新型コロナウイルスワクチン接種の補正予算が成立(問題指摘 編)
ワクチンの安全性、有効性
日経メディカルOnlineと日経バイオテクが2020年11-12月に行ったwebアンケートでは、回答のあった医師6,830人のうち、「早期にワクチン接種を受けたい」は35%、「早期に接種を受けたくない」は30%、「分からない」は35%で、計65%が早期の接種に後ろ向きでした(同記事によれは、「早期にワクチン接種を受けたい」という回答は一般市民を対象にした複数のアンケートでは10~13%)。
「早期にワクチン接種を受けたくない」と回答した医師(2019人)の70%超が「ワクチンの安全性がまだ十分に検証されていない」を理由に選び、次いで「ワクチンの有効性(発症予防効果)が十分に検証されていない」を選んでいます。
1月22日の常任委員会審査で、市民健康課は「65歳以上を対象にしたインフルエンザワクチンの無償接種では接種率が63%だったので、それがひとつの目安であるが、7割以上の市民に接種してもらえるとよい」と答えていました。
果たして優先接種と位置づけられた高齢者のうちのどれほどの方が早期の接種を望むのか…。常任委員会では、ワクチンについての多面的な情報提供とコールセンターの機能の充実についての注文が相次ぎました。
新型コロナウイルスワクチンは従来のワクチンとは大きく異なる
厚労省は、ホームページでワクチンの種類を次のように説明しています。
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国内・海外において、▽不活化ワクチン・組換えタンパクワクチン・ペプチドワクチン、▽メッセンジャーRNAワクチン・DNAワクチン・ウイルスベクターワクチンなど様々な種類のワクチン開発が行われています。
▼不活化ワクチン・組換えタンパクワクチン・ペプチドワクチン
不活化した新型コロナウイルスの一部やウイルスの一部のタンパクを人体に投与し、それに対して免疫が出来る仕組みです。
▼メッセンジャーRNAワクチン・DNAワクチン・ウイルスベクターワクチン
新型コロナウイルスの遺伝子情報をそれぞれメッセンジャーRNA、DNAプラスミドとして、あるいは別の無害化したウイルス等に入れて、人に投与するものです。それが、人の細胞に入り、ウイルスのタンパク質を作ることによってウイルスのタンパク質に対して免疫が出来る仕組みです。
・ー・ー・ー・ー・ー・ (引用終わり。海外におけるワクチンの開発状況は末尾の表参照)
1月21日の衆院本会議で菅首相は、米国ファイザー社との契約締結に触れて「3億1千万回分を確保できる見込み」と説明しました。
ファイザー社のワクチンは、新しい仕組みのmRNAワクチンです。厚労省のホームページの新型コロナウイルスのQ&Aには、「mRNAは、数分から数日といった時間の経過とともに分解されていきます。また、mRNAは、人の遺伝情報(DNA)に組みこまれるものではありません」とありますが、mRNAがワクチンを含め、医薬品として認可されるのは今回の新型コロナウイルスワクチンが初めてです。
接種の副反応(≒副作用)として接種直後の強いアレルギー反応(アナフィラキシー)の発生率に関心が集まっていますが、大急ぎのワクチン開発で懸念されるのは、前人未到の領域で長期的にみて身体にどのような影響があるのか検証がされていないことです。
常任委員会では、これまでにない仕組みのワクチンであることの認識を持ち、接種履歴の管理もその認識に基づいて行うことを求めました。
高齢の接種希望者が接種しやすい体制に
ウイルス接種事業の補正予算案に賛成したのは、
①改正予防接種法により接種の実施主体は市町村とされ、接種事業を実施しないという選択肢が実質的にない
②安全性を考えれば、政府方針のウイルス接種事業ではなく、国産の従来型の不活化ワクチンの承認を待って接種事業を行うことが望ましいが、不活化ワクチンが承認されて量産体制ができるのがいつになるかわからず、市独自の接種事業では国の補助金も、健康被害が生じた場合の国による損害賠償の肩代わりも考えられない ―という理由からです。
そして、もっと端的に言えば、早期の接種を望む市民が現時点では過半数を超えていないとしても相当の割合でいらっしゃる以上、市としては接種事業を行えるように準備を進めなくてはならないと考えたことによります。
特に、感染防止に努める必要度が高い高齢者については、希望者が接種しやすい体制の構築が望まれます。
常任委員会では、介護施設等の入所者に対しては、集合接種の会場に赴かなくても施設において接種が受けられる方法の検討を求めました。
火事場泥棒的なマイナンバー活用提唱
21日の参議院の代表質問では、自民党が「マイナンバーカードと健康保険証を一体化させ、国が管理できる健康情報システムの実現に向けてワクチンの流通から接種までを含めた戦略性あるシステム設計が必要だ」と述べ、菅首相が「マイナンバーの活用も含め、効率的に接種記録を把握できる仕組みも検討する」と答えたとのことです。
「ワクチンは2回接種するので、1回目の接種後に自治体をまたいで転居しても照会しやすくなる」といった話も出たようですが、そんな例しかあげられないのかと呆れます。
国はワクチンの確保から流通(分配)をきちんとやろうとすれば気が遠くなるほど煩雑なはずで、また自治体の方は事業実施を担う人の確保が気が遠くなるほど大変。そんな時に火事場泥棒的にマイナンバーカードと健康保険証の一体化を進めるなどということはあり得ません。
鎌倉市が市費を投じると言っている接種履歴の管理も、全国的なデータベース化に飲み込まれるものであるなら、市費を投じる筋ではありません。