リスクにも目を向け、スーパーシティへの手上げは慎重に

6月11日に行った一般質問(※末尾にURL)でスーパーシティ構想についても取り上げたところ、本日18日の総務常任委員会において、政策創造課から「スマートシティへの取組」の報告がありました。

5分野以上の先端技術を組み合わせた「まるごと未来都市」
「スーパーシティ構想」は、AIやビッグデータを活用した『まるごと未来都市』の実現を、地域と事業者と国が一体となって目指すものです。
車の自動走行やドローンによる配送、顔認証システムの利用といった先端的技術・システムの導入には、現行では多くの規制が存在しますが、国家戦略特区の指定により、地域限定で規制に対する特例が設けられます。

スマートシティが、個別分野でICTを活用するまちづくりを指す一般名詞であるのに対し、スーパーシティは、複数分野でのICT活用を規制緩和と合わせて行うまちづくりで、加計学園問題でイメージダウンした国家戦略特区の新たな形態です。

スーパーシティのサムネイル

海外の事例(内閣府資料より)

公募要領が示されたら対応できるように準備
本サイトの5月28日付の記事で、改正国家戦略特区法(いわゆるスーパーシティ法)がその前日に成立したことを書きました。
政策創造課はこれまで、「法律ができたら、特区選定に向けて手を挙げるかどうか検討する」という考えを示していました。
そこで、6月11日の一般質問では、「法の成立を受けて、事業の公募にエントリーするのか?」と聞いたところ、「(公募内容がどのようなものになるかはわからないため)公募要領を見て判断する」との回答でした。本日の委員会では、それが「公募要領が示された段階で早急に対応できるように、手上げする事業の内容の精査、準備を進める」という意味であることを確認しました。

鎌倉市が出したアイディア
スーパーシティ法案は、内閣法制局から憲法違反の可能性を指摘されて昨年の通常国会で廃案になり、秋の臨時国会での再提出も流れて、今国会でようやく成立したものですが、内閣府地方創生推進事務局は、法の成立を待たず、昨年9月から「スーパーシティ構想 自治体アイディア公募」を行っていました。

鎌倉市が公募に応えてアイディアを送っていたことは5月28日の記事で紹介しましたが、アイディアが、新規開発型 (グリーンフィールド型)既存都市型 (ブラウンフィールド型)に2分類されるところ、「鎌倉市の応募アイディアは新規開発型」と書いたのは不正確でした。
鎌倉市は、新規開発型既存都市型 の両方のアイディアを送っております。
既存都市型の取組アイディアは、次の内閣府資料の28頁「B市」事例 参照https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/supercity/supercity.pdf

内閣府は「アイディア公募とこれから行う特区選定の事業公募は別物」としていますが、現段階で鎌倉市が温めている構想を推し量るのは提出したアイディアであるので、一般質問ではアイディアの中身とスーパーシティ構想全体の問題点の両面から質問しました。

何が問題なのか
問題点としては大きく4つ指摘しました。

(1)世界経済のこの10年ほどの大きなトレンドはデジタル経済であり、スーパーシティは、デジタル経済の競争において遅れをとっていると焦る日本政府が挽回をはかって取りくんでいる構想である。ゆえに、スーパーシティの核になっているのは、住民・企業等から収集した様々な分野の情報を集約する「データ連携基盤」(都市OS)の構築だ。
データ連携基盤については、
個人情報が保護されずに勝手に利用されるのではないか(個人情報の自己コントロール権が侵害されるのではないか)
個人情報を含むデータを一元的に集積・管理する民間事業者により住民が管理され、さらには監視社会に向かってしまわないか―という懸念がある。
法制度や管理技術が未整備でも規制緩和でデータ連携基盤の構築が可能となってしまうのが、スーパーシティの最大の問題点である。

(2)グリーンフィールド型で応募する場合は、深沢地域整備事業用地がステージになる。
国のスーパーシティにかかる令和2年度の予算措置は、データ連携基盤の構築で3億円、5箇所を選定する場合は1箇所6000万円の予算がつくに過ぎない。予算措置のもう一つの柱で「先端的なサービスの構築支援」もあがっているが、サービスに関係する省庁がどれほど予算を割くのかわからない。
深沢地域整備事業についてこれまで検討を重ねてきた「まちの将来像の3つの視点」などを大事にするなら、スーパーシティに事業認定された場合に課せられる制約と予算措置の規模を見比べれば、申請するという選択肢はない。

(3)ブラウンフィールド型全市域に関わる提案になる。個人情報が一元的に管理、利用される懸念に加え、安全性が立証されていない5G(第5世代移動通信システム)の導入が加速化することへの懸念もある。さらに隘路に陥ったロードプライシングの打開策を規制緩和の特区であるスーパーシティに求めることへの異論は、市民の間から必ず出てくる。

(4)スーパーシティ法の立て付けでは、住民合意は、スーパーシティ区域として採択されて区域会議が立ち上がり、基本構想をつくる中で取り付ければよいということになっている。
市民生活が大きく変わり、特区の名のもとに市民の権利が侵害されるおそれのある選択であるにもかかわらず、また、利便性と引き換えに個人の行動歴や志向(嗜好)、ニーズがデータとして収集・蓄積されることへの合意形成がされない可能性があるにもかかわらず、「住民合意はスーパーシティ区域ときまってからでよい」というのはおかしい。

グリーンかブラウンか?
一般質問では、「グリーンフィールド型の深沢地域整備事業の場合、来年に都市計画決定されても事業の進捗にはなお相当の年月を要するため、国がモデル自治体での実装化を急ぐスーパーシティ構想とはタイムラグがあり、候補となりえないのではないか」と千田副市長に質しました。
副市長の答弁は「タイムラグは承知しているので、ブラウンフィールドと組み合わせる」という驚くべきものでした。旧鎌倉地区・大船地区などの既成市街地で(スーパーシティのタイムスパンに合わせて)スーパーシティの実態をつくり、その仕組み・技術・知見を後追いで深沢地域整備事業に活かすという考えのようです。
今日の委員会では、さらに「将来的に新しいまちづくりの深沢で得た知見を、全市にフィードバックスすることもできる」という考えまで披露されました。

今後のスケジュール~公募開始からは急展開?!
委員会では、国家戦略特別区域諮問会議(6月10日)の資料から、今後のスケジュールが紹介されました。
5月27日 スーパーシティ法 成立
9月1日  法および政省令の施行
9月目途  スーパーシティの区域指定にかかる公募開始
11月頃  公募締切り
年 内      国家戦略特別区域諮問会議 開催→ スーパーシティの区域指定(政令)

9月の公募開始から締め切りまでは3か月あるかないかで、12月にはスーパーシティとなる区域が決定されるという性急さです。
国においても鎌倉市においても9月までの水面下の動きが大きな意味を持つことになるでしょう。

共創計画部長からは委員会でのやりとりの最後に「メリットと同時にリスクも考えていく。市民の課題を解決するためのスーパーシティであるが、利便性を享受していただきたい方たちがリスクに敏感という傾向があるとも思われるので、理解を得るように努めたい」という発言がありました。
鎌倉市が手上げをする場合は、少なくとも市民や議会に知らせないまま行うということは最早ないでしょう。

スーパーシティについて多くの人に知っていただき、鎌倉市が本当にスーパーシティに突き進んでしまってよいのか、一緒に考えていただきたいと切に思います。

※6月11日の一般質問の中継録画はコチラhttp://kamakuracity.gijiroku.com/g07_Video_View.asp?SrchID=3278
スーパーシティに関わる部分は1時間2分の質問の最後の18分間です。
6定質問のサムネイル