9月議会振り返り③~ 建設常任委員会では…

9月13日開催の建設常任委員会では、まちづくり計画部・都市景観部・都市整備部の3部に関する議案・報告・陳情を審査しましたが、今回も、まちづくり計画部だけで5時間20分を要しました。同部の報告事項3件について述べます。

1.本庁舎等整備事業-新庁舎基本設計にあたる事業者を選定
市街地整備課から、新庁舎の基本設計およびDX(デジタルトランスフォーメーション)支援にあたる事業者の選定について、4月8日(月曜日)に募集要領・選定審査会委員名簿を公表し、公募を開始し、7月8日に4チーム(事業者)から提出された「提案概要書」を公表、7月22日から市民意見・質問の募集を開始、7月30日に選定審査会による一次審査を行い、審査を通った4チームの事業者名を公表 9月1日に二次審査を実施し、最優秀提案者を選定 という取組状況の報告がありました。

9月1日は、200人程度が傍聴できる会場での公開プレゼンテーションを経て二次審査が行われる予定でしたが、台風接近で来場者の安全が危ぶまれたため公開を中止し、市役所会議室で傍聴者を入れずにプレゼンテーションが行われました。
最優秀提案者は、9月1日にプレゼンテーションに続いて行われた選定審査会で選定済みで、13日の建設常任委員会の時点では「目下、選定審査会議事録のまとめ、審査講評の整理を行っている最中で、選定結果の公表は10月はじめ」と報告されました(その後10月3日に選定結果の公表)。

公開プレゼン中止で市民への公開度が低下したのか?
公開プレゼンテーションが中止になったことについて、「なぜ延期してでも公開でやらなかったのか」と質問した委員もいましたが、事業者・選定審査会委員の日程を調整し、かつ多数の傍聴希望者を収容できる会場を押さえて新たな日程を設定することは、普通に考えれば難しいでしょう。やりくりして決めた新たな日程ではプレゼン担当者が不都合で、代役で対応せざるを得ない事業者が出てきてしまったら、審査の公平性にも問題が生じかねません。

公開プレゼンテーションでなかったことをもって、公募型プロポーザル方式の事業者選定の公開度や市民参加度が低下したと指摘する委員もいました。そういうイメージを与えたいがための指摘だと思います。実際には公開度・市民参加度への影響はなかったと言ってよいでしょう。

プレゼンテーションの動画はもともと市のホームページで公開される予定でしたが、公開プレゼンにならなかったことを受けて9月5日には「速報版」が公開されました。
その後、当初から予定されていた「詳細版」(プレゼン内で事業者が使用したスライドを見やすく映し、音声を聞き取りやすくして手話も入れたもの)が9月30日に公開されています。臨場感を持って見守ってくれる200人程の市民にプレゼンの現場に来ていただけなかったのは残念でしたが、プレゼン内容の公開度はオンラインでの公開で十分補完されたと考えられます。

なお、公開プレゼンテーションとして実施された場合も、傍聴者を入れて行われるのは、事業者によるプレゼン および 選定審査会の委員による事業者への質疑の部分であり、その後の選定審査会の議事は非公開でした。これは本件に限ったものではなく、生涯学習センターの指定管理者選定の公開プレゼン(本サイト2022年5月15日の記事「鎌倉市の生涯学習センター ~ 指定管理者のプレゼンに2団体が参加」参照)でも、つい先頃 (10月10日) のNPOセンターの指定管理者選定の公開プレゼン(傍聴者は私1人!)でも同様でした。実際に事業者名を挙げて評価の意見を交換するのですから当然です。
建設常任委員会では、このあたりのことを理解していない委員から「密室審査となった」というような的外れの発言があり、閉口しました。

では、市民参加度の方は ?
プレゼンの現場に傍聴者を入れられなかったことを単純に捉えれば「参加」の機会が失われたことになりますが、公募型プロポーザルによる事業者選定過程における市民参加で重要だったのは、プレゼンの傍聴よりも公表された提案概要書に対する市民意見・質問の提出の方でした。

公表された提案概要書に対し、オンラインプラットフォームLiqlid 経由 および市役所や支所のロビーなどの掲示に付箋を貼る形で市民から意見や質問が提出されました。二次審査において、それらの意見や質問は、事業者がプレゼンテーションの中で説明に折り込み、選定審査会委員が質疑の参考にすることで反映されました。
公開プレゼンであったか傍聴者を入れないプレゼンだったかに関わらず、二次審査における市民参加は当初意図したレベルで図られたと捉えてよいと思います。

なお、「市が提案概要書を公表していること」を多くの市民に知ってもらい、意見や質問の提出を通して市民参加が広がるように、保坂と建設常任委員会の委員長がそれぞれ発信を行いました(保坂については本サイト7月16日付記事「新庁舎整備は、基本設計事業者選定のステージに!」のことを指します)。これに対し、「著作権の侵害」と決めつける批判が2,3人の議員と議員とタイアップした市民から出たことは心外であるとしか言いようがありません。

新庁舎基本設計等の事業者選定の公募型プロポーザルに実績のある4事業者の参加があり、個々に特色のある提案が示されて、市民からの意見が寄せられて選定が進められたのは、当初意図した成果が得られたということです。

今後、12月議会での契約締結議案の議決を経て契約が結ばれると、基本設計の図面を描く段階に移ります。その中で説明会やワークショップの開催を通して、引き続き市民周知・市民参加(市民意見の吸い上げ)が進められる予定です。

 

2.深沢地域整備事業の現状
深沢地域整備課からの報告の主たる内容は次のとおりです。

≪土地区画整理事業について≫
UR都市機構と連携し権利者との合意形成を図りながら進めている。6月14日には第1回土地区画整理審議会が開催された。
工事の進捗については、2025年度からの本格的な整地工事に先立ち、旧深沢多目的広場を含む市有地A用地内の地中基礎等の残置物の撤去に向けた掘削による調査が行われている。調査結果に基づき、2024年度中に残置物等を撤去し、掘削土を埋め戻す予定。

≪東海道線 村岡新駅(仮称)の整備について≫
8月29日、JR東日本は土木・建築・機械に係る主要な工事請負契約を締結。工事については準備ができ次第取り掛かる予定(9月末~10月初旬の見込み)。
※本年5月20日、県・藤沢市・鎌倉市・JR東日本は新駅設置に伴う工事等の施行に関する協定書を締結している。

≪整備区域周辺の交通対策≫
2023年度に現状の交通状況を把握するとともに将来想定されるの課題を見据えた道路整備計画案を策定し、関連する道路の予備設計を実施し、取組みを進めている。

≪新たなまちづくりの進捗≫
新たなまちづくりをハード・ソフトの両面からトータルにデザインすることが効果的であることから、「将来を見越した官民連携による魅力的かつ持続可能な都市のあり様を3者(鎌倉市、大規模地権者であるJR東日本、土地区画整理事業の施行者のUR都市機構)と共に検討するパートナー」の選定も視野に、関係者間で検討を進めている。

3.土地利用調整制度の見直しに係る条例改正
鎌倉市の土地利用調整に係る条例(まちづくり条例、開発事業における手続及び基準等に関する条例、特定土地利用における手続及び基準等に関する条例)の見直しについて、条例改正案の概要の報告がありました。

委員会で説明があったのは、主にまちづくり条例に新たに位置づける「(仮称)新自主まちづくり協定」でしたが、まちづくり条例の改正では、大規模開発事業の届出時期に関する変更点も注目されます。

≪大規模開発事業の届出時期≫
従来…大規模土地取引行為の日 又は開発事業条例 第13条に規定する事前相談に係る書面の提出をする日のうちいずれか早い日の4月前まで
改正案…「当該開発事業に係る計画の変更可能な時期まで」に改めることにより、開発事業の構想段階に提出することを規定する
―とのことです。

条例改正概要についての意見公募(パブリックコメント)が10月1日~31日まで実施されています。まちづくりに住民がどのように関わるか、関わることができるのか ーということに関心のある方は、ぜひ意見をご提出ください。

鎌倉市/「土地利用調整制度の見直しに係る条例改正案概要」への意見公募(パブリックコメント)と説明会について (city.kamakura.kanagawa.jp)