原発国民投票カフェ@かまくら

衆院選後に再度高まった関心
1月17日夜、鎌倉駅近くのソンべ・カフェで、市民グループ「みんなで決めよう『原発』国民投票」事務局長の今井一さんを囲む集い「原発国民投票カフェ@かまくら」が開催されました。アジアンなくつろぎを感じる店内は、市内外からの参加者で満席。フォーやタイ・カレーでお腹を満たした後、今井さんの熱弁に耳を傾けました。

昨年は、原発稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求める直接請求が、大阪市、東京都、静岡県で起こされました。大阪市では5万人、東京都では32万人、静岡県では16万5千人の署名に基づく直接請求でしたが、市議会、都議会、県議会で否決されました。昨年12月には、新潟県知事に柏崎刈羽原発の稼働に関する新潟県民投票条例の制定を求める直接請求(有効署名6万8千人)がなされました(1月17日時点では結果が判明していませんでしたが、その後、1月24日の県議会で否決)。

さて、今回の今井さんのお話の中心は「原発」国民投票です。住民投票は、日本でこれまでに404件以上実施されていますが、国民投票は1度も行われていません。昨年12月の衆院選が原発が争点にならずに終わった後、今井さんらの会への問合わせや応援は目に見えて増えているそうです。

日本でも諮問型国民投票はできる!
同会が目指すのは、多くの自治体が住民投票条例を制定して住民投票を行っているように「原発」国民投票法を制定して、原発の是非を問う国民投票を実施することです。(但し、同会は原発の是非については中立の立場を取っています。)諮問型の国民投票であれば、憲法を改めることなく、法律の制定ができます。そのための活動の柱として、同会は①111万筆の賛同署名を集める ②国会議員へのロビー活動で過半数の議員の賛同を得る ③自治体での直接請求で機運を盛り上げる ④PR活動を行う― を掲げています。署名目標の111万人というのは、イタリアで国民投票を発議するのに、有権者の約1%にあたる50万人の署名が必要としているのにならったとのことです。
111万人の署名が集まったとして、その数字を国民の思いとしてしっかり受けとめられる国会議員がどれだけいるか…。楽観は全くできません。でも、昨年官邸前に人々が集結したことが当時の野田政権に予想以上の影響を与えたことを思えば、目に見える形で意思を示す行動が、脱原発の停滞・後退状況に変化を及ぼす可能性がないとは言えません。

よくわからないで判断してしまう?? 
質疑の中で問題になったのは、次の2つです。ひとつは、原発についての情報収集や学習、議論なしに国民投票を行うと判断を誤る危険性がないか、という参加者からの指摘です。これに対し今井さんは、投票の実施が決まって一人一人がより広く深くそのテーマについて情報を集め、考えることになった、という過去の住民投票の事例を紹介しつつ、「もっとよく知ってから」と留保することで時機を逸してしまう懸念を語り、海外の国民投票の事例から、一度切りと考えないで何度でも取り組もうと、呼びかけていました。

憲法改正手続きに関する国民投票法との関連は?
もうひとつは、安倍首相が衆院選後初の記者会見で、憲法改正の発議要件を定めた憲法96条の改正に取り組む意向を表明していることに絡んだものです。同条は憲法改正の要件として、〈1〉国会が衆参両院のすべての議員の3分の2以上の賛成を得て発議すること〈2〉国民投票での過半数の賛成で承認すること―を定めていますが、安倍政権は、〈1〉を「3分の2以上」から、「過半数」に緩和することを目指しているとみられます。〈2〉の国民投票について定めた「日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)」は第1次安倍政権の平成19年5月にできました。
当夜は 「原発」国民投票法の制定を求める動きが活発になると、憲法改正のための国民投票への地ならしになってしまうのではないか、という警戒感を示す発言もありました。しかし、憲法改正手続きに関する国民投票法は既にあるので、後から「原発」国民投票法ができて国民投票が実施されても、あまり影響がないように思えます。むしろ参院選の結果によっては、憲法改正手続きに関する国民投票の実施が現実味を帯びてきます。今井さんは、もしそうなったら緩和を許さない、という判断をくだすのみ!とあくまでも明快でした。

「決めるのは誰なのか」を追求するのは、民主主義を問い直すこと。予定の2時間を1時間超過する「熱い」カフェで展開された議論が、もっともっと広まってほしいと思います。