北鎌倉隧道 ~ 現在の工法(=隧道開削)を見直し、尾根を残す形での安全対策工事へ転換
7月25日午後、市長からの開催要請にもとづき、市議会全員協議会が開催されました。議会に対する報告項目は、
・北鎌倉隧道が所在する尾根の文化財的価値に係る文化財専門委員会(7月8日)の審議結果
・今後の市の対応
についてでした。(※文化財専門委員会の審議結果については、本HPの2つ前の記事参照)
仮設工事で人の通行を確保
「今後の市の対応」は、文化財専門委員会開催後の7月15日に行われた文化庁と協議を踏まえたもので
①現在の工法を見直し、できる限り尾根を残す形での安全対策工事について検討する
②検討から工事実施までにさらに時間を要するため、当面、仮設により通行を確保する
③史跡の追加指定に向けた調査・研究、指定範囲の検討を行う
④上記対応については、引き続き文化庁の指導、助言を仰ぐ
という内容です。
②の仮設工事は、隧道の内側にライナープレートを設置し、隧道内壁(素掘り表面)との隙間にモルタルを注入して、歩行空間を確保するというものです。
この補強のために隧道の内寸は現状より小さくなり、高さは中央で184㎝、幅は210㎝、小型車両のみならず、自転車やバイクに乗ったままでの通行も不可となります。都市整備部長は、遅くても来年1月には(歩行)通行できるようにしたいと答弁。
できる限り尾根を残す形での安全対策工事…
問題は、本設工事です。
都市整備部長から
「薬剤(凝固剤)を注入するなどの方法により、隧道を今ある形のまま残すのは無理だと考える。昨夏に日本トンネル技術協会が『安全性確保のためには人工的な景観になる』と結論づけたことを踏まえざるを得ない」という発言があり、
「今ある形のまま残すのは無理」ということは、本設が開削工事となる余地を残しているのではないか、という質問が相つぎました。
途中、小林副市長が、
「現在建設業者と契約している開削工事は見直す、やらないということ。通行のための仮設工事は取り急ぎ行う。(並行して、本設工事についての)新たな工法、新たな考え方の検討は着々と進める」と述べましたが、「新たな工法」に開削工法は含まない、とまでは明言しませんでした。
「北鎌倉隧道が所在する尾根を残す」という方向性は獲得したものと捉える!
私は、質疑のパートに入ってすぐ、「できる限り尾根を残す形での安全対策工事というのは、尾根のトンネル部分の形状を含めて対象としてとらえ、具体的な工法は、景観と文化財的な価値の保存、通行の安全性をかねそなえたものを考えていくということか」と質しました。
都市整備部長はこれを肯定しています。
●仮設工事の結果生じる人工的な景観と隧道の通行可能空間の狭さが、今後たとえ不評であったとしても、昨夏市長が下した「景観と安全性の両立は困難だから開削を」という判断に立ち戻ることはあってはなりません。
トンネル部分を含む尾根の文化財的価値は既に確認されているからです。
●仮設では通行可能空間が狭すぎるからといって、本設でトンネル部分の形状を大幅に改変する(全面的に開削しないまでも、例えば隧道の上部の一部を残してJR側壁面を開削してそっくり人工壁と入れ替える)こともなされるべきではありません。
昨夏以降、保全を求める市民から、新たな素材、技術に基づく工法が提示されており、人工的な景観に陥らずに安全性も確保できる工法について、「知らなかった」では済まない状況になっているからです。「できる限り」の選択肢が昨年9月より多様になっているということ。
●一旦開削を見直して仮設工事を行った後に、本設で開削に再転換ということになれば、まさに無駄遣いであり、確実に違法性が問われる事態です。
今日の全員協議会では、とにもかくにも「北鎌倉隧道が所在する尾根を残す」という鎌倉市の方向性が示されました。
今後開削へと後退することは、市長や部長が言を違えたことになります。そこまでは確認できた全員協議会であったと思います。