5G(第5世代移動通信システム)の光と影

5Gとは
携帯電話サービスの現在の主流は2010年開始の4Gですが、これに取って代わるとされる次世代(Generation)の移動通信システムが5Gです。
総務省は2019年4月に5Gの周波数をNTTドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルの4社に割り当てました。3.7GHz帯と4.5GHz帯のうち6枠と、28GHz帯のうち4枠という極めて広い帯域です。
2020年3月下旬からは限られた一部の地域でこれら携帯電話事業者(キャリア)による商用サービスが開始されています。

5Gの特徴は、超高速・超低遅延・多数同時接続。4Gまでの移動通信技術が基本的にユーザー同士のコミュニケーションに使われてきたのに対し、5Gは産業用ロボットや交通システムの制御など、産業や社会インフラの幅広い分野で使われることを念頭に仕様が決められています。
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6月20日、NPO法人市民科学研究室の上田昌文さんから5Gの問題点についてお話を伺いました。

5Gのリスク
4Gまでの高周波電磁波にも健康被害のリスクはあり、現行の規制、特に日本の総務省の電波防護指針の甘さは、ずっと指摘されてきています。

しかし、5Gのリスクは従来の高周波電磁波のリスクを大きく超えるものです。

詳しい説明は、上田さんらが開設した特設ページ「5G(第5世代移動通信システム)リスク情報室」の次のページをご覧ください。
高周波電磁波リスクの論点 https://www.goojii.info/page-39/page-369/

5Gの特性からみたリスクーその論点の整理 https://www.goojii.info/page-39/page-377/

5Gの周波数帯は広く、電波を沢山使います(だから高速化や重機の遠隔操作が可能となる)。また、電波は周波数が高いほど届く距離が短くなるため、5Gでは場所によっては中継基地局が100mおきという高密度で設置されることになります。
基地局1基あたりの電波が強く、基地局が高密度に設置され、さらに当面の間は3Gや4Gの基地局も併用されるので、生活環境中で日常的に浴びる電波の強さは、従来と比べ2~3桁(2,3倍ではない!)増えると予想されます。

5Gの現状
日本では2017年度から、キャリアを実施主体とする5G総合実証試験が始まりました。そして、今年3月下旬から商用サービスが始まり、5Gのスマートフォンも発売されています。
しかし、現時点では5G基地局は限られたエリアにしか設置されていません。
総務省は6月16日「2023年度末を目処に当初開設計画の3倍にあたる約21万局以上の基地局を整備」と発表、税制優遇措置などの手段も講じて強引に進めるようです。

また、国は、キャリアによる全国向け5Gサービスの展開を後押することと並行して、「ローカル5G」を推進しています。
ローカル5Gは、地域の企業や自治体等の様々な主体が自らの建物や敷地内でスポット的に5Gネットワークを構築し、利用可能とする仕組みです。
総務省は昨年ローカル5G専用の周波数帯を設定し、今年2月6日~3月6日、「ローカル5G等を活用した地域課題解決モデル」を構築する提案を募集しました。174件の提案があり、11事業が令和2年度実証課題に選定されたとのことです(11のうち、自治体が実施主体の統括責任者となった事例数は不明)。
実際の展開は、このローカル5Gが先行すると思われます。

デジタル化の必要性、5Gの必要性
5Gが、産業や危険な場所での作業などの特定の分野で有効活用(但し、働く人の大量被爆は心配)される可能性は否定しませんが、一般の人のコミュニケーションやデータ利用においては、電波が5Gである必要性は乏しいと言えます。にもかかわらず、誰もが常にかつてない強さの電波にさらされて暮らすこと(低強度多頻度曝露のレベル上昇)になります。

上田さんは、「私たちの営みのあらゆる分野において、どこまでオンラインにするのか、オンラインにしないでおくべきことは何なのか、自問し、整理しなければいけない時をむかえている」と話されていました。とても大事な指摘だと思います。