地方創生の交付金、どう見てもバラマキでしょう
1万円分の宿泊券が5千円で買える
3月30日の朝刊に、気になる広告が載っていました。広告主は鳥取県です。1万円分の宿泊券が5千円で買える「プレミアム宿泊券とっとりで待っとるけん」。国の「地域住民生活等緊急支援のための交付金」を使った事業です。4月1日に発売したところ、1万4千枚がわずか4分で完売し、予定されていた石破茂・地方創生大臣による購入の実演は行われずに終わったとのことです。同様の旅行券は、神奈川県も発行する予定です。
「地域住民生活等緊急支援のための交付金」は、2014年度中に予算措置をすることが交付の条件であったため、全国の自治体が2月議会で補正予算を組みました。
1万2千円分の商品券が1万円で買える
鎌倉市は①「スーパープレミアム商品券」の発行(9,700万円)、②地方版総合戦略策定事業(995万9千円)、③Wi-Fi接続環境整備事業(2,543万6千円)、④保育所等環境整備事業(1,560万5千円)の4事業の補正予算を組みました。
国はこの交付金を使途により2分類しており、①が「地域消費喚起・生活支援型」、②~④が「地方創生先行型」の交付金に当たります。④は、国が後になって明らかにした交付基準に合わないと判断されたため、①~③の3事業について交付申請が行われ、3月24日付で国から3事業、計1億3,239万円の交付決定がおりました。
①については、鎌倉市は既に同様の事業である「プレミアム商品券」の発行を、過去2回、市費を各4千万円当てて行っています。消費者にとっては1万円で商品券を買って1万1千円使える割増がありますが、割増分は税金で賄われています。地域経済活性化の波及効果がなければ、事業としての意義が認められません。普段買っている商品を商品券で買うのなら地元商店の売上げ増にはならず、普段買い控えている商品を商品券で買ったかどうかのチェックは困難です。これまで再三にわたり波及効果等の検証が難しい事業だという指摘をしてきました。
ところが、今度の「スーパー…」ではプレミアが1割ではなく2割つく予定です。国は「地域消費喚起」を掲げています。市議会2月定例会では、国によるバラマキではないか、地域経済の活性化にどうやってつなげるのか、と質問しましたが明快な答弁はありませんでした。
1年以内に地方版総合戦略を策定しなければ交付金は出ない
国は、全国の自治体に対し、「地方人口ビジョン」と5か年計画「地方版総合戦略」の策定を努力義務として課しており(策定しなければ交付金も出ない)、上述の「地方創生先行型」交付金事業の要件は、(1)地方版総合戦略の策定に係る事業 または (2)地方版総合戦略の策定に先行して行う事業であって地方版総合戦略に位置付けられる見込みのもの です。
私は、2月の代表質問において「鎌倉市の将来像は鎌倉市の文脈でじっくりと形作っていかなければならないところ、国の求めにより1年程度で地方人口ビジョンと地方版総合戦略をつくるというのはいかにも窮屈」と苦言を呈しました。
4月5日の神奈川新聞では、岡田知弘・京大大学院教授の「地域再生は長期にわたる問題で、計画作りも十分時間をかけて行う必要がある。国が一方的に指標を押し付けること自体、地方自治に矛盾する」というコメントが紹介されていました。全く同感です。
国の地方創生戦略は、むしろ地方自治に逆行し、税の使い方として到底納得できるものではありません。鎌倉市の地方版総合戦略が、国の指標に従順なだけのものにならないよう、今後とも見ていきます。
※地域住民生活等緊急支援のための交付金については、ネット鎌倉のホームページにも記事を掲載しました。