カジノ誘致に反対! ~ 横浜市だけの問題ではない

8月22日、林文子横浜市長は記者会見でカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を正式に表明しました。

6月の説明会でも「反対」の声が圧倒的
一時誘致に前向きだった林市長は、2017年の市長選の前から「白紙の状態」と慎重な姿勢を示すようになり、以来一貫して「白紙」と繰り返してきました。

同市は、2018年度に実施した、▽日本型IR制度 ▽横浜におけるIRの事業性、経済的・社会的効果 ▽懸念事項とその対策 を内容とする検討調査の報告書を今年5月に公表、6月には報告書の内容についての市民説明会を市内4か所で実施しました。4か所合わせた定員が380人という限定的な開催規模は、そのこと自体問題ですが、参加者の質疑・意見表明の圧倒的多数が誘致に反対するものであったことは、重く受け止められてしかるべきでした。
「白紙」から誘致に転じた理由として、財政面での「横浜の将来への強い危機感」を挙げただけでは全く不十分です。

市財政に与える負の影響こそ深刻
市長は会見で、「820億円から1200億円に及ぶ増収効果を見込んでいる」と強調したようですが、前述の報告書には、「カジノ事業者がIR実施法に基づいて義務付けられた納付金に入場料、法人住民税、固定資産税等を加算した横浜市の増収効果は最低でも年間600億円になる」とあります。

一方、横浜市の2018年度の一般会計(1兆7300億円)の中で扶助費は4873億円を占める状況下で、ギャンブルによる生活破綻などに起因する扶助費の負担が1割アップするだけで、市の支出は500億円近く増える、という指摘があります。カジノが社会に及ぼす負の影響が財政を圧迫するおそれは、これに止まりません。

世界的には既に斜陽産業と見られているカジノに過度の財政効果を期待し、負の側面に目をつむるのは非常に危険です。

カジノへのアクセスがよいと増えるギャンブル依存
IR整備推進会議のヒアリングで、樋口進医師(久里浜医療センター院長)は、海外の著名医学雑誌の論文を紹介して、「早期のギャンブル暴露」、「ギャンブル施設へのアクセスの良さ」、「ギャンブルの報奨金が高いこと」などを依存症の危険要因と陳述されたとのことです。
政府があげている入場回数規制などのギャンブル依存症対策の効果のほどは疑わしく、カジノに日帰りでアクセスできる圏内におけるギャンブル依存の増加は、決して杞憂ではありません。

アメリカ連邦議会の過去の調査では、「カジノから半径16キロ(10マイル)以内の住民は全米平均に比べ依存症の発生率が2倍になった」という結果が出ています。
横浜市の大半に加え、川崎市や横須賀市、逗子市、そして鎌倉市もカジノ候補地の山下ふ頭から10マイル圏内です。

IRに海外の富裕層が家族連れてやってきて、鎌倉市に観光で回遊し、沢山お金を落とす…ということが果たして期待できるのでしょうか。
都合の良い可能性ばかりに目をやって、直視すべきリスクを顧みないことは許されないと思います。