鎌倉市の市民活動推進条例~9月議会への再提出に向け、どんな見直しが?

昨年の9月議会で「私たちのまち鎌倉のことに関心を持ち、自分たちでより良くしていこうという思いを共有して行動するための条例」案が否決されたことについては、「条例案否決に至った原点は市のミスリード」という記事を掲載しました(2017.10.13)。
市民活動部長が、「作ろうとしているのは理念条例である、(その代り)市民参加型の策定のプロセスにこだわる」と条例制定の方針を述べ、市民活動推進条例検討会に「市民のまちづくりへの参画の想いを綴った条例」というコンセプトを提示して検討を託しました。
このことを「ミスリード」と指摘した内容の記事です。
さて、今回は、先頃行われた「意見交換会」についての報告です。

見直し案取りまとめのワンステップで意見交換会
市民活動推進条例検討会は、「私たちのまち…条例」案ができるまでに18回も開催されました。昨年の9月議会での否決後は、条例案の見直しに取りかかることになり、今年3月27日までにまた5回開催されました。
見直し案(「条例素案(たたき台)」)がほぼ取りまとめられ、4月21日(土)に市民活動団体との意見交換会が市役所で持たれました。参加者は市民活動にかかわる市民と検討会のメンバー計26人で、見学者は私を含めて3人でした。

意見交換会は、5,6人ずつテーブルに分かれ、途中で着席するテーブルを変えていくワールド・カフェ形式で行われました。
話合いのテーマは、
「市民活動をどのようにしていきたいか」
「市民活動を良くしていくために必要なことは何か」
「まちをよくしていくために自分たちにできること、市民、市民活動団体、市などに期待すること」
というもので、見直し案(たたき台)は、検討過程の未成熟情報の取り扱いなのか(?)、意見交換のテーマではありませんでした。

肯定から批判までかなりの隔たり
テーブルを回りながら耳に入った意見をいくつか書きだしてみます。
これまでの取組みに肯定的な意見では、
市民活動と言っても、行政と関係なく自由に行うものもあれば、行政と連携して行うものもあって多様であり、何かしたい人、特に若い人のやってみたいという思いを後押しする趣旨の条例でよいのではないか。
市民活動にもいろいろあり、関わる人の立場も異なるので、条例で定めるのは最低限の事項にした方がよいと考える。

批判的な意見では
市民活動が既に活発なのに今頃になって条例をつくるのだから、何のための条例なのかを考えないと条例をつくる意味がない。
9月議会で議決されたあとも、どのように出し直したら議会で通るかに終始して、本質的な議論がされていないように見える。
毎回の検討会でメンバーから出た意見を書きだしているだけの進め方では議論は深まらない。
ボランティアで緑地保全活動をしているが厳しい状況。条例を作れば状況がよくなるのか見えてこない。

市として何をするのか決めていないことが問題
「私たちのまち…条例」の策定過程から今回の意見交換会までを見てきて思うのは、鎌倉市として市民活動の一層の推進と市民協働に向けて何をするのか検討し、方針や具体策を示していないのが問題だ、ということです。
「市民参加型の策定のプロセス」と銘打って、検討会の市民メンバーに丸投げしているとしか見えません。
検討会は23回も集まって一所懸命に検討してくださっているのに、市(所管の地域のつながり課だけではありません)は、具体的な施策として何をすべきで何ができるかを、どれくらい検討しているのでしょうか。

昨年12月から今年1月にかけて実施されたアンケート調査に添付された「私たちのまち…条例」についてのQ&Aには、「市民活動をする人たちがその思いを強く発信する条例として、基本理念を伝えていこうとしたもの」と書かれています。
これは策定の手法からしてなるべくしてなった結果でしょう。

一方、Q&Aには「市民活動の自主性や多様性を尊重し、時代の変化にすばやく対応できるようにしたいと考え、(中略)理念的な内容に留め、具体的な施策は条例とは別に指針を作って迅速に見直しができるようにした」とも書かれています。この点については素直に頷くことができません。
具体的な施策を条例とは別の指針にまとめることを、市民活動の自主性や多様性を尊重するためであるかのごとく述べていますが、社会情勢の変化を予測しつつ市としての取組みを提示するのを後回しにする方策であるとも言えるからです。

「具体的に」とは言っても、微に入り細をうがった施策を条例に書きこむべき、ということではありません。
具体的な施策が見通せる基本的な取組み姿勢がわかるようにすべきであると考えます。

ちなみに、検討会の志村座長は、御自分か関わっている横須賀市の条例をあげて「結構うまくやっている」と発言されていました。
配付資料となった見直し案(「条例素案(たたき台)」)では、「私たちのまち…条例」とは異なり、「施策の実施」と「市の役割」が条文化されているようですが、それでも横須賀市の条例に比べると理念的性格が強いです(下表参照)。

なお、横須賀市の条例は協働推進条例であって、市民活動推進条例ではないという反論もあるかもしれません。
それこそが条例の本質に関わる議論だと思います。

 

私たちのまち…条例 鎌倉市の見直し案(「条例素案(たたき台)」) 横須賀市市民協働推進条例
(施策の実施)

第4条 市は、基本理念及び指針に基づき施策を実施する

(市民活動及び協働推進のための施策)

●活動の場の提供に関すること

●財政的支援に関すること

●情報公開及び提供に関すること

●協働に関すること

●市民活動の啓発及び学習機会の提供、人的支援に関すること

●市の施策の立案、実施及び評価の過程への参入機会の提供に関すること

●市民活動センターに関すること

●市民が共に考えていく場(指針の見直し、施策の進行管理に関すること)

(市の役割)

第7条 市は、第3条の基本理念に基づき、市職員に対する市民協働に関する啓発、研修等を実施して、職員一人ひとりによる市民協働の重要性の認識を深めるよう努める。

2 市は、市民協働を推進するため、市民、市民公益活動団体及び事業者の参加及び参画を得て事業を行う等の適切な施策を実施するよう努める。

3 市は、市民協働事業の計画から実施、検証にわたるすべての段階で、その情報を原則として公開しなければならない。

4 市は、市民公益活動が活発に行われる環境の整備等の適切な施策を実施するよう努める。

 

(財政的支援)

第8条 市は、市民公益活動団体に対しその活動を促進するため、予算の範囲内で、助成金の交付等の財政的支援(以下「財政的支援」という。)をするよう努める。

2 市民公益活動団体及び市長は、財政的支援の手続きに係る書類又はその写しを一般の閲覧に供しなければならない。

3 財政的支援を受けた市民公益活動団体は、これを既得権とすることはできない。

4 前3項に定めるもののほか、財政的支援に関する事項は、規則で定める。

 

(行政サービスにおける参入機会の提供)

第9条 市は、市民公益活動団体に対しその活動を促進するため、専門性、地域性等の特性を活かせる分野において業務を委託する等の行政サービスへの参入機会の提供をするよう努める。

 

(登録制)

第10条 前条の参入機会の提供を受けようとする市民公益活動団体は、次に掲げる書類を添付した申請書を市長に提出して、あらかじめ登録を受けなければならない。<以下略>

 

(役割)

●市

施策の実施や市民等の市政への参画、市民活動団体との協働により、一人一人が主人公として活躍するための環境を整える。市は基本理念及び基本的事項について積極的に市民等へ広報及び啓発を行う。