空き家対策は政策的な視点で

5月23日、高崎経済大学地域政策学部教授で、相模原市空家対策協議会会長の岩﨑忠さんを講師に迎えて「かながわの空家対策の現状と課題」と題する学習会を持ちました。
 

1.空き家問題への公共政策からのアプローチ
岩﨑先生のお話の主要部分は公共政策からのアプローチでした。

空き家対策の目的としては、
①空き家の周辺に与えるマイナスの影響を取除くこと ②空き家の利活用 があり、両方を見ていく必要があります。

強調されていたのは、
取組みの主体は民間(不動産、居宅支援などの関係団体、法務系や建築系の専門家団体等)であることが望ましい(≒不動産市場での解決)。
では行政は何をすべきなのかと言うと、政策的な視点で臨むことである。特に、「情報による対応」においては行政が担うべきところが大きい。

「情報による対応」では、空き家問題の周知・啓発活動とともに、相談窓口や空き家バンク制度の開設・運営などがあるが、相談窓口も空き家バンクも、庁内で抱え込むようなものでなく、外部とのリンク、ネットワーク化が有効である。
行政の役目としては、自ら前面に出るのではなく、民間(業界、関係)団体等が役割を演じに出てくるお膳立てをする(ウマミを考える)ことが有意義。

ということでした。

2.地域での取組み事例の報告
学習会へは、鎌倉市空家等対策協議会のお二人の委員にも個人の立場でご参加いただきました。
また、空き家・空き地の管理運営事業等に取組むNPO法人の代表のご参加もありました。
七里ガ浜東の住宅街での、空き家を活用したコミュニティ・カフェ「かもめサロン」の開設経緯や、今泉台町内会が毎年6月に実施している空き家調査についてお話をうかがうことができたのは幸いでした。
他にも、地域の空き家を自治組織の集会所にフル活用している事例紹介や、既に自治会館があるところ第二の拠点づくりを目指している地域のお話なども出ました。

住民サイドでは「地域に空き家があることで住環境の低下をまねきたくない」という思いだけでなく、「空き家を地域のために生かしたい」という思いも強くあります。
先進的な取組み事例を広く知ってもらうことも、空き家対策では重要です。

3.むすび(鎌倉市での今後の取組み)
鎌倉市の空き家対策計画が、空き家をこれ以上ふやさないための予防策に重点を置いていることに異論はありません。
しかし、岩﨑先生も「(予防策を講じても)それでも空き家は増えてしまう」と、マクロ的要因と地域的・個別的要因を挙げていらっしゃいました。

「空き家の増加という空き家問題」を解決するという方向性よりも、若年世帯・ひとり親家庭・高齢者の住まいの確保、環境保全・防災・防犯、地域での孤立化を防ぐ取組み、子どもの居場所・多世代交流サロン、小規模な福祉事業の展開場所という政策的な課題に向き合うこと。
やはり、求められているのは、政策的な視点からの取組みです。

2016年12月議会では、地域の実情に合わせて独自の空き家政策を進めるなら、条例化を目指すべきだと指摘しました。
空き家対策特措法の規定からの「横出し」条例も、今回紹介していただいた他市の条例を参考に、今後提案していきたいです。