鎌倉西御門の旧村上邸、企業研修施設に

SDGs(持続可能な開発目標)のモデル事業
鎌倉市に2016年に寄付されてから、保全と利活用が懸案であった西御門の「旧村上邸」。
築100年超の「鎌倉市景観重要建築物」です。

2017年3月には保存活用方針が策定され、同方針に基づく公募型プロポーザル方式による事業者選定がどのように進むか注目していたところ、2018年6月、鎌倉市は国から「SDGs未来都市」に選定されました。
この時の鎌倉市の提案の中には「歴史的建造物を改修し、働く・交流・歴史と文化を継承する場として、情報発信する先行的モデル事業」が盛り込まれており、この歴史的建造物が、旧村上邸であった、という不意打ち的な(?)展開でした。
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/keiki/documents/gaiyoupdf.pdf

その後、旧村上邸の保存・活用事業の実施主体の公募(公募型プロポーザル)が行われ、2018年10月、(株)エンジョイワークスを代表構成員とするチームの提案が選ばれました。
提案された主な活用用途は、企業を対象とした研修所ですが、地域コミュニティに対する集会やお稽古ためのスペース提供もはかられるとのことでした。

改修には、SDGs未来都市に選定されたことによって交付された国の補助金があてられました。
(株)エンジョイワークスは、月額賃料14万5千円で市と定期賃借契約を結び、2029年3月末までの10年間、旧村上邸で事業を行います。

玄関から入ったところの和室は会議室に。スクリーンと左手前の椅子に貼られたステッカーは、投資型クラウドファンディングへの参加を呼びかけるもの。

カーペットが敷かれたラウンジ。左手の床の間には大型TVが置かれており、テレワークの会議にも使えるとのこと。TVやテーブルにもステッカー。

建物の保全がはかれたことは一区切り
5月20日、研修施設としてスタートするにあたっての内覧会がありました。

旧村上邸は、改修前に2回見学しており、とても趣のある建物ながら、住まう方がいなくなられてから年月が経ったことによる傷み具合が心配されました。
今回見学して、ラウンジにはカーペットとソファが、能舞台も手前の方に椅子が置かれてはいましたが、改修前の雰囲気とは大きく変わっておらず、特に傷みが進んでいると思われたお茶室も、内装は以前の予想よりもずっと良い状態であったことがわかりました。
「使う」ことにより建物の保全がはかられるという点では、ひと先ず安堵しました。

「使い続ける」ためには事業として成り立つことが必要ですが、公費が投入されていることを踏まえ、地域に開かれた場としても活かされてほしいと思います。

故村上梅子氏が大事にされていた能舞台。

耐震補強の仕口ダンパー(制振装置)

お茶室

お茶室(躙り口)

※旧村上邸についての過去の記事
2016年6月25日 https://hosaka.kanagawanet.jp/2016/06/25/1492/
2016年8月14日 https://hosaka.kanagawanet.jp/2016/08/14/1570/