公共施設のマネジメントを強調する再編計画基本方針案

今年2月26日までの約1ヶ月間、「鎌倉市公共施設再編計画基本方針案」の意見公募(パブリックコメント、以下パブコメ)が行われていました。この基本方針案は、外部学識経験者による「公共施設再編計画策定委員会」(委員長 根本祐二 東洋大学教授)による3回の会合を経て取りまとめられたもので、施設の老朽化にともない、現在保有する公共施設を40年後においても良好に維持管理するには現在の2.8倍の予算が必要になる、という危機感のもと、「公共施設のマネジメント」というコンセプトを強く打ち出しています。この基本方針を踏まえ、2014年度は再編計画の策定が始まるということで、新年度予算案には、次期基本計画の策定と合わせ、2846万円の経費が計上されています。

公共施設策定委員会を傍聴
    私は、1月21日に開催された第3回の策定委員会を傍聴しました。公共施設マネジメントによるトータルコストの削減目標を40年間で52%と設定している原案に対し、委員からは次のような質問や意見が続出しました。市側の弁明は「これはあくまで基本方針です」というものでした。

40年間というスパンで予測を行い、削減目標をはじきだしているが、スパンがそもそも長すぎるのではないか。数値目標の管理責任の明記も必要。
現在の施設維持費に人件費が入っていて、40年後のトータルコスト削減値に人件費が入っていないのでは単純に比較ができない。どこの自治体でも、公共施設を資産ととらえて最適な経営へと転換していく必要性が語られているが、マクロの話で「厳しい状況にあることがわかった」で終わってしまい、何をどう実現していくかという議論に進んで行っていない。
インフラ(道路、橋梁、下水道)の維持管理については別途議論するということだが、公共施設の更新・再編について先に決めてしまうと、いざインフラの更新を行なおう、という時にかけられる経費に縛りをかける危険性もあることを認識すべき。
公共施設(建築物)ではないが、鎌倉に固有の問題として緑地保全もコストが看過できない。

1週間後にパブコメ開始
策定員会の委員から多様な意見が示されたにもかかわらず、わずか1週間後の1月28日に基本方針案のパブコメがスタートしました。委員発言が基本方針案に反映されないままスケジュール優先でパブコメが行なわれたように見受けられます。なお、資料によれば、基本方針案の策定に当たっては(株)ファインコラボレート研究所と(株)日本経済研究所が「業務協力」をしています。両社のホームページを見ると、「先験的なコンセプトの提案」、「公有財産有効活用」などの文字が躍っています。

私も意見を送りました
今回のパブコメは、これから策定される基本計画ではなく基本方針案に対するものなので、個々の施設についての意見は控えて、次のような意見を送りました。

市民との危機意識の共有、課題・対応を先送りにしない、という基本姿勢は納得できる。しかし、基礎データとして40年後の将来予測を強調しているのは、危機意識を煽り、公共施設マネジメントの必要性に導く意図を感じる。今後再編計画の策定にあたっては、人口動態等の予測値の見直しを適宜行い、計画の策定・実施に反映させていくことを望む。

公共施設マネジメントの3原則のひとつ、「行政サービス提供のあり方の大幅な見直し」で、「施設と機能の分離」をうたい、施設の複合化、多機能化による有効活用をあげていることは理解できる。隣の逗子市で、市立図書館と市民文化プラザが市立逗子小学校と同じ敷地に集約されているのは利便性が高い事例として参考になる。
鎌倉市が行なった公共施設についてのアンケートで、図書館の満足度が低いという回答が多くを占めたのは蔵書の不十分さ、閲覧スペースの狭さ、開館時間の短さ等の実情からして当然の結果である。今後、図書館施設の複合化、多機能化については、市民から多様な要望が寄せられると思われるが、そのひとつとして、公文書館としての機能を備えることを望む。

公共施設マネジメントの3原則のひとつ、「行政サービス提供のあり方の大幅な見直し」では、「公設、公営の発想転換」として「市民・民間事業者」との協働を掲げている。個々の施設の特性を考慮し直営にとどめるべきかどうかよく吟味した上で、民間を協働のパートナーとする場合は、パートナー(指定管理者等)の選定に当たり、選定基準、公募方法等をガラス張りにして、利権や癒着の構造の排除に努める旨を明記すべきである。

5つ掲げた取組方針の2に「津波浸水予測エリア内に立地する施設については、エリア外の施設との複合化や機能移転等の検討を進めるとともに、津波発生時の避難対策の充実を図る」とあり、また取組方針5に「現在の5つの行政地域にこだわらない、公共施設の適切な配置を行う」とある。今後津波浸水予測エリアにある鎌倉地域で公共施設の統廃合が進む可能性があると思われる。「津波発生時の避難対策の充実を図る」のみならず、施設を選んで手を加え、津波避難ビルとしての機能を持たせる(高さ制限の緩和も検討)ことも積極的に行うべきだ。