身の回りの電磁波は強まる一方 ~鎌倉で学習会を開催
4月22日、NPO法人市民科学研究室の上田昌文さんを鎌倉に招いて、学習会「身の回りの電磁波を考える」を開催しました。環境中の電磁波は、波動の性質から低周波と高周波に大別され、高周波は、実用的観点からは無線通信に使用可能な周波数の電磁波(電波)を指します。上田さんは、15年前から環境中の様々な電磁波の計測をされていますが、携帯電話・スマホの端末が発する電波(電子レンジと同じマイクロ波)が、環境中の他の電波と比べて飛びぬけて強いことにいつも驚くそうです。
新たな電波発生源、スマートメーター
この30年間で私たちが日々の暮らしの中で浴びる電磁波は否応なく増大しており、近年はスマホ利用者の激増、無線LAN(Wi-Fi)の普及、インバータや通信機能内臓機器の多様化などで、更なる増加傾向が見られます。新しいところでは、家庭や事業所の電力使用量を記録し30分毎等に電力会社へ電波で情報を伝えるスマートメーターがあります。
国と電力会社は、電力使用の「見える化」が省エネルギーに役立ち、検針員の削減が経費削減につながることなどをあげて一方的にメーターの切替えを進めていますが、どれだけのメリットがあるのか疑問です。海外では健康被害を懸念した反対運動が起きており、プライバシーの侵害やサイバー攻撃のリスク、電気料金の値上げなどの懸念が指摘されています。
街中がWi-Fiだらけ、家の中も安全な有線接続でなくWi-Fi?!
焦点を当てたテーマのひとつがWi-Fiです。鎌倉市は、外国人観光客の利便性を図るとして、国の地方創生交付金を用いて、Wi-Fi接続設備の設置を進めています。内容としては、広範囲・多人数の利用が可能な屋外型の駅周辺等9箇所への設置と、市内の店舗等に対する屋内接続設備の設置補助です。
「Wi-Fi接続設備から発する電波は携帯電話中継基地局の電波に比べると弱い」という言われ方もしていますが、これは出力のみに注目したものであって、端末とその周辺の電波の強さには変わりがありません。接続設備が居住空間に接近してあることのリスクも考慮されなくてはなりません。
フランスでは2015年1月、一般の人々が浴びる電磁波の抑制をはかる法律が成立しました。保育所等では無線LAN(Wi-Fi)等を禁止、Wi-Fiを提供する公共の場所は入口にそのことを明示、すべての無線機器は無線機能をオフにする方法を使用説明書に明示、といったことが盛り込まれています。
災害発生時の情報伝達や観光振興においてWi-Fiの利用拡大が不可欠だと言われていますが、物事は多面的に見ていくことが大切で、電磁波の問題を無視すべきではないことを改めて確認した学習会となりました。
2020年のデジタル教科書導入を憂慮
折しも同じ4月22日に開催された文部科学省の有識者会議は、小中学校で使う教科書のデジタル化を解禁する方針を示しました。2020年度からタブレットやパソコン端末を使って電子データ(デジタル教科書)で学べるようにする、という報告書案です。
日本では全く報道されていませんが、海外では学校へのWi-fi導入に反対する運動が活発で、wifi in schools というキーワードでインターネット検索すると、イギリス、オーストラリアなどのサイトが次々とヒットします。今後日本でデジタル教科書導入の具体策が検討される際、「Wi-Fiありき」ではないことを切に望みます。