鎌倉市のごみ処理の方向性ついて 「生環審」で指摘あいつぐ

3月26日に開催された市議会全員協議会(全協)で、松尾市長が新焼却施設を建設しないという方針を公表したことについては、本サイトの4月15日付の記事で詳しく報告しました。
また、神奈川ネット「まちづくりレポート」153号にも特集記事を掲載しました。
まちづくりレポート 153号 1面のサムネイル

4月25日、第21回鎌倉市生活環境整備審議会(会長 横田勇 静岡県立大学名誉教授)が開催され、全協と同じ「将来のごみ処理体制についての方針」と、「鎌倉市一般廃棄物処理施設のあり方について」が報告されたので、傍聴しました。

環境部長からの陳謝
同審議会は、ごみの減量・資源化を推進するための一般廃棄物処理施設のあり方を検討するため、一般廃棄物処理の見識が高い学識経験者を選任して設置されているものです。
2013年8月~2015年3月の間に12回の審議会と、15回の用地検討部会が開催されました。そうして出していただいた「鎌倉市ごみ焼却施設基本計画の策定」答申に基づき、市長は2015年4月に新焼却施設を山崎下水道終末処理場未活用地に建設することを決定しました。

この基本計画を白紙に戻すことになった訳ですから、冒頭、新任の環境部長から審議会に対して陳謝がありました。
しかし、本当にお詫びをしなくてはならないのは、市長です。

委員から鋭い指摘が相つぐ
横田会長と4人の委員からは、様々な視点での鋭い指摘がありました。

<家庭系ごみ>
生ごみを抜き取って資源化し、燃やすごみは名越CC稼働終了後は広域連携で逗子市の施設で処理してもらうか、または自区外処理に委ねる方針について
生ごみ分別回収への協力率70%というのは仮定であり、不確実性をどう克服するか。協力率アップをどうやって図るのか。

生ごみ処理施設が建設できないおそれもある。逗子市で燃やしてもらえないおそれもある。
今回は示されていないが、全量自区外処理という最も厳しいケースの想定も必要ではないか。

住民に協力を求めるに当たっては、協力度が低い年齢層や住環境などを事前に把握して働きかけることが有効であるが、協力度のデータ解析はされているのか。

広域連携で逗子市に焼却を委託することについても、役所間では協議が整っても、住民に方針が伝わった時に、往々にして他自治体のごみの受け入れに反発する声があがることを踏まえるべきだ。

広域連携による廃棄物処理では、処理委託料を払えば済むのではなく、鎌倉市が何らかの施設建設の負担を求められることを考えているのか。

<事業系ごみ>
生ごみは登録再生利用事業者に、生ごみ以外の混合ごみは縦型乾式メタン発酵事業を行う民間事業者に誘導することで、事業系ごみの全量資源化を図る方針について
民間事業者の数は多くない。他の自治体が同じ方式による処理委託を行おうとするようになった場合、鎌倉市が確実に委託できるかどうかの検証が必要。

乾式メタン発酵でも残渣は出る。後段処理の必要性も認識すべき。

立川市が、一般廃棄物処理計画に食品廃棄物の再生利用を明記し、事業系手数料を原価相当としたことで事業系生ごみの58%削減を実現したとしても、事業系ごみの状況には地域差があり、鎌倉市も同様の削減ができるとは限らない。

事業系一般廃棄物という用語には法的な位置づけがない。制度的な整理が必要であると共に、事業系ごみを全量資源化してゼロにするというロジックは乱暴である。

 

例示と市の取組みとは別
また、事業系生ごみの資源化については、バイオマス発電のエネルギー回収施設の事業者名が、事業系混合ごみの資源化については、縦型乾式メタン発酵事業の事業者名が記載されていることについて、会長と一人の委員から、「そういう事業者があるということと市の取組みを一緒くたにした記載方法は改めるべき」という指摘がありました。

環境部の担当は、とても頑張って使えそうな処理方法と事業者を探したのだと思います。
しかし、この指摘は全くそのとおりだと思います。

ごみ処理施策に限らず、エネルギー基本計画の実施計画、また公共施設の再編、本庁舎整備などに関連しても同様です。
鎌倉市が取りまとめる方針や計画には、市が実際に取組もうとしていることなのか、取組めることなのかが不明確なまま、「こんな技術・方法もあります、こんな事例もあります」と列挙することが多く、ある意味うまく逃げているのですが、逃げているままでは済まされません。
大変重い内容の審議会でした。