北鎌倉隧道の安全性調査中間報告を受けて、鎌倉市は開削を決定
建設常任委員会協議会
鎌倉市が一般社団法人日本トンネル技術協会に業務委託した、JR北鎌倉駅沿いの「北鎌倉隧道」の安全性と整備方針の調査・検討の中間報告書が8月18日付で同協会から提出され、本日21日午前、建設常任員会協議会が開催されました。
日本トンネル技術協会は、日本のトップクラスのトンネル工学の専門家が集った協会とのことなので、「景観と安全性の両立が図れるなら保全を視野に方策を探る」と6月議会で表明した松尾市長も、景観の保全を求めて開削に反対する多くの市民も、協会が示した所見を最大限尊重することで決着をつけるしかない、と私は考えていました。しかし、協会から提出された中間報告は、安全対策の選択肢として「トンネルの両坑口部およびJR側の側面のコンクリート補強+内部のアーチ・パネルによる補強(以下、「補強案」と略)」と「トンネルの開削」の2つの方策(工法)を併記するものでした。これを受けた鎌倉市道路課は、8月19日に「安全対策は開削工法で実施する」とした起案を行い、市長は20日にこれを決裁しました。協会の中間報告は両論併記でしたが、市は時間をおかずに一方の「開削工法」を選択しました。そして、本日午前中には建設常任委員会で、午後には地元12町内会、関係地権者等からなる「安全対策協議会」で、開削を選択したことを明らかにしました。
9月議会補正予算がらみのタイムスケジュール
北鎌倉隧道は、4月28日から通行禁止となっており、近隣住民は不便を強いられています。また、小学生の登下校時の迂回路の安全確保のための警備員配置経費も看過できない状況です。市としては、9月2日から始まる9月定例会で「安全対策」の経費を補正予算として成立させる必要があり、補正予算案に盛り込むギリギリの日程で調査・検討結果を中間報告として出させ、所管委員会に報告した、ということだと理解しています。
建設常任委員会協議会では、協会から最終報告が出るのは業務委託期間満了の8月末であるのに、中間報告を受けてすぐに開削を決めていきなり委員会に報告というのは乱暴ではないか、という意見が出ました。確かに「大急ぎ」の感はぬぐえません。しかし、8月中旬に協会からの報告を受けて、安全対策の方針を決定し、9月議会の補正予算案に経費を盛り込むというスケジュールは、以前から示されていたものではありました。
なぜ開削工法を選択したのか
問題は、協会が中間報告書の中で、安全対策の工法を1つに絞った形ではなく、両案の併記であった以上、市としてそのうちの「開削工法」を選択した理由を明快に示す必要があったにもかかわらず、それが十分になされていないことではないでしょうか。
建設常任委員会委員からの資料請求で出てきた決裁文書には、開削工法を選んだ理由として
①「補強案」の外観は人工的なものとなり、景観の保全にならない
②「補強案」では一部素掘りのまま残すことで将来の安全性に不安が残る
③一方、「開削案」ではトンネルと上部の山は残らないが、周辺景観と調和する工法の選択の幅がある
の3点があげられていました。
私は建設の委員ではないので番外発言として、
・補強案のイメージ図が人工的外観を強調したものになっていないか
・隧道から大船寄りに行ったところの洞門山の斜面も同じ鎌倉石の断層であるのに、隧道の素掘り部分の剥落危険性だけを強調するのはどうなのか
・将来的にトンネル前後の道路幅員を含めて4.0メートルを確保するということは必須要件なのか
という趣旨の質問をしました。
答弁を聞き、洞門山部分を含めて道路幅員4.0メートルの将来的な確保を考慮した選択結果だったのではないかという印象を持ちましたが、市側の説明は、あくまで安全性の確保と周辺景観との調和を考えての判断である、というものでした。市長は、開削に反対する市民への説明について明言しました。市民の疑問に答えるよう努めてほしいと思います。