コロナ禍の2020年度決算~「不認定」の討論を行いました
9月議会最終日の10月1日、市議会の8会派が決算認定議案に対する討論※を行いました。
(※討論:表決を行う前に議題に対して賛成・反対の意見を述べ、他の議員の賛同を求めること)
2020年度一般会計決算を「不認定」としたのは神奈川ネット、共産党、かわせみ の3会派で、他の5会派は認定しました。
◆◆ 神奈川ネット・保坂の討論 ◆◆
神奈川ネットワーク運動・鎌倉を代表して、議案第25号令和2年度鎌倉市一般会計歳入歳出決算の認定については不認定、そのほかの決算6議案については認定する立場から、討論に参加いたします。
2020年度の一般会計の決算は例年とは大きく異なるものでした。新型コロナウイルス感染症対策関連の事業が行われたため、歳入では国庫支出金が前年度よりも約195億円も多い約276億円に達しました。収入済み額全体の3分の1を国庫支出金が占めます。
約100年ぶりのパンデミックであるコロナ禍の影響を強く受けた「異例」の一年でした。
大変な中での行財政運営ということを勘案し、今回は一般会計歳入歳出についても認定とするという選択肢もありましたが、問題を見つめ直すという意味で不認定と致しました。
莫大な国の臨時交付金
コロナ感染症対策は、感染防止・拡大抑制、生活保障、経済の下支え・活性化の大きく3分野にわたりますが、国の施策は、文科省の意向を踏まえない突然の一斉休校、休業に対する何らの補償も提示しないままの緊急事態宣言に始まって今日に至るまで迷走しています。
最も問われるのは、外出禁止のような強権的措置を講じて蔓延防止をはからなかったことではなく、共にコロナ禍に向き合うという信頼感を国民に持ってもらうメッセージを発信できなかったことだと思います。
自治体に対するものでは、内閣府の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金だけで2020年度の第1次~3次補正予算による総額が4兆5千億円にのぼりました。
コロナ対応の取組であれば、原則、自治体が自由に使えるということでしたが、全国の自治体は内閣府が示した活用事例集に照らして取組を考えたのだと思います。
鎌倉市のコロナ対策事業
2020年度に鎌倉市が独自に打ち出したコロナ対策関連事業の主要なものには、
・中小企業家賃支援補助金
・鎌倉応援買い物・飲食電子商品券「縁むすびカード」事業
・新生児とおなかの中のあかちゃんのための特別給付金
などがあります。監査委員の審査意見書によれば、これら3事業の事業費の75%は、後追いも含め、地方創生臨時交付金で賄われました。
また、年度末には、
・65歳以上の市民を対象に集団接種会場へのタクシー代を助成する補正予算
が繰越明許費の設定で組まれました。
今あげたうちの中小企業家賃支援補助金は、国の動きが遅い中で少しでも早く支援を行うことに努めた点で評価しているところですが、これらの事業には、「県内でもここまでやっているところは少ない」あるいは「他市の同種事業と比較すると金額や規模が突出している」という共通点があります。
コロナ禍の市民生活を支援する、地域経済の下支えをはかる ― という趣旨は当然理解するところですが、思い切った予算をつけることを「殊更に見せる」意図が働いていたように思えてなりません。
出口はどこにあるのか
2020年度は多くの催しを開催せず、また多くの事業を翌年度以降に先送りし、支出の抑制が計られました。その一方で、コロナ対応の取組は、入りはあっても出口が見えない状況、すなわち国庫支出金の上限額をにらみつつも感染収束の見通しがなかなか立たない中で有効と思える使途が見つからない状況があったのではないでしょうか。
エッセンシャルワーカーの人たちが少しでも安心して働けるような環境整備や処遇改善が望まれました。また、コロナ禍の影響をほとんど受けない層と大打撃を受ける層との二極化が急速に進んだ中で、暮らしが厳しくなった人に手厚く支援することが望まれました。
しかし、現実はそのようにはいきませんでした。
だったらどうすれば良かったのか、と問い返されて、はい、これが対案ですというものが示せるような簡単なものではないですが、市長も掲げている地域共生社会ということがひとつのキーワードだと思います。地域共生社会がお題目ではなく、中身のあるものになっていくことが、非常事態をしのいでいく私たちの社会の強さではないでしょうか。
先の横浜市長選に立候補した田中康夫氏は、長野県知事時代の後半には多くの批判も浴びた方ですが、横浜市長選に臨んで、「福祉・医療・教育・観光・環境の分野で『人が人の世話をして初めて成り立つ21世紀型の労働集約的産業を集約する』」という公約を掲げていました。産業の集約という言い方が限定的過ぎる気もしますが、「人が人を支える仕組みを中心に据える」ということは、アフターコロナの1つの選択肢として考慮に値すると思います。
国に付き従うのではなく
なぜこのような抽象的なことを申上げるのかというと、デジタル庁設置の動きにも、新型コロナ感染症対応地方創生臨時交付金事例集にも、コロナ禍を契機に、国がこれまで進めたいと考えていたことを一気に進めようとしている危機便乗主義が見て取れるからです。
進めたいのは、デジタル化であり、ソサエティ5.0に向けた取組み、非接触型テクノロジーです。デジタル化は大きな潮流であり、推し進めた方がよい分野も確かにあるでしょう。
でも、コロナ禍による教訓が、「デジタル化の遅れを挽回せよ」ということだけでよいとは思えません。
国の話をしていますが、鎌倉市のことでもあります。例えば縁むすびカードです。縁むすびカードにはキャッシュレスの便利さを広く市民に体感してもらう、という欲張った意図があったと受け止めています。
国が地方創生をという地方を上から見下ろしたようなことを言いだして7年が経ちますが、鎌倉市は何かにつけて国が示す方向性に過剰に対応していないでしょうか。