鎌倉山二丁目開発の上告受理申立をめぐり、休憩続く鎌倉市議会

副市長の代理決裁による上告受理申し立て手続き
 鎌倉市議会6月定例会は12日(金)午後の松中議員の一般質問に対する関連質問の途中から休憩が続います。15日はいったん再開したものの再びストップ。
住民が鎌倉市に対して鎌倉山二丁目の開発許可の取消しを求めて起こした訴訟は、地裁では市が勝訴しましたが、東京高裁は原判決(地裁判決)を取消し、地裁へ差戻す逆転判決を下しました。市はこれを不服として上告受理申立ての手続きをしました。しかし、その決裁はインフルエンザで自宅療養中の市長に代わって副市長が行なっていました。
関連質問では、副市長による代理決裁が、『鎌倉市事務決裁規程』が「不服申し立て、訴訟、和解及び調停についての事項」を市長決裁事項としていることに反し、さらに「代決をした事項については、速やかに当該事務の決裁責任者に報告し、後閲を受けなければならない」とされているのに、後閲が遅れたこと(電子決裁のアクセスログで日付確認)が問題にされています。理事者により、この経緯について満足のいく説明がなされないため、17時過ぎに延会となりました。

 行政訴訟の「訴えの利益」
  鎌倉市が上告受理申立てを行ったことが問題にされるのは、これによる訴訟の長期化が、取りも直さず、市が住民の方を向いていないことを意味するからです。
司法判断が最終的に下される前に、当該地の宅地開発 (裁判で争っている開発許可が1区画の開発許可であるのに対し、現在業者が目指しているのは同じ土地で10区画の開発⇒
66日付記事参照) が既成事実化してしまえば、本当に住民の訴えの利益はなくなってしまいます。

 行政を相手取って起こした訴訟で原告が勝訴する率は大変低く、多くは本案(実質的な争い)に入る前の訴訟の要件の段階で「門前払い」になってしまいます。鎌倉山二丁目開発許可取消請求訴訟の一審、二審では、訴訟要件の中の「訴えの利益」が焦点になっています(被告・鎌倉市は、別の訴訟要件、「原告適格」についても主張)。
◇一審・横浜地裁の判断
: 開発許可の対象工事(宅地造成)が完了し、検査済証の交付もされているから、開発許可の取消しを求める訴えは、その利益を欠く。
◇二審・東京高裁の判断
市街化調整区域内における開発許可については、その開発許可の対象工事が完了し、検査済証の交付がされた後においても、その開発許可に係る予定建築物等を建築することができるという法的効果が残っているのだから、その取り消しを求める訴えの利益は失われない。

 長年にわたり、行政訴訟に取組んできた原告住民やその訴訟代理人の弁護士は、訴訟要件(訴えの利益や原告適格、行政処分に当たるかどうか等)の壁に抗して、少しずつ風穴を大きくする努力を重ねてきました。私も、議員になる前、市民運動でいくつかの訴訟の原告に名前を連ねて門前払いを経験しました。今回の東京高裁判決は画期的と言えるものだと思います。裁判の中で、本案である、市が行った開発許可が適切だったかどうかを争うように早くなってほしいです。