鎌倉の海への下水放流~かねてからの指摘が生かされず、下水道管の破損事故発生
5月21、22日の2日間、鎌倉の由比ガ浜海岸で恒例のビーチフェスタが開催されました。ステージや模擬店・屋台コーナー等は予定どおりでしたが、カヌーやサーフィンの体験、砂像作り・コンクールは中止になりました。下水流出事故により、「会場付近の水質が不安定な状況にある」ため、参加者の健康面を配慮しての実行委員会の判断でした。
【下水流出事故 経緯① 歩道陥没で下水道管破損】
鎌倉市の下水道は、鎌倉処理区と大船処理区に分かれています。整備の開始が早かった鎌倉処理区では、下水道管を深く埋設することが技術的に難しかったため、区内に7カ所の中継ポンプ場を配置して、七里ガ浜下水処理場まで送水させています。
4月14日、稲村ガ崎の海側の崖に崩落、亀裂が発生し(文末の写真参照)、国道134号線の歩道が陥没しました。市が、歩道に埋設された下水道管の点検を行ったところ、4月22日午後、管が破損して漏水していること、崖が再び崩落する恐れがあり、管の下側の地盤も崩落していて、本管の修復には相当の日数を要することが判明しました(破損判明まで何故1週間かかったのか、疑念が残ります)。
【下水流出事故 経緯② 下水放流の緊急措置】
そのため、同日夜から稲村ガ崎手前の西部ポンプ場(坂ノ下)からの下水の送水を停止し、同ポンプ場に集まる汚水に消毒剤を投入した上で、東側の道路護岸から海への放流する緊急措置が取られました。放流しているのは約17,000世帯の下水(排出推定量は1日当たり約22,000㎥)です。
4月29日には歩道上に敷設した仮設送水管(直径250㎜2本)で通水を開始しましたが、全量の送水はできず、推計で1日約10,000㎥の放流が続いています。放流先海域17箇所の水質調査では、放流口以外の調査地点1、2箇所でも海水浴場水質判定基準で「不適」となる大腸菌群が検出されており、潮の流れ等により不適箇所は一定していません。市は、海への放流を止めるため、敷設済みの仮設送水管の上部に更に口径の大きい仮設送水管(350㎜)を通す工事を急いでいるとのことでした。
(写真は5月13日に保坂が撮影した崩落個所に近い既設の仮設送水管です。)
【下水流出事故 経緯③ 仮の管を増設するも…】
本日(5月22日)昼の都市整備部総務課からの連絡によると、21日(土)午後3時25分に3本目の仮設送水管への通水を開始したところ、接続部分の一部で漏水が確認されました。現在、復旧作業中とのことです。道路護岸からの下水放流は、事故から1ヶ月以上経つのにまだ続いています。市は、「5月中には海への放流を止められるよう努める」としています。
【かねてからの指摘が生かされなかった今回の事故】
国道134号線では、2009年の台風18号の大波で擁壁から土砂が流出し、七里ガ浜の道路面が陥没しました。神奈川ネットは、県と国交省に早急な道路改修工事の必要性を訴え、市に対しては、道路に埋設された下水道管の老朽化が進んでいることに加え、埋設深度が浅いため、地盤崩落等の発生時に下水道管が破損する危険性があると指摘して対策を講じるよう求めました(※)。
この指摘が今回現実のものとなってしまいました。
市は、社会基盤施設(インフラ)のマネジメント計画の策定を進めているところですが、鎌倉処理区の下水道については危機感を持って更新を急がなくてはなりません。