マイナ保険証だけでなく、マイナンバー制度そのものの見直しが必要(その4)

マイナンバー制度については、8月19日付「マイナ保険証だけでなく、マイナンバー制度そのものの見直しが必要(その1~3)」で詳しく述べていますので、本稿では、神奈川ネット「まちづくりレポート169号」(10月26日発行)に掲載の『マイナ保険証に一本化せず、紙の健康保険証の存続を!』という記事にスペースの関係で書ききれなかったことを紹介します。

健康保険証としての利用登録数
デジタル庁によれば、2023年10月22日時点でのマインナンバーカードの
累計申請件数は98,454,324件 人口に対する申請件数率は78.5%
累計交付枚数は96,574,551件 (a) …紛失などによる再交付が含まれるので取得者数とは一致しない
健康保険証としての利用登録数は71,496,733件(b)  登録率(b/a)は74.0% とのことです。

ちなみに、マイナ保険証利用登録数を全人口(2023年5月1日現在確定値)124,477,000人(c)で割った登録率(b/c)は57.4%で、6割に達していません。

さらに、マイナ保険証が実際にどの程度使われているのかを見ると、6月以降低下の一途をたどり、医療機関等でのオンライン資格確認に際し、従来の健康保険証ではなくマイナ保険証が利用されたのは、わずか4.54%(2023年9月)に過ぎません。

紙の健康保険証の廃止時期
マイナンバーカードと健康保険証の一体化を定めた改正マイナンバー法が公布されたのは6月9日。同法は、公布から1年半以内に保険証を廃止するとしているので、廃止時期は最も遅い場合で2024年12月8日ということになります。

岸田総理大臣は、8月4日の記者会見で、来年秋に今の健康保険証を廃止する方針を当面維持した上で、マイナンバーカードと一体化した保険証を持っていない人すべてに「資格確認書」を発行することなどで、国民の不安払拭に努める考えを示しました。

厚労省は、首相会見を受けて、次のような具体策を発表しています。
必要な医療を確実に受けられる環境を整備するため、当分の間、マイナンバーカードと一体化した保険証=マイナ保険証を持っていないすべての人に、本人の申請を待たずに「資格確認書」を交付する。
いったんマイナ保険証の登録をしたあとも、希望すれば利用登録を解除して、資格確認書を使えるようにする。
有効期間については健康保険を運営する組合ごとに5年以内で設定し、更新も可能とする。
こうした対応をいつまで続けるかは、マイナ保険証の交付状況などを踏まえ、今後判断していく。

とは言うものの、デジタル庁の「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」(議長 デジタル大臣)は8月8日の第3回以降開催されておらず、その後どのような検討がされているのかは不明です。

今秋始まった「マイナ保険証を使ってみませんか」キャンペーンのポスター。使えばメリットがわかるって、本当?

資格確認証については、わからないことが多すぎる
政府は、健康保険証を廃止する方針を固持し、マイナ保健証を持っていない人には「資格確認証」を発行するとしています。

6月2日成立の改正健康保険法等では「被保険者が電子資格確認(マイナ保険証による資格確認)を受けることができない状況にあるとき、被保険者は保険者に資格確認書の交付を求めることができる」とされ、被保険者が申請しないと資格確認書がもらえないことになっています。その一方、経過措置として同法附則15条は「職権交付」を規定し、保険者(全国約3400の保険組合)が「必要があると認めた時は、当分の間、職権で被保険者に対して資格確認書を提供することができる」としています。

資格確認証を「誰に」「いつまで」発行するのかについては、確定していないことが多すぎ、「安心してください」と言われても、安心できるものではありません。

≪資格確認証の誰に対して発行?≫
マイナンバーカードを取得していない人 及び マイナンバーカードを取得しているがマイナ保険証としての利用登録(カード搭載の電子証明書と医療保険の情報の紐づけ)をしていない人は、資格確認証の交付対象となる。
マイナ保険証の利用登録をしている場合は、マイナンバーカードを返納しても紐づけは消滅しないので、資格確認証の交付申請はできない(との解釈が一般的)。
厚労省は「マイナ保険証取得後も、希望すれば利用登録を解除して、資格確認書の交付を受けられるようにする」と発表している(前述)が、現時点ではマイナポータルからマイナ保険証の利用登録を解除できるシステムにはなっていない。
附則15条に基づく職権交付(申請によらない交付)は、保険者の裁量にもとづくものであるため、保険者によって職権交付の対象者にバラツキが生じる可能性が高い。

≪資格確認証をいつまで交付?≫
附則15条に基づく職権交付は「現行の保険証からマイナ保険証への移行期において、円滑な移行を図るため、当分の間、マイナ保険証を保有していない方等に対し、申請によらず交付する運用とする」とされているものである。2024年秋の健康保険証廃止後1年間の経過措置のあと、資格確認証交付にかかる保険者の裁量がどのようなものになるのか(年限を定めて資格確認証を交付するのか、再交付を繰り返すのか、等々)予想がつかない。

 

健康保険証を廃止せず、使い続けられるように
合理的に考えれば、マイナンバーカードと一体化した保険証でなければいけない(または不便である)理由はどこにもありません。その一方、現行の健康保険証を廃止してしまえば、マイナ保険証も資格証明書も使えずに保険診療を受けられない人が出てくるのは目に見えており、医療の現場や自治体の窓口の負担もはかり知れません。
国民皆保険の制度を維持するには、再び法改正を行い、現行の健康保険証を今後もずっと使い続けられるようにすることが、どうしても必要です。
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鎌倉市議会は10月3日、「紙の健康保険証廃止について停止し、見直しを求める意見書」の提出議案を賛成多数(賛成14人、反対は自民・無所属の会、公明党、夢みらい、久坂議員の11人)で可決し、国に提出しています。