郷土資料展 鎌倉の『幻のユーイービーチ』

鎌倉市中央図書館の郷土資料展「『幻のユーイービーチ』震災復興・坂ノ下埋立地の歴史」を、最終日の10月17日に見てきました。

関東大震災後の昭和の初め、坂ノ下霊山下の公有水面埋立事業が行われました。
埋立地に「由比ヶ浜分譲住宅地」と、遊園地やホテルなどのリゾート施設(「鎌倉ユーイービーチ」)を建設する計画でしたが、昭和9(1934)年に埋立地は竣工したものの、住宅地分譲やリゾート施設の建設は実現しませんでした。
津波による甚大な被害を経験して間もない時期に、海水面を埋立て土地を造成しようとしたのは意外でもありますが、埋立計画が持ち上がった理由には、震災による山崩れで、付近の海が「養魚場及び海水浴場としては全く不適当」となったことがあげられるそうです。

展示品の撮影は不許可でしたが、展示室全体の撮影は許可していただきました。
長谷の網元で俳優の加藤茂雄さんが御来場(右)。左は近代史資料室の平田恵美さん。

背後の極楽寺の山の方から埋立用土を搬送するトロッコ軌道が大掛かりなものであったこと、
稲村ガ崎の開削(現在国道134号線が通っている部分)の前と後の違い、
分譲地販売案内のチラシ(昭和12年)のレトロ・モダン、
遊園地計画の奇抜さ…等がわかる写真や図は印象的でした。
それだけでなく、公有水面埋立許可願や当時の新聞の切り抜きなどの文書類も、「資料は語る」の観がありました。

鎌倉市は、この広壮な事業を計画し、埋立地を完成させた武田辰之助氏の曾孫の方から2013年に多数の貴重な資料を御寄贈いただきました。
今回の資料展では、近代史資料室によってそれらの資料がわかりやすく構成され、一般に知られていない坂ノ下埋立地の歴史が浮かび上がりました。