自治体にのしかかるGIGAスクールの財政負担 ~2月定例会振り返り(2)

全国の小中学校で児童・生徒が1人1台のPC端末を使えるようにするGIGAスクール構想。
国の補助金を得るためには自治体負担分を予算化しなければならないため、全国の自治体は2、3月の議会で補正予算を成立させ、新年度予算に関連経費を盛り込みました。

自治体にとっては昨年末に突然降ってわいたようなGIGAスクールですが、ここに至る流れを見てみると、文部科学省マターではなく、首相・経産省マターであり、自民党内に推進グループがあることがわかります。

国家意思発言までのの経緯
2013年4月
新経済連盟(代表理事:楽天の三木谷会長兼社長)がプログラミング教育の導入を盛込んだ提言
2013年6月
「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議決定。プログラミング教育の推進を盛り込む。
2016年
内閣府「日本再興戦略2016」でプログラミング教育の必修化と学習指導要領の見直しが明記される
2017年
経産省が教育産業室を新設し、オンライン教育普及の「未来の教室」構想を打ち出す
2019年11月11日
自民党の教育再生実行本部/人工知能未来社会戦略本部が首相に学校のICT環境整備を求める提言
2019年11月13
首相が経済財政諮問会議で「PC1人1台は国家意思」と発言。
2019年12月19
文科大臣を本部長とする「GIGAスクール実現推進本部」設置

既に「話が違う」国の補助金
本サイトの2月16日付の記事にも書いたように、国は
① 1台4.5万円を上限に、対象児童・生徒数の2/3を上限にタブレット端末の購入費を補助
②GIGA対応の校内高速通信ネットワークの整備費は1校3000万円を上限に、整備費の1/2を補助
と各自治体に示していました。
https://www.mext.go.jp/content/20200219-mxt_syoto01-000003278_505.pdf(2、5頁)

鎌倉市は、2020年度において小学校5,6年生と中学1年生用の端末を導入し、全25校に高速Wi-Fiを整備することとして、
①の端末購入費で1億7995万5千円の補正予算(うち補助金1億1997万円の充当を想定)
②のWi-Fi整備費で6億5321万6千円(うち補助金3億2660万8千円の充当を想定)
の補正予算を組み、これは2月13日の本会議で可決しました。

ところが、3月16日に行われた予算等審査特別委員会では、文科省が3月5日に示してきた②のWi-Fi整備費補助金の内定額が、鎌倉市の申請額を下回ることが明らかになりました。
整備費の1/2補助で3億2660万円を想定していたところ、補助金の内定額はそれを大幅に下回る1億4千万円だったのです(これでは補助率1/5です)。
ところが、国は1/2という補助率を引き下げたとは言っていません。
ネットワーク工事の標準仕様を示し、その1クラス当たりの単価に小中学校のクラス数を掛け合わせた額を各自治体のWi-Fi整備費と一方的に定めて、その1/2を補助するのだ、という説明です。1校あたり上限3000万円というのが、空手形だったということです。

問題は、国が「こんなに経費抑制ができますよ」と示してきた標準仕様なるものでネットワークのセキュリティや使いやすさが十分なのか、と言うことです。
鎌倉市は、国の標準仕様ではなく補正予算で示した内容の整備を行う予定です。そのため、②のWi-Fi整備費だけでも市の負担は5億円超になってしまいます(下図参照)。

3月末現在で①の端末購入費の方の内定額は示されていません。申請額どおりに満額で示されなければ、市の負担はさらに膨らみます。
また、初回購入時に1人に1台上限4.5万円の2/3補助の公約が果たされたとしても、導入から5年後の端末更新(買い替え)時にも同様の補助を出すかどうかについては、国は何も言っていません。

前倒しか延期か…
新型コロナウイルスの感染拡大で休校が長期化する中、パソコンやタブレットを使った家庭学習の需要が高まっているのは事実です。
自民党が1人1台の端末配備を前倒しするよう政府に提言するという報道(3月25日NHK)もありました。(GIGAスクール構想の中では、1人1台の端末を自宅に持ち帰ることを可能にするかどうかも決まっていないのですが…。)

逆に、新型コロナウイルス感染症対策と生活保障・経済対策に財源を回すために、GIGAスクールの実施を全国一律に2年ほど遅らせるという考え方もあるのではないでしょうか。
自治体がWi-Fi整備の財政措置に取り掛かる前に国が決断すべきだと思います。
補正予算GIGAスクール関連経費(変更後)のサムネイル