「IR(統合型)リゾートで経済成長」はまやかし 

カジノで荒稼ぎできるピークは過ぎた
1月18日夜、IR(統合型リゾート)法の学習会「横浜にカジノはいらない」(主催かながわ市民オンブズマン)に参加しました。
昨年の12月に議員立法として成立したのは、カジノを含むIR(統合型リゾート)の「推進法」で、制度設計を行って1年以内に「実施法」を制定するとされています。実施法が制定されると、誘致を目指す自治体が「IR区域申請」を国に行い、国からの指定を受けると、事業を行わせる民間事業者を公募・選定するという流れです。有力視されているのは横浜市(山下埠頭)、大阪市(人工島・夢洲)で、横浜市では市長選の争点になると見られています。

学習会では、
カジノはIR全体の床面積の3~5%に留めるとされているが、収益はIR全体の60~80%に及び、カジノ抜きのIRはありえない
アジア諸国の大型カジノは近年売上減少傾向、雇用も減り、韓国の江原などは15年間に25,000人の人口が15,000人に激減するなど、カジノが町おこしになるというのは幻想
横浜市が業務委託した調査報告書にあるIRの経済効果4,100億円/年は、日本の成年人口1億300万人の34%にあたる3500万人がIRを利用するというあり得ない前提から始まっている
人民元の海外持出しには規制があり、中国富裕層はジャンケット(世話人業者)の介在なしでは海外に大金を落とせない
仮にIR効果で税収がアップしても、生活保護費の支出が増えれば容易に相殺される
日本のギャンブル依存症の発症率は4.8%(2014年厚労省)と既に高い
…など、多方面からIRの問題点が指摘されました。そして、横浜市の場合、市有地・公有地をカジノ事業者の利用に供することの違法性を住民監査請求・住民訴訟で問うことは十分に可能であるとの見通しが語られました。

学習会資料より

学習会資料より

インバウンド取り込めの掛け声に浮足立たないで
鎌倉市でも他所事ではありません。隣の横浜市にIRができてしまったら、鎌倉を訪れるインバウンド(訪日観光客)の質も変わるでしょう。
それ以上に、IRに限らず、インバウンドを取りこめ、の国の掛け声に自治体は踊らされてはならないと思います。鎌倉市のような「観光都市」では浮足立たないのが難しい面もありますが、傷んだ道路の補修のように、住民にとって暮らしやすくすることが、訪れる観光客にとってもプラスになるような施策は進んで行い、一過性で観光客の増加を狙うようなことに貴重な税金をあてるべきではありません。

大きな話になりますが、世界的に見ても経済成長の「のびしろ」は最早ほとんどないと言ってよい状況です。人工知能や自動運転車がもてはやされるのは、他に期待できる分野がないせいで、日本においては、目下インバウンドの増加が数少ない好況分野であるのに過ぎません。「成長あるのみ」という考えにとらわれないまちづくりに転換していくのが賢明。経済破綻やギャンブル依存症で苦しむ人を増加させるIRを推進させようとする人たちの主張を目にすると、ますますそう思います。