鎌倉市本庁舎整備方針の決定の仕方(その2)

市役所本庁舎の移転問題について、2月15日、3月10日、20日と記事を掲載してきました。
前回(20日)は、
「現在地で従来の市役所機能全体を維持する建替えが困難であることは理解する」、
「困難の理由として大きいのは、大規模災害時における救助活動・災害復旧の司令塔機能が発揮できないおそれが指摘されていることだ」
と述べました(但し、「災害時の受援力」については、3月10日の記事で、後付けで浮上してきた感がある、と指摘)。

今回は、方針決定の仕方について問題提起をしたいと思います(20日の記事冒頭の所見第2点、第3点の関連です)。

 市役所機能の見直しや分散化による現在地で建替えの可能性の議論、検討を深めなくてよかったのか
現在の市役所の行政機能は、本庁舎敷地内に第3,4分庁舎が配置されているだけでなく、敷地外でも鎌倉水道営業所や山崎浄化センター敷地内等に分散化しています。
本庁舎整備方針は、これらを集約・複合化することでコスト削減を図るという前提に立つものです。
また、公共施設再編計画(2015年3月)でも、各行政センター内の支所業務(窓口業務)については見直しを行い、本庁舎への業務の集約を検討するとしており、「これまで分散化していた市役所機能を一気に集約化できる本庁舎」というコンセプトが整備方針策定の開始時からありました。

その意味で、「移転ありき」で方針策定が行われた感が否めません。

しかし、策定の過程で、他所へ移転した場合の現在地(御成町)の活用の仕方がクローズアップされていきました。
最終的に示された整備方針としては「移転」ですが、実質的には「2極化」と言ってもよさそうな内容です。

そこで気になるのは、整備方針(素案)、同(提言)で紹介されている長岡市の事例です。
元々の市庁舎が駅近になかった長岡市は、市民協働型シティーホールとなる市役所(アオーレ長岡)を駅前の中心市街地に整備して、市民との接点の少ない行政機能を他の地区に配置する行政機能の再配置を行いました。(提言p26)。
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/keiki/documents/ho_teigen.pdf
現在地に市民サービス機能、学習センター等機能、NPOセンター機能等を配置し、移転先は行政機能を集約配置するという鎌倉市の機能配分のイメージ(提言p56)は、この長岡市の事例に準じた発想です。しかし、交通の利便性のよいところに市民サービス機能をしっかりと残すということを押さえないと全くの本末転倒です。

アオーレ長岡(身近な手続きを集約した市役所の総合窓口を1階に集約)

また、消防本部は、深沢地域の整備計画の中で同地域に移転することになっています。
防災拠点機能(災害対策本部)を消防本部に隣接させることに対しては異論ありません。
ただ、防災拠点機能を十分に担えないから現在地での市役所本庁舎の建替えはできない、というのは一面正しいですが、防災拠点機能を他所できちんと整備すれば、現在地での建替えの可能性もありうるということにもなりえます。(2極化した場合、どちらを市役所本庁舎と位置づけるかが問題になる可能性もありそうです。)

 

「現在地建替え」と「具体的な場所を明示した移転先での建設」の両案の比較検討
現在地は制約が多いから建替えができない、ということだけを確認して、だったら移転…と結論づけるのではなく、移転先を具体的に示して、それが深沢のJR跡地であるなら、深沢の整備事業の進捗との関係や市民、職員の交通アクセスと負担の問題、地盤の問題などについても明示して、両案の比較検討結果を示すべきであったと思います。
「想定される整備候補地の評価のまとめ」としては載っていますが(提言p50)、例えば深沢のJR跡地の交通アクセスで「モノレール湘南深沢駅から徒歩すぐ」という情報だけでは全く掘り下げ不足です。

市の大きな政策決定では、途中で市民参加のステップは踏むものの、枠を作って外堀から埋めていき、具体的な問題に向き合うのは政策決定をしてしまってから…というパターンがあまりに多いと感じています。その結果、政策決定後に立ち往生することになりがちです。

本庁舎整備については今後とも様々な角度から考察し、提案をしていきたいと思います。