子宮頸がんの予防にはワクチンよりも検診率の向上を

子宮頸がん…病気とワクチンの本当の関係

 「子宮頸がんワクチン」は、2013年4月、予防接種法の一部改正で定期接種(※)されることになりました(正式名称は「ヒトパピローマウイルス感染症ワクチン」。以下HPVワクチンと略)。しかし、重篤な副作用の多発が明らかになったことから、厚労省は6月14日、市町村が積極的な接種の勧奨を一時的に差控えるよう勧告を発しました。(※定期接種とは、定められた年齢で、市区町村の責任で実施するように、予防接種法に定められている接種。法に基づき、市町村が接種対象者やその保護者に対して、接種を受けるよう勧奨しなければならない、とされています)。
 1週間遅れの報告になってしまいましたが、7月28日、明治大学リバティタワーで開催された講演会「子宮頸がん…病気とワクチンの本当の関係」に参加しました。主催の「ワクチントーク全国」は、MMRワクチンの副作用が多発した1990年に、副作用被害者とその保護者、医師、市民らが結成した団体です。会場の広い教室は150人を超える参加者で満席、基調講演をされたお二人の医師(金沢大学付属病院産婦人科医、元国立公衆衛院疫学部感染症室長)の他、何人もの医師が参加され、熱心に発言をされていました。
 4時間近い講演会の内容を網羅して報告することはできませんので、
1)HPVワクチンは副作用が多発かつ重篤なだけでなく、発病抑制に有効に働くとは言えない
2)子宮頸がんについてはワクチンよりも検診が有効である
の2点に絞って報告します。

1)HPVワクチンは副作用が深刻なだけでなく、発病抑制効果が疑問
 
厚労省は、専門家の会議において、「ワクチン接種の有効性と比較した上で、定期接種を中止するほどリスクが高いとは評価されなかった」として、定期接種を中止せずに「積極的な接種勧奨の一時的な差控え」にとどめています。しかし、ワクチンにはリスクを甘受できるほどの有効性はありません。
① 子宮頸がんの原因とされるのは、100種類ほどもあるヒトパピロ-マウィルス(H PV)のうちの15種類のハイリスクグループ。しかし、ワクチンが対象としているのはこのうちのHPV16型と18型の2種類に限られます。統計によれば、日本人の子宮頸がんのうち、この2種類によって引き起こされるのは58.8%に過ぎません。ワクチンの実態は「HPV未感染の女性がHPVに感染する確率を約半分に減らすワクチン」ということになります(注:ワクチンは、既にHPVに感染している人には効果がありません)。
②12~16歳の女の子に接種が勧められていますが、ワクチンの有効期間は9.4年までしか確認されていません。15歳で接種すると、確実な効果が期待されるのは24歳までということになります。厚労省は、「若い女性(20~39歳)がかかるがんの中では乳がんについで多く(中略)年間…2,700人もの人が亡くなっています」と公表していますが、HPVに感染しても「がん化」するのは一部で、たとえがん化しても浸潤がんに変化するまでには数年から10数年を要するため、実際に子宮頸がんで亡くなる人の多くは中高年です。24歳までに子宮頸がんで亡くなる人は日本ではゼロ(2011年の統計)。
 「子宮がん発病のリスクがない」と言ってよい24歳までしか効かないワクチン(しかも効果があるのは全体の50%強のウィルスに対してのみ)を、女の子に副作用のリスクを負わせ、巨額の公費を投じてまで接種する意味は見いだせません。

2)子宮頸がんについてはワクチンよりも検診
 
子宮頸がんの検診は、粘膜上皮細胞の細胞変化を具体的に見られるため、がん化より手前の細胞の変化を把握でき、早い段階での処置が可能。20歳からは公費で検診が受けられます。しかし、日本における検診率は20%。他の先進国の検診率が80~90%であるの比べて際立って低いのは残念です。

「ワクチンで防げる病気には全て予防接種を」は正しいか?

 講演では、ワクチンで防げる病気は全部防がなければいけないように考える風潮が強まっている、ということが指摘されました。VPD(ワクチン プリベンタブル ディジーズ)というのだそうです。赤ちゃんに対する予防接種も以前よりも過密化されていると聞き、ショックでした。今日、生後6か月までに定期接種を全部受けると10回、任意接種を入れると15~16回もの予防接種を受けることになります。今年4月の予防接種法の一部改正ではHPV感染症ワクチンとともにヒブ(Hib)感染症と小児の肺炎球菌感染症も定期接種の対象疾病になりました。これら3つとも国産のワクチンではありません。

現状は接種対象者と保護者に大きな負担
 神奈川ネットは鎌倉市議会6月定例会の最終本会議で、「子宮頸がん予防ワクチン接種事業の検証と副反応被害者への救済を求める意見書」の提出を議案提案しましたが、賛成少数で否決されました。「積極的な接種勧奨の差控え」にとどまらずに「接種の一時見合わせ」に踏み込んだ内容が、過半数の賛成を得られなかったのです。
 今回の講演会の共催団体である日本消費者連盟は、6月18日付で厚労省に出した質問および要望書の中で、「(予防接種法の趣旨に沿えば)積極的勧奨をしない定期接種というものは本来ありえないはずだ」と国の対応の矛盾を指摘しています。
 接種の中止に踏み込まない現状は、接種対象者と保護者に「自己責任」の名のもとで苦渋の選択を押し付けるものです。
 個人的な話になりますが、子ども達が小さかった頃、MMRワクチンと日本脳炎ワクチンの接種を受けさせるべきかとても迷いました。日本消費者連盟のリポートを通して副作用についての情報を得ていましたし、日本脳炎については発生の確率がゼロに近いのに接種を行うことに納得できなかったからです。結局日本脳炎は3回接種するところ1回だけ接種して以降は取りやめ、MMRは受けさせませんでした。HPVの接種対象者と保護者は、現在これよりもずっとずっと悩ましい状況に置かれているのだと思うと胸が痛みます。今まさに重い副反応に苦しんでいる方がいらっしゃることについては尚更です。

 文科省は6月7日、「子宮頸がん予防ワクチン接種に関連した欠席等の状況調査について」を送付、都道府県教育委員会を通じて全国の中学・高校に回答を要請しました。回答の提出期限は7月末日。重篤な副反応だけを集約するのでなく、的確な状況把握と積極的な公表に努めてほしいものです。私たちも、調査結果がワクチンの影響をきちんと伝えるものになっているかどうか、チェックしていきたいと思います。

 この記事では、HPVワクチンの接種が子宮頸がん予防に有効でないことを特にお伝えしたかったため、ワクチンの危険性については具体的に触れませんでした。これについては、講演会に参加された宮城県大崎市の佐藤荘太郎医師のホームページが参考になると思います。http://satouclk.jp/cat11/