公文書管理は「主権者は誰か」に関わる問題

森友学園を巡る決裁文書改ざんや陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報隠蔽などで公文書のあり方が今また厳しく問われています。
明治時代からこの方、日本の官僚組織には、「公文書は国民のものであって、現在および後世の国民に対する説明責任を果たすためには、公文書を適正に作成し、適正に管理しなくてはならない」という発想が希薄でした。
2011年に「公文書管理法」が施行されましたが、官僚組織も政治家も発想の転換ができていないことが、今般の経緯からも明らかです。

2017年度には…
◆南スーダンPKO日報
廃棄して不存在とされた南スーダンPKO日報のデータが保管してあったことがわかり、「隠ぺい」と批判された問題(日報には政府軍と反政府勢力の間に「戦闘」があったことが明記されていた)

◆森友学園への国有地売却過程の記録
国有地売却過程の記録(売買に至るまでの交渉や面会に関する記録)が、文書ファイル管理簿に載らずに廃棄が容易な「保存期間1年未満」の文書に分類され、廃棄された問題(私的メモ扱いで残っている可能性も指摘された)

◆加計学園獣医学部新設の経緯に関する文書
政府が「存在しない」と言っていた、加計学園ありきの獣医学部新設の経緯に関わる文書が文科省で見つかったにもかかわらず、政府が「個人メモ」と決めつけている問題

がクローズアップされました。

 今年に入ってさらに…
◆森友学園国有地売却決算文書の改ざん
国会での森友学園問題の審議にあたり、提出された国有地売却に関する決裁文書に「本件の特殊性」や首相夫人に関する記述の削除という「改ざん」がなされていたことについて、3月12日、財務省が「書き換え」を認める報告。

◆陸自イラク派遣部隊の日報
南スーダンPKO日報問題が追及された折に稲田防衛大臣(当時)が「存在しない」と答弁した陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報が、昨年3月末に陸自研究本部で見つかっていたにもかかわらず、今年の3月末まで防衛大臣に報告されなかった。同日報は自衛隊の他の組織にもあった。


公文書管理の原点に立ち返る
公文書管理は「主権者は誰か」に関わる問題です。
行政の意思決定や行った仕事が適正であるか、主権者である国民がチェックし、判断できるようにしておくためには、公文書が適正に作られ、保存されなければならないからです。
問題は以前からありましたが、情報公開に後ろ向きな安倍政権にあって、連鎖的に可視化された状況です。

これまで省庁によりバラバラだった「保存期間1年未満の行政文書」の定義の厳正化をはかる、或いは1年未満の保存期間という区分を原則廃止するなどの公文書管理のルールの見直しは歓迎です。
同時に、公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置づける公文書管理法の原点についての認識を徹底することが必要です。
あとで面倒なことになるから記述を省略化しておこうだとか、公文書とならないような体裁や保存方法にしておこうなどという逆行は決してあってはなりません。

 

政局に絡む政治問題
さて、ここまで公文書管理について述べてきましたが、森友学園、加計学園、自衛隊日報などの問題の追及が、官僚や自衛隊組織にだけ責任があると捉えて、公文書管理の杜撰さやその再発防止策の検討に議論が終結することは、よしとしません。

教育勅語を幼い子どもに唱和させる学校法人への国有地の格安払下げや、首相の友人が理事長を務める学校法人への要件緩和の学部新設認可への政治の関与についての真相究明、責任の追及は、脇に置かず中心に据えるべきことです。
戦闘が実際にあった地域への自衛隊派遣(南スーダンへの「駆けつけ警護」の部隊派遣の直後に、日報の「廃棄による不存在」の決定通知が出た作為性)についても同様です。
また、「非戦闘地域」と位置づけたイラク戦争下のサマワへの自衛隊派遣(03年~09年)では、帰還した隊員のPTSDが多数報告されています。憲法9条に自衛隊を明記する改憲が取りざたされる現在、見つかった一次資料をもとにした検証がなおのこと必要です。