断は、バス事業者(京急バス)に委ねられます。結果的に「押し寄せた観光客のための増便」であったことからすれば、どうせ増便するなら少しでも空いたルートを走らせた方がよい、とのバス事業者の判断もありえます。
しかし、これから述べるのは、今後新規循環バスを走らせるべきか否かについての所見ではありません。全額市費で賄われた今回の社会実験の実施をどう評価するか、ということです。

 幸いにしてなのか、不幸にしてなのか、今年の5月の連休中にひどい渋滞は発生しませんでした。「渋滞が発生しなかったので、在来路線のバスに対する新規循環バスの優位性が確認できなかった」と捉えるのか、「渋滞は発生しなかったが、泉水橋付近から鎌倉駅に至る新規ルート部分が15分程度で走行できて、渋滞エリアの住民へのサービスとなることがわかった」と捉えるのか、評価は分かれそうです。

 私は次のように整理してみました。

渋滞の度合い

循環ルートと在来路線の所要時間の差

渋滞エリアの住民への貢献度

久木踏切横断の危険度 (*)

極めてひどい渋滞(**)

相対的に
小さい

小(***)

金沢鎌倉線がひどい渋滞

大きな渋滞の発生なし

僅少

(*)久木踏切は前後の道幅が狭く直進が難しい
(**) 交通渋滞の特異日に金沢鎌倉線が泉水橋あたりまで混んで来ると、市外からの流入車は浄明寺ハイランドへ迂回。新規循環ルートも渋滞となる
(***)①のパターンでは、従来ルートより時間短縮ができてもバスの利用は考えられないため貢献度は小さい

 今回は、表の③のパターンでした
②のパターンだったら、バス事業者の営業運転への取組みを後押しする有意な数字も得られたでしょう。しかし、③のパターンだったから社会実験は不発に終わった、と結論づけるつもりはありません。
①~③のどのパターンにしろ、上記の表に示したような内容は、そもそも社会実験をしなくても、住民やバス事業者には自明の理であった、ということこそが問題です。
そして、循環バス利用者の大半は新規ルートに差し掛かる前に下車した観光客であった、ということもまた自明の理でした。

 私は昨年12月議会の本会議の討論で、社会実験の立案段階で利用対象エリアの住民からの意見聴取に力をいれるべきだった、そうでなければ社会実験は無駄遣いの誹りを免れない、と指摘しました。実験の実施を受け、その思いをさらに強めています。