学校教育における外部連携(コラボレーション)

2025年12月定例会では「生き方教育」化する学校教育と教育委員会が進める外部連携についての質問も行いました。

ここでいう外部連携とは、現行の学習指導要領が掲げる「社会に開かれた教育課程の実現」を社会(多くの場合 民間企業)と連携・協働(コラボレーション)して実現しようとする取組みを指します。

鎌倉市は、学校教育における外部連携に極めて積極的な自治体だと言えます。
市教委が力を入れている鎌倉スクールコラボファンドの対象授業の取組みは、<ファンドを活用した学びで外部の人材や組織とコラボする><外部から提供された資金を活用する><ファンドレイジングにおいても外部連携の手法を採用する>という、3重の意味での外部連携です(あくまで手法のことを言っています)。
2022年度には、STEAM教育推進を目的にインテル(株)がリコージャパン(株)等と協働して支援するSTEAM Lab 実証研究校に手広中学校が選定され(全国で18校のみ選定)、3Dプリンタ等の提供を受けて授業実践に取り組みました。
一早く導入したAIドリルも、市独自のULTLAプログラムも外部連携ですし、企業からプログラミング学習用教材の無償提供も受けています(他にも枚挙にいとまなし)。

全体でかなり長い質問でしたが、高橋教育長の見解を最後に質した際に述べたことが私の質問の意図をまとめたものになっているので下記に紹介します。

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外部連携をするべきではない言っているのではないのです。学校を外に開き、学校の風通しをよくすることは望ましいことです。また、ICT教育の流れを止めることはできないと思っています。

しかし、はじめの方で述べたとおり、今の学習指導要領は「何を学ぶか」から「資質・能力」ベースに転換されたものです。
子どもたちが新しい時代を生き抜くために必要だとして、子ども達のために育てたい「資質・能力」と言っているものが、実際には国や経済・産業界が求める人材の「資質・能力」と重なる部分が大きいこと、言い換えると、同じものを別の方向から見ているに過ぎないことは、否定できないのではないでしょうか。

「人が行う多くの仕事がAIに取って代わられる社会になっても、AIに取って代わられない職業に就ける資質やスキルを育てましょう」という、子ども達への思いやりに聞こえる言葉と、「世界から遅れをとった日本のDXを進めるためのIT人材を育てる教育が必要だ」という経済・産業界の要請とは現実的には表裏一体です。

国や社会が求める「資質・能力」、資質には関心や規範意識も含まれますが、そうしたものが外部連携によってもたらされるワクワクドキドキを通して子ども達に醸成されること。それも一概に悪いとは言えませんが、度を過ぎると、子ども達の内面から問いや関心がゆっくりゆっくり醸成されるのを邪魔するのではないかと、それを懸念するわけです。

今、ゆっくりを2回繰り返したのは、プロジェクト型学習やプログラミング学習、ICTを活用した個別最適な学び、加えて外部人材のメンターとしての活用などは、設定した問題の解決策や目標に速く辿り着くものだと思うからです。
あるEd-techのサイトでは、プログラミング的思考について「たどり着きたい目的地があるとすると、プログラミングはその過程のルートである。電車・徒歩・車などの様々な移動手段やルートを組み合わせて、最短で目的地までたどり着こうとするのがプログラミング的思考である」と解説されています。

目的達成のための手段の効率を重視して、最短で目的地にたどり着くようにするプログラミング的思考は子ども達に育みたい資質ではあるでしょう。でも、目的地がどこにあるか自分がどこに向かおうとしているのかわからずにウロウロすることの大切さというのもあるのではないですか。

Society5.0が予測不能な未来社会というのであれば、社会の変化や新しい事態に臨機応変に対応して、設定した目標をプロジェクト遂行的に達成する力も必要ですが、目標を見つけるためにゆっくりウロウロすることに耐えられる力も必要です。

「目的地はこっちですよ、効率的なルートで早く着なさい」と呼びかける声に応えることに過度に慣れさせてしまうのは、子ども達の内発的な育ちを支えることと相反します。

教育長が経産省の「未来の教室」事業の評価・検討会議の委員になられたことに象徴されるように、本市は学校教育における外部連携に極めて積極的です。外部連携に前向きであるからこそ、その外部連携が、「目的地はこっちですよ」という刷り込みにつながりうることの危うさを常に自覚してほしいと申し上げたいのです。