津波避難施策は、常なる前進を!

津波避難施設は全国で550
7月23日の神奈川新聞、東京新聞などの地方紙各紙に「全国の自治体が設置した津波避難施設の数は2023年4月時点で550。内閣府による前回調査の2021年時点から1割増加」という記事(共同通信の配信)が掲載されました。

550の内訳は、津波避難タワーが431基、盛り土による高台(「命山」、「避難の丘」などの呼称)が73箇所、人口地盤が43箇所、避難シェルターが3箇所とのことです。
調査結果は、こちらの内閣府のホームページの「津波避難ビル及び津波避難タワー等の整備数(令和5年4月時点)」です(「津波避難タワー等」が津波避難施設に該当)。
津波対策 : 防災情報のページ – 内閣府 (bousai.go.jp)

都道府県のなかで津波避難施設数が最も多いのは静岡県の140、次いで高知県の123で、施設数が2桁なのは8道県で、これら1道9県以外の県では1桁またはゼロ(神奈川県は8施設)です。津波避難ビルは全国で14,729棟ですが、津波避難施設は1道9県を除くとそれほど多くないのが現状です。

県内沿岸部市町の内訳(内閣府調査・抜粋)

議員有志で避難路を視察
鎌倉市は、津波避難対策の基本を「高台への避難」においています。

上記の記事の掲載があった23日、防災を所管する市民環境常任委員会の正副委員長の発案により市議会の有志8人で市内坂ノ下の霊仙山の津波避難路を視察しました。
この避難路については、2011年の東日本大震災の直後から、安全に高台に登れるようにする対策の必要性が市議会で指摘されてきました。近いところでは、2023年9月議会の決算等審査特別委員会でも取り上げました。
<2023.9.25 決算特(要約)>
保坂 避難先確保の必要性が高いエリアで、高台はあるがそこに至る経路がないというところについては、一から経路を整備することにも踏み出していってほしい。既に高台への経路が考えられているところについても、安全確保を図っていただきたい。海浜プールの避難路ということでも霊仙山の上り坂が示されている。高台への避難経路は土砂災害特別警戒区域に該当するところが多いと思うので、点検を怠らずに、避難時の安全確保の整備を、より積極的にやっていただきたい。現状どう認識されているのか。
○末次市民防災部次長 毎年11月に沿岸部で津波避難訓練を行っており、実際に避難場所まで住民の方に避難をしていただき、訓練が終わった後に、御意見を頂くことにしている。地域の皆さんのお話の中で、できることがあれば、積極的に取り組んでいきたい。東日本大震災から10年余が過ぎており、長期的に津波避難施設の確保もやっていかなてはならないと思う。(中略)
○保坂 (令和4年度『施策の成果報告書』314ページ掲載の)道路維持補修事業で斜面崩落対策詳細設計等業務委託を行った箇所というのは、坂ノ下の海浜プールの背面の斜面なのか、海浜プールの先の134号線沿いということなのか、場所としてはどちらか。
○道路課長 (同ページ)第13節の中に斜面崩落対策調査等業務と斜面崩落対策詳細設計等業務委託の両方があるが、調査業務の方の箇所が、坂ノ下の霊仙山に上がる坂の下寄りになる。上がり切ったところから数十メートル行ったところが、道路の法面「下のり」になっているので、そちらの測量地質調査と予備設計を行っている。

この坂道の下方の法面が工事予定とのこと

海浜プール利用者の避難
霊仙山に上る坂道は何度も歩いたことがあるのですが、今回は鎌倉海浜公園水泳プールから坂の登り口に至る経路についての説明が受けられそうだったので、視察に参加しました。
同プールからの経路は、隣接のパークホテルとの間の門扉が大地震発生で避難が必要になった際には開けられ、同ホテルとその隣の鎌倉清和由比(介護老人福祉施設)の建物の裏手を通って住宅地の道路に出るというものです(避難ルート図・点線部分)。
kaihinpool.pdf (city.kamakura.kanagawa.jp)

海浜公園プールとパークホテル駐車場との間の避難用非常扉

霊仙山の坂道(避難路)登り口

スポーツ課の担当者から受けた説明では、素足での避難とならないよう、靴を履いたままの入場を可とし、靴を脱ぐのはプールサイドの色分けしたエリアに限定している プールの管理・監視業務等を委託しているのは警備業務の資格も有する事業者で、避難時の誘導は習熟している津波が最短8分で到達する場合でも、即時に避難を開始すれば坂道の途中の身の安全を図れる高さまでは行きつくことができると考えられる…ということでした。

同プールは、2021年7月に発生した崖地崩落のため、50mプール・児童プールは使用できず、25mプールと幼児用プールのみの利用になっています。猛暑のせいもあるのか視察時の利用者は多くなく、「これくらいの利用人数なら、短時間での誘導は可能」という印象でした。

住民の避難を確実に
とはいえ、プールのオープンは夏の2か月間の日中に限られるので、霊仙山の坂道は、周辺住民の避難路としての重要性が大きいと言えます。短時間で高さが稼げる坂道ですが、地震で法面が崩落すると通れません。法面保護の工事が行われるのはひと安心ですが、予定の工事が完了した後も随時点検を行うことが望まれます。

また地震発生後「8分以内」に避難するためには、住宅の建材や家具の下敷きにならないための耐震補強や家具の固定などが重要です。特に古い賃貸アパートなどが心配です。そういう思いもあって、6月議会の一般質問では住宅の耐震化について取上げました。