鎌倉市の基本計画・2023年度から3カ年の実施計画の見直しは?

鎌倉市の総合計画は、基本構想と基本計画、そして実施計画の3層で構成されています。
第4期基本計画の実施計画の計画期間は、2020~2025年度の6年間です。

市は、中間年次にあたる今年度に残る3年間(2023~25年度)の計画内容の見直しを行い、本日(1月27日)開催の市議会 全員協議会で、「実施計画改訂版(案)」(全168頁)として議会に示しました。

新年度から3カ年の財政収支の見通し
「表1」はp11掲載の「財政収支の見通し」(予算ベース)です。

歳入の見通しは、市税収入が令和6年度以降も令和5年度と同水準で推移する試算に基づいています。
市債は、発行額・残高を減らすことを財政運営上の目標にするのではなく、世代間の負担の公平性と財源確保の観点から活用をはかる方向性で、令和4年度の35億8千万円が7年度には57億5百万円に膨らむ見込みです。

歳出では、「その他」(普通建設事業費、物件費、維持補修費、補助費等)が令和4年度253億6千万円から7年度320億6千万円に推移する見通しで、特に6年度から7年度にかけて約57億円の増加となっています。

事業費の増加については、▽市営住宅の再編・集約化事業を進めている ▽令和6年度あたりから深沢地域の土地区画整理事業への市費の負担が始まる ▽7年度は名越クリーンセンターの稼働が停止し中継施設の建設に進む ―という説明でした。

需用費のうちの光熱水費については、直近の大幅値上げを踏まえた試算(令和4年度比+6.1億円)とのことでした。

本庁舎整備が事業費増に大きく影響するのは8年度以降?
本庁舎整備は、令和10(2028)年度の開庁(供用開始)に向けて7年度に実施設計のスタートが予定されていましたが、上述の7年度の事業費増にはこの経費は見込まれていないことになります。開庁時期が後ろにずれることなく整備事業が進捗することを望みます。

全員協議会では、9人の議員が質疑を行いましたが、「市役所の位置を定める条例」改正議案に反対した議員が、重点事業の柱のひとつ「強靭(レジリエンス)なまちの実現」に関連し、「2011年の東日本大震災の後、都市軸を沿岸に近いエリアから内陸部に移す必要性が指摘されたが、市はこの間一体何をやってきたのか」と批判したのは、自己矛盾とも言うべきでしょう。

「消防本部を鎌倉消防署から大船消防署に移したことや稲瀬川保育園と材木座保育園を由比ガ浜保育園に統合したことをお忘れか?」という疑問はわきに置くとして、市役所の深沢移転が全市的な防災力の強化という視点に立つものだということを全く顧みない発言だったからです。

「強靭なまち」とは?
重点事業の「強靭なまち」は、防災・消防・インフラ整備の分野の取組みですが、「強靭なまち」をもっと広く捉えると、コロナ禍や大規模災害、深刻な経済不況などに見舞われた際に市民生活を支えるセーフティネットが機能する地域社会ということだと常々思っています。

コロナ禍が始まってからというもの、従来とは桁違いの臨時交付金が国から市にもたらされ、市民に給付されました。そうした対応は、今後も状況に応じてこなしていくことでしょう。
しかし、鎌倉市として力を入れなくてはならないことは、市民生活が深刻な状況に陥った時に下支えするための体制(組織力)の強化ではないでしょうか。

複雑化・複合化する市民生活の課題に向き合い、セーフティネット(最後の砦の生活保護だけを指すのではなく、何層にもわたるセーフティネット)を張り巡らすための福祉と地域共生の連携、行政と関係団体・民間との連携をこれまで以上に強力に進めてほしいと思います。全員協議会での「実施計画の見直し」の報告に対しては、この点を指摘して市の姿勢を質しました。

 

鎌倉市居住支援協議会主催の研修会に参加しました
同日午後は、鎌倉市居住支援協議会主催の不動産関係者・福祉関係者合同研修会「皆でつながって居住支援」(会場:旧大船駅周辺整備事務所)に参加しました。

住宅確保要配慮者(高齢者・障害者・外国人など「借りたくても借りられない」方たち)の居住支援は社会のセーフティネットとして、とても重要な取組みです。
鎌倉市は家賃相場が高く、生活保護を受けている人が借りられる物件が大変少なく、コロナ禍で住宅確保給付金を受給した人が家賃の安い住宅に移りたくても見つからないという状況もあります。

研修会には、不動産業、地域包括支援センター、障害者福祉の相談支援事業所・基幹相談支援センター、高齢者住宅財団、インクル相談室、民生委員児童委員協議会、鎌倉市障害福祉課・生活福祉課といった様々なバックの方たちが参加して、不動産店・生活支援・行政の3様の立場での発題のあと、「つながる」を意識したグループワークを行いました。

支援を必要とする人の困りごとは多様で、家族を含めて困っているケースが増えていること、必要な支援に結び付けるためには多様な制度について知り、関係者間で連携していく必要があることを、現場で関わっている方たちの発言を通して改めて認識しました。また、「借りたくても借りられない」方たちのための物件の仲介と入居後の見守りにまで心を砕く不動産屋さんがいらっしゃることに大いに励まされました。