原発をめぐる気になる動き
電力システム改革を閣議決定
スタート早々原発ゼロ政策の「一からの見直し」を明らかにした安倍内閣が、4月2日「電力システム改革」を段階的に進める方針を閣議決定しました。政府部内や産業界との間でどういう力関係が働いたのか関心が持たれるところです。
改革案の骨子は
①電力が余っている地域から足りない地域へと広域に電力を融通できるようにする
②新規参入の発電会社(新電力)も家庭や中小商店に電力を販売できるようにする
③現在電力会社が独占している発電と送配電のうち、送配電部門を別会社に分ける
の3段階で「電力自由化」と「発送電分離」を進める、というものです(このうち③の発送電分離については電力業界の抵抗が強く、先行き不透明)。また、現行の「総括原価方式」による電気料金の決定も、早ければ5年後には廃止するとしています。
原子力規制委の規制基準
一方、4月10日、原子力規制委員会が原発再稼働の安全審査を行う際の新しい規制基準案を示しました。基準案は1カ月間のパブコメを経て確定、今年7月に施行されますが、遠隔で原子炉を冷やす緊急時制御室の設置や、燃えにくい電源ケーブルへの交換、起こりうる最大級の津波に原発が耐えられる防潮堤の建造など、従来の「安全基準」からは大幅に厳しくなった内容です。
報道によれば、基準に適合する対策をとるには時間を要し、半数の原発は当面再稼働不可、また古い原発は対策費用が見合わないため電力会社が廃炉の判断をする可能性も出てくる、とのことです。
安全対策に費用をかけるほど後戻りは難しい
電力システム改革の閣議決定と規制委による規制基準案の公表…。ともに「脱原発に向けて前進」と単純に喜ぶには、複雑な要素が絡みあいすぎていますが、総括原価方式の廃止は、実現すれば、電力会社がコストに見合わない原発を手放す動きを促すものと期待したいところです。
気になるのは、規制基準に電力会社がどう対応するかです。基準に適合する対策をとるためのコストの問題があります。東電福島第一原発の事故を経験してもなお、世界に誇れる安全な原発は可能だ、という新たな安全神話がつくられようとしています。そのために膨大な費用を投じれば投じるほど、引き返すことは難しくなります。