支援が必要な家庭を孤立させない

目黒区と千葉県野田市で女児が虐待死した事件を受け、児童虐待防止法改正案が国会で審議されているさなかの6月5日、札幌市で虐待を受けていた2歳の女の子が衰弱死し、母親と交際相手の男が逮捕されました。児童相談所と警察が情報を共有していたにもかかわらず最悪の結果を防げませんでした。札幌児相は職員1人が百数十件の案件を抱えていたとのことです。
それから1か月も経たないうちに、仙台市で2歳11カ月の女の子が自宅に3日間放置されて死亡し、母親が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕されました。
女の子は、8・9カ月健診、1歳6カ月健診、2歳6カ月健診を受診しておらず、市の担当者が受診を催促していたとのことです。

幼い命を救えない私たちの社会。社会のありようが厳しく問われ続けています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

奇しくも札幌市の事件が起きた6月5日、鎌倉市議会6月定例会で、「支援を必要とする家庭(子育て世帯)に行政としてどのように支援の手を差し伸べていくか」ということを取り上げて一般質問を行いました。
HP記事2019.7.3一般質問写真のサムネイル

繰り返される事件の重さを思うと、法改正や行政の仕組みづくりだけでは対応しきれないと感じます。
その一方で、児童相談所を所管しない鎌倉市のような一般市においては、虐待へと事態が深刻化する手前で、“心配な家庭”や“困っている家庭”と行政や地域がつながりを築いて孤立化を防ぐことは、やはり重要だと思います。

一般質問での主なやりとりを抜粋します。
■母子保健コーディネーター
Q 2018年度に、市役所本庁舎の市民健康課の窓口に「母子保健コーディネーター」が配置された。これにより、切れ目のない支援をする鎌倉版ネウボラの仕組みづくりを目指すとのことであったが、現状はどうなっているか。

A 保健師と助産師からなる母子保健コーディネーター5名を配置した。
さらに今年度は、助産師の母子保健コーディネーターの勤務日数を1か月10日から13日に増やした。
母子保健コーディネーターの配置により、母子手帳交付時の面接が充実し、対象者のリスクやニーズの把握と必要な支援を、より早期に開始できるようになった。

Q ネウボラには「個を大切にした対話による家族支援」という理念があり、福島県伊達市のように「個と個の支援」の重視で注目されている自治体がある。
鎌倉市の母子保健コーディネーターにおいてはどうか。

A 母子保健コーディネーターは母子健康手帳の交付を契機として個々の家族とつながっていき、継続支援を必要とする家庭には同じ保健師が継続して担当している。
多角的な判断が必要な場合においては複数の保健師がチーム体制で支援を行っている。

■子育て世代包括支援センター
Q
 2016年6月の母子保健法の改正により、市町村は2020年度末までに、子育て世代包括支援センターを設けるものとされた。
従来の母子保健から広げて、父親を含めた家族を対象に妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を行う機関との位置づけだが、鎌倉市ではどのように整備するのか。

A 2020年度には市民健康課内に開設する。
センターが行う支援内容としては、母子保健コーディネーターが担っている、妊娠・出産・育児に関する相談への対応、助言・指導・支援 保健医療・福祉の関係機関との連携と調整 既に先行実施している産後ケア事業や産前産後サポート事業 といったことを考えている。

■子ども家庭総合支援拠点
Q
 政府は昨年12月、児童虐待防止のために児相および市町村の体制を強化するなどの新プランを決定した。市町村については「子ども家庭総合支援拠点」を全市町村に置く方針が示されている。
市町村に住むすべての子ども、子育て世帯と妊婦を対象に、子育ての悩み相談や、虐待の情報収集、児相・医療機関等との連絡調整などを担う拠点との位置づけであるが、鎌倉市ではどのように設置するのか。

A 新たなスペースを設けるのではなく、現在のこども相談課のスペースを活用する形での「機能としての導入」を予定している。
「こども家庭の相談室での相談機能」と「要保護児童対策地域協議会の事務局としての機能」の2つを併せ持たせる。子育て世代包括支援センターとは緊密な連携を図っていく。

■場所の確保
Q
 子育て世代包括支援センターも子ども家庭総合支援拠点も、支援の受け手の側の目線に立ち、個人情報が守られていると実感できる相談場所であることや、子ども連れや障がいを持った親子の利用しやすさへの配慮が求められる。場所の確保は重要ではないのか。

A 庁舎内の新たなスペースの確保は現時点では困難で、子育て支援包括支援センターは、市民健康課内に設置していく予定だが、十分な広さではないことから、今後関係課と協議を行っていきたい。
子ども家庭総合支援拠点も、こどもと家庭の相談室内に設置していく。
現在も来所の相談については専用の個室で行っており、必要に応じて相談員が託児するなどの対応をしており、支援拠点設置後も相談者の視点に立った対応をしていく。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

むすび
以上のようなやりとりを通し、鎌倉市が、国が示している「子ども家庭総合支援体制の整備」の方向性 https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000365204.pdf に沿って取組みを進めていることがわかりました。
子育て世代包括支援センターや子ども家庭総合支援拠点の設置場所については、新たなスペースの確保は困難で、現在の所管課のスペースに「機能として導入」する予定であるとのことですが、支援の受け手の側の目線に立って支援にアクセスしやすい環境を整備していく努力が求められます。

さらに言えば、これら2つの仕組みづくりだけは十分な支援とは言えません。
「行政に相談に行く」という問題解決に向けた一歩に踏み出せない子育て世帯にとっては、行政や地域とつながりを持てる場所が身近にあることが大切です。

4行政区にある子育て支援センターしかり。
そして、保育施設での「一時預かり」が多様なニーズに応じて利用できることも、貴重なつながりであり、セーフティネットです。

6月議会では、閉館が決まった岩瀬子ども会館の存続(地域の多世代交流の場としての存続)を求める陳情が賛成多数で採択されました。
乳幼児親子にとっての地域での緩やかな居場所の確保も、広い意味で孤立化を防ぐ一助となるのだと思います。

鎌倉子育て支援センターがある由比ガ浜こどもセンター

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

6月議会の一般質問はこちらで見られます。
http://kamakuracity.gijiroku.com/g07_Video_View.asp?SrchID=1849
質問項目は 1子育て支援 2防災、特に津波避難対策 3本庁舎整備 4ごみ処理施策の方針転換の順です。