避難行動要支援者のデータシステム&個人番号利用条例
総務常任委員会、調査で中断
10月27日の総務常任委員会の審査日程の2番目は、補正予算議案でした。そこで、最初の質問者の議員によって驚くべき情報が明らかにされました。災害時要援護者支援システム(現在の名称は、避難行動要支援者支援システム)の不具合(あるい操作ミス)に基づく誤通知が1000件単位で発生しているというのです。
災害時要支援者のデータシステムをめぐる経緯
国は2013年6月に災害対策基本法の一部を改正し、個人情報保護の問題の整理を行い、災害発生時の避難に特に支援を要する人の名簿の作成を市町村長に義務付けました。
鎌倉市では、まず65歳以上の独居または高齢者だけからなる世帯の高齢者、障がい者等のデータを1つに収め、居住地を地図上にも示せる情報システムを、委託料約500万円で外注し、これは2013年度末に納品されました。しかし、支援計画を作るために個人情報を自治会・町内会に提供してもよいかどうかの意向確認の対象を「高齢者については75歳以上とする」と決定するのに、その後半年以上も要しました。そして、全市で意向確認を一斉に行うという当初の方針を見直し、七里ガ浜・今泉台両自治会と植木地区のマンションの3モデル地区に協力を要請して、2015 年2月末、これらエリア内の対象者に意向確認書を送付しました。モデル地区では名簿登載に同意した人の名簿が自治会等に提供され、名簿に載った被支援者の個別支援計画が各地区において作られています。
モデル地区での実施では、意向確認調査の回答率は6割程度とのことでした。私は先の6月定例会の一般質問で、支援を必要としている人ほど回答しづらい状況にあることを踏まえて調査書の記載内容を工夫したり、回答の呼びかけを丁寧に行うことが必要だと指摘し、モデル事業で出てきた改善点をその後の意向確認調査に生かすよう求めました。市は一時期、協力を得られる地区を少しずつ増やして意向確認調査を行うことも考えたようですが、結局当初の方針に立ち返って、10月9日に、モデル地区を除く全市の対象者に意向確認調査書を送付しました。
大規模な誤記載
ところがその調査書に記載された対象者の該当情報(その方の要介護度など)が間違っていたため、市が設置したコールセンターに問合せが相ついだというのです。質問をした中澤議員は総合防災課に事実確認を求め、調査の結果は明日28日の午前中の委員会で報告される予定です。システム自体に不具合があるのか、操作ミスだったのか。システムに問題があったのなら、納品されてから1年半以上も見過ごされていたのか…。約22,000件送付したうちの1000件以上のデータが間違っていたことが事実なら大変なことです。原因を明らかにしなくてはなりません。
個人番号利用条例に反対
災害時要支援者のデータシステムの事実確認に時間を要することが明らかになったので、総務常任委員会は補正予算の審査を一旦中断して翌日に持越し、それ以外の議案の審査を午後2時頃から始めました。
一昨年5月に公布された「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(番号法)に基づき、この10月から住民票を有する全員への12桁のマイナンバー(個人番号)の通知が始まっています。
番号法は、第9条で個人番号の利用範囲を規定しており、第1項はこの法律が一律に定めた、社会保障、地方税、防災の分野での法定利用事務、第2項は自治体の独自利用事務(法定利用事務と密接に関わるものでなくてはならないとされる)の規定です。独自利用事務について、自治体は条例で定めなくてはならないので、全国の自治体で9月議会に条例案がかかりました。
鎌倉市の条例案では、
・障害者の医療費の助成に関する条例による医療費の助成事務、
・小児の医療費の助成に関する条例による医療費の助成事務、
・ひとり親家庭等の医療費の助成に関する条例による医療費の助成事務
の3事務が独自利用事務としてあがっています。
マイナンバーが本当に必要な制度なのかどうか、もっと議論が必要であり、準備不足の中での制度スタートに多くの懸念材料がある中、自治体の独自利用は慎重にすべきであるという立場から、この条例案には反対しました。委員会での採決結果は、賛成4VS反対2でした。