新庁舎整備は、基本設計事業者選定のステージに!
鎌倉市では、2022年9月に策定した「鎌倉市新庁舎等整備基本計画」にもとづき、新庁舎等の整備に向けて
▽新庁舎のあり方(デジタル化による業務革新を前提)を具体的に検討するとともに
▽基本設計を実施するに当たって、創造性・技術力・知見・実績を有する事業者を選定するため、
「基本設計およびDX化支援に取り組む事業者」の募集・選定を公募型プロポ―ザルの手法で進めています。
公募に応じた4事業者(うち2者は共同事業体)からの企画提案の提案概要が7月8日から本庁舎1階や各支所、鎌倉生涯学習センターで展示されています(9月2日まで)。
基本設計の原案としてではなく、基本設計等に取り組むにあたり 各事業者がどのようなアイデアをもっているのかを市民に見てもらうための公開(展示)です。
写真は展示風景。「著作権保護のため撮影は遠慮してください」とのことなので、提案内容がわかるような近接撮影はしていません。
提案概要は市のホームページに掲載されおり、そちらで確認できます。7月22日から市民意見の募集を開始するとのことです。
公募に応じた事業者からの提案概要(鎌倉市ホームページ)
位置条例改正案の否決は、「その時点で議会の合意が3分の2のラインに届かなかった」ということ
市長は、「新庁舎等整備基本計画」策定後の2022年12月議会に市役所の位置を深沢に定める「位置条例改正案」を提案。しかし、出席議員の優に過半数は賛成したものの、地方自治法が定める3分の2の特別議決の可決ラインには届かず、位置条例改正は未成立のままです。
とはいえ、2022年12月に位置条例改正案に反対した議員が26人(当時)中10人いたというのは事実でも、それによって「新庁舎の深沢での整備に反対」が市民の総意であることが示された訳ではありません。また、賛成議員数が可決ラインに達する見通しが立てば、位置条例改正案は再提案されます。
「位置条例が改正されていない状態で基本設計にかかる支出を行うべきではない」という批判があります。
「位置条例の改正を早く実現せよ」という立場からの批判ではなく、「位置条例改正が今後も議決されずに新庁舎の整備がストップすることになれば、新庁舎整備に投じた経費が無駄になり市の財政に損害が及ぶから、基本設計以降の経費の支出をするべきではない」という批判です。
「深沢での新庁舎整備に反対する」ということが、こうした批判にことよせて語られるのは、深沢での新庁舎整備自体に反対する合理的な理由をもはや示せないことの表われであるとも言えるでしょう。
様々な地域の市民から声を出していただくこと
新庁舎の整備は、後述のように「待ったなし」(※)で行う必要があります。
2018年3月の「公的不動産利活用推進方針」の中に「本庁舎は深沢に移転して整備」することが盛り込まれて以降、主に「市役所が遠くなる」地域の方たちから移転反対の意見が湧きおこる一方で、「現在地で建替えられないなら、別の場所で整備するのはやむをえない」「現在地に行政サービスが残るなら、本庁舎は深沢に移転しても問題ない」「行政が決めたのなら、いずれ決めたようになるのだろう」と受けとめてた多くの市民は、あえて思いを口にされないできたのではないかと思います。
しかし、「新庁舎の開庁は最も早くて2031年」と後ろにずれ込んだ整備スケジュールが公表された状況を受けて、先の6月議会には、新庁舎の整備を進めることを求める5件の陳情が出されました(賛成多数で採択)。5人の方がそれぞれの視点から深沢での新庁舎の整備と現在地での市民のための施設づくりを進めることを求めたもので、そのうちの2人が建設常任委員会で行った意見陳述(口頭での趣旨説明)は中継録画(下線を付した「日程審査」をクリック)でご覧いただけます。
現在地での長寿命化改修が選択肢となりえないことを技術的な面から具体的に論じた陳情第14号提出者の陳述は、開始後1時間41分(1:41:17)~1時間49分(1:49:16)の約8分間です。まちづくり計画部の日程の審査時間は8時間を超える長丁場ですので、中継画面下のカーソルをずらして8分間だけお聞きください。
6月議会 建設常任委員会 まちづくり計画部の日程審査
ここにいたり、鎌倉市の全市的なあり方を案じていらっしゃる市民の皆さまには、
◆市長(市長部局)に対しては、新庁舎整備基本計画から基本設計へと進む只今の過程において、新庁舎の整備と市役所現在地の整備に関して「これが大事」と思われることを、対話的な意見としてどんどん出していただくこと(「対話的」というのは、これまで積み重ねられてきた検討を顧みた上でご自分の意見を表明される、というほどの意味合いです)
◆位置条例の改正については、改正を議決できていない責任は市長ではなく議会にあるので、議会(議員)に対し「何をやっているんだ。位置条例改正案を可決させ、もっと地に足をつけた議論を進めろ」と発破をかけていただくこと
― を切にお願いするものです!
・・・・・・・<補足>・・・・・・・・・・・
※新庁舎整備はなぜ「待ったなし」なのか(要点のみ)
災害に備えるまちづくりの視点で
○現庁舎には大地震発生時に住民救援・災害復旧の拠点として機能するだけの建物の強度がない(注)
○鎌倉消防署は津波浸水想定区域内にあり、現庁舎も敷地の入口付近まで津波浸水想定区域であるのに対し、深沢で新庁舎と消防本部を一体的に整備すれば大地震発生時の指令機能の連 携がはかれる。
○庁舎移転後の現在地に整備する複合施設に防災拠点機能を備えさせることができる(現庁舎を長寿命化改修して使い続け、そこに防災機能を付加するのには限界があるが、新築する複合施設は低層建築物であっても防災機能を高められる)
将来の世代にツケを残さないまちづくりの視点で
○築55年の現庁舎は2031年には築60年を超え、建物は実際に傷んでいる(上掲の陳情14号意見陳述に詳しい)。いずれ建替えなければいけないものを先送りし、さらに老朽化が進むのを待って建替えるのでは、その間に繰り返す補修の経費や非効率から割高となる光熱費が軽視できない額となる。
深沢に移転して整備するタイミングを逸し、現在地で建替えることになれば、建替え期間中の仮庁舎の建設費(借地代)または賃借料と、2度にわたる引っ越し経費が大きくかさむ。
○市庁舎を深沢に移転すれば、中央図書館と鎌倉生涯学習センターを現在地に集約化できるが、そうしなかった場合、それぞれ今ある場所で施設の建替えは困難であり、結果的にいずれも老朽化した市庁舎・中央図書館・生涯学習センターを将来の世代へのツケとして残すことになってしまう。
現実問題として狭いことの支障が明らか
○執務スペースが不足している(数年以内に厚木市と三浦市の新庁舎が完成すると、鎌倉市の現庁舎が県内一般市で職員1人当たりの床面積が一番小さい庁舎になる)。会議室・来庁者対応のスペースが足りず、市民が休憩・利用できるスペースがない。
○庁舎の狭さは、平常時においては業務上の支障、災害発生時においては脆弱さを意味する。
(注)鎌倉市は、本庁舎と消防本部については重要度係数(重要度の高い建物に対して耐震性を高めるために考慮する係数)を、1.5と定めています(地震力より1.5倍も大きい力を想定した耐震性能)。これを耐震診断結果のIs値(構造耐震指標)に当てはめるとIs値0.9となりますが、現庁舎のIs値は0.6です。0.9に引き上げるために耐震ブレース(筋交い)を多用して補強するのは、狭い庁舎がますます狭くなり現実的ではありません。制振、免震構造を採用して補強する手法も過去に検討した結果、高い費用や地下構造物への影響に加えて狭さの問題の解決にはならないことから、「移転先での新築」による耐震性の確保という選択になりました。
ただ、深沢での整備が現時点における最速で進んでも7年後以降(10年近くかかる?)ということであれば、その間使い続ける現庁舎の安全対策も必要です。
その場合重要となるのは、「あと何年使うか」を明確にさせ、使用年数に応じた過不足のない安全対策を行うことです。
「あと何年使うか」を把握する意味でも、できるだけ早期に議会が位置条例の改正案を議会が可決させる必要があるのです。